ウゴガベ

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2024年2月下旬~2024年9月中旬の日記

お知らせ

nekram0nsee.bandcamp.com

「欲望の樹」のメインボーカル&一部作詞で参加しています。ところどころ我ながら凄まじい絶叫をしているので聴かれたし。

 

近況報告

ノイズミュージシャンとしてライブ出たり、アイマスのライブに行った。

ugogg.hatenablog.jp

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家買った。来月には引っ越す。築約45年の中古戸建。いわゆる旧耐震物件だし窓もほとんどが単板ガラスアルミサッシなので中長期的には耐震&遮熱リフォームが必須なんだけど全居住者のツボを抑えたリフォーム、第三者評価で雨漏りとシロアリ被害が一切見られなかったこと、ちょっとした部分に「古いいい家」ならではの要素が多く愛着が持てそうなこと、ハザードマップ的にかなりOKなこと、学校、スーパー、コンビニ、郵便局、銀行、飲食店、避難所指定の公共施設などがすべてギリギリ徒歩圏内にあること、数百年前からの水路や神社が残っていることから天変地異を耐え抜いてきた&文化的に人を超えたものと共存してきた集落とわかることも大きい。それでいて中心街からかなり離れてることもありユニットバス等リフォーム済みで1,○00万で、リフォーム用の貯蓄を考えても賃貸よりだんぜん安い。
人生で中古の軽自動車より高い買い物をしたことがないので不安は大きいけど楽しみな気持ちもそれ以上に大きい。あと人生で初めて生活空間から隔絶された自分の部屋を持つ。今まで自分のデスクは実家では兄弟部屋、一人暮らし以降は常にリビングにあったので。

 

メシ

アイマスライブのついでに行った幕張本郷のサンク・オ・ピエがめちゃくちゃ美味かった。

料理ごとに頼めるワインをすべて指定している=酒の種類を選べず、飲むか飲まないかしか選べないという一見偏屈な店なのだが、「料理オタク」という感じのオーナーが愛着たっぷりに語る激ウマ料理とさすが指定するだけある極上ペアリングのワインがすごく合う。特にフォラグラソテー&新たまポタージュはフォアグラの外カリカリ中とろとろの焼き加減とポタージュの香ばしさがすごい。量もかなり多く、この手のコース料理で味による満腹感とは別に量による満腹も追求しているのは面白い。たしか酒込みでも一人10,000円に収まったはず。雰囲気も気取らないカフェみたいで良い。オーナーが「美味しい」ではなく「美味い」と言うところにも店の雰囲気が現れていた。おすすめ。

 

ハンターハンター

ノリで全巻買った。おもしれ~。幻影旅団って「虚構船団みたいな名前だな~」としか思ってなかったけどかなり魅力的だしチー付与半グレ編の明確な元ネタだ。
念バトルや念があるからこその心理戦(政治含め)も面白いけど、そういう状況に放り込まれた人間を奥深く描くヒューマニズムの魅力も大きい。特にキルア周りはキメラアント編のパームを前に弱音が止まらないシーンとかゴンへの感情とかアルカ/ナニカ編とか妙に濃い。あと好きなのが王位継承戦のオイト妃。モモゼ王妃死後の「腹違いの娘を見殺しにしなかった事がよっぽど奇妙に映るのね よくわかりました あなた方と話す事はありません」周辺の流れは感情や生活を置き去りに能力バトルに身を投じる人々の異常性を浮かび上がらせて能力(異能に限らず)偏重で進む物語/キャラ/読者に冷水をぶっかけるすごいシーンだと思う。

永井均『転校生とブラックジャック 独在性をめぐるセミナー』(岩波現代文庫

図書館で借りて読んだ。著者がTwitterで飛ばして良いと言った箇所は飛ばして。
う~~~~~~~ん難しい!!!永井哲学の根幹にあるとされる「独在性」に関する問題意識の端緒はつかめた気がしないでもないけど……有り体に言ってしまえば考え方の糸口が見えなさすぎて著者の問題設定が誤っているのではないか?という気すらしてしまう。私が問題意識に共感できていないだけなのかも。「私が私であるということ」
ただ本書は架空の哲学ゼミの議論を書き起こしたような形式を取っており、著者の脳内にある全思考が吐き出されているような凄みがあるのも確か。文中にもあった表現な気がするけど、本書は答えを出すつもりはサラサラなく、ひたすら独在性に関する議論を様々な切り口からやっている。
折に触れて再読すると色々見えそうだけどもう返却しちゃったのが惜しい。買っちゃおうかな。ただここまで一貫したテーマに停滞する濃い本を何度も読む体力がない。

東浩紀『訂正する力』(朝日新書

著者の本をちゃんと読むのはおそらく初めて。同様のテーマを扱ったハードカバー『訂正可能性の哲学』というのもあるらしいが、AIに付いてなど明らかに「本来色々書いてあったであろう章を削りました」という箇所が散見されるので、書き下ろしとは言うものの実態としては『哲学』をダイジェスト的にリライト+新書ということで実践編を追加という位置づけだろう。
いい話をしているとは思ったけど、問題提起としても実践編としても不満が残る。というのも、ここで著者が提唱する「訂正」の概念――過去の誤りを正すだけでなく、大きな文脈に沿って「実はこうだった」という再解釈によって失敗を次に活かしたりときに再登場させたりするという、良くも悪くもしたたかな脱構築を各々が実践すること――があまりに当たり前のもの過ぎるから。それができない人が死ぬほど多いのは現実社会でもSNSでも明らかではあるけれど、少なくともこのタイトルに幾ばくかの共感や関心を持って手に取る人にとっては全くもって今更の話ではないか。開かれた本のようにはあまり思えない。
SNSとか保守リベラルの話はシンプルにあまりよろしくなく、著者自身のタイムラインの話という印象が強い。要するに、しょうもないネトウヨはブロックできていて建設的な穏健右派は見えているが、しょうもないリベサヨはブロックしていないので穏健左派が埋もれている、という状況が反映されているだけのように見える(ここでいう"しょうもない"は規模的に木ッ端アカウントという意味ではなく有名無名問わず主張そのもののカスさを指す)。脱構築の実践を掲げている本書のなかで、ここの雑にデフォルメされた二項対立は悪目立ちする。著者自身も「企画が立ち上がった2年前はもっとリベラルが強そうに見えた」*1と本書の内容についてまさに「訂正」を実践している(それは素直に良いことだ)が、あそこまでネットに長年触れていればそこら辺の勢力図が水物に過ぎないことは百も承知だっただろう。たとえば、本書企画時よりさらに数年遡れば、SEALDsのあたりはリベラル隆盛と見る声とエコーチェンバー集団と軽視する2極化が強かったことは記憶に新しいし、そこからさらにちょっとだけ遡れば、日韓W杯以降のネトウヨ的思想がまだまだポピュラーだったことを示す「さくら荘サムゲタン改変騒動」もあった。
日本人の気風の話と結びつけるのも個人的にはあんまり。著者はコロナ禍で開き直ったオンオフを見せた欧米諸国の対応にも触れ現代日本に「訂正」し辛い土壌があることを指摘しているが、ドナルド・トランプ周りとかで諸外国も「訂正」しない強さを誇示する勢力が強いから正直民族性でくくれる話じゃないだろうという違和感がある。
第3章の自身の体験談に基づいた実践編も、個人の内心としては参考になる人も多かろうという感じなのだが、アルファSNSアカウント&ホワイトカラーの人という印象が拭えない。普通に生きていれば信者が集まらない、喧騒の集団こそ自然に形成されるものだと思うが。そこにアメリカ文化や柳田國男といった論理の補強が必要なほど提起的な話をしているようには思えない。ここでいう「集団」ってオンラインサロンとSNS相互フォロー欄の話ばっかりしてませんか?という気持ちになる。町内会に出ろ。
保守にもリベラルにも釘を刺しつつ当時の時制を踏まえリベラルを強めに殴るバランス感覚が保たれていた本書だが、最終の社会的実践に触れると一気に保守に偏るのが残念。「自然の作為」「つぎつぎになりゆくいきおひ」を引き合いに出して、生じた変化を踏まえて過去や現状を「訂正」ししれっと良くなっていく、しれっと平和になる世界の在りようを提唱しているけど、ここでベクトルの修正=未来ビジョンの更新を訴える動きがなければ間違いなく現状の追認と適時修正を経た延長線にしか社会は推移しないのだから、この主張は極度に保守的だ。社会をぶっ壊さずに良くするために「訂正する力」が必要なのは著者に同意するとして、社会を良くするためには現状のベクトルからずれた理想論をぶち上げることも同時に必要なはずだ(かつての日本に戻ろうという主義でない限り)。保守リベラル問わずに絶えず「過去の訂正」を行う重要性はもちろんとして、そのベクトルの修正のために絶えず未来ビジョンを掲げ、それに対する「未来の訂正」が行われなければならないはずだ。著者の主張は現状と過去の訂正/追認に比重を置きすぎている、というか、未来からのバックキャスト思考が欠如している。未来ビジョンを掲げつつ、旧来の革新派/急進派の革命的行動ではなく理想の未来に漸近していく……そういった動きなくして現状の社会ベクトルに苦しむ人間にとって社会の改善は難しいのではないか。「現行憲法では無理筋な同性婚」「明治憲法では不可能な女性参政権」「当時の使用率では夢物語だったアスベスト全規制」など、初動での達成が不可能かつ現社会に全く適合しない目標を掲げ、そこに数年~数十年かけて漸近していく営みが日本を少しずつマシにしてきたのではなかったか。この章はどうもTwitterの過激リベラルに当てつけで書いたようなバランス欠如感がある。
ここまでの雰囲気で誤解されそうなので改めていうと本書の「訂正する力が大事」という大枠の主張には賛成である。「ちょっと考えれば言われんでもわかるわい/言われずとも結構な人がもうやっとるわい」というのは差し置いて大事な生き方の話をしているしリベラルのキラキラした理想主義にも保守の歴史修正まで持ち出す頑固さにも釘を差すバランス感覚も大事だと思う(最後に崩壊するが)。ただ「著者はそう思うんだなあ」以上の学びを得られず、「東浩紀研究」をするのならかなりわかりやすく彼のステートメントが発信されている本なのでいいと思うけど、私は人を研究することに一切興味がないのでなんとも言えない本だった。あとは議論するときの題材にするのとかにも良いのかな。
「なんかな~……」という気持ちでずっと読んでいたのであまり書かれた主張に入り込めておらず、他の人の意見も読んでみたいんだけどSNSだとリベラル層による東批判、ゲンロン界隈を知る人や人文界隈によって"観光客"などにも触れながら東の思想体系全体を読みとかんとする東読解が多くて本書単体で逐条的に取り上げたような話が読めなくて悩ましい。東浩紀も私もSNSからもっと離れた方が良い。

村上春樹パン屋再襲撃』(文春文庫)

思春期に何かを読んで培われた村上春樹アレルギーを克服すべくブックオフで安くて短編集だった本作を手に取り挑戦。結果としては微妙だったけど表題作とかは面白かった。
大きなポイントとして、迂遠な表現と固有名詞を挿入したがる文章のクセが邪魔すぎるのと、自身の主観や人生が世界/社会と直結しているような視点があまりに馴染めなかった。特に「双子と沈んだ大陸」はすごい。自分のもやもやを世界であるかのように語ってあと性の描写があって終わる。「時間が立つと色々変わっちゃうなァ」という話と性欲の話だけでこれが書けるのはすごいといえばすごいが。ただそういうナルシシズムが支配する作風だからこそ、見るからにカスな男の心が「俺の世界」の外にいる男を通じてどこか空回りしているような印象を受ける「ファミリー・アフェア」はいい意味で異質だ。
表題作はかなりわかりやすく面白かった。タイトルとか妻がなぜか銃を持っているシュールさも面白いけど、構図として貧乏学生のパン屋襲撃という資本主義への反抗が「ワーグナー布教と引き換えにパンをもらう」という、資本主義ではない文化的やり取りだが強盗はできていない、という形で終わって"呪い"になってしまい、定職とパートナーと都市部の住まいを得た今"呪い"を解こうとしても妻(個人の成功)&深夜も空いてるマクドナルド(資本主義社会の成功)という純粋な「再襲撃」ではない形に予定調和的に収束して今の安定したポジションを再確認するにとどまってしまうもどかしさは、おそらく学生運動の後味の悪さを踏まえたものだろうと言う気がする。乱暴な言い方をすればワーグナーといえばナチスという部分もあるしそういう政治的なメタファーがあるは確実だろう。学生運動世代ではないマックのカップルが全然起きないのも明らかに対比だし。海底火山のイメージが食欲とも"呪い"とも取れるさらりとした描写もクールだ。ただこういうシュールな要素を組み合わせて変な話と思索を接続する試みはやっぱり坂口安吾のほうがすきだなあ。

 

ライブレポ

米沢エクストリーム @ライブバーヤスクニ

山形県米沢市矢沢永吉ファンが営むロックバーで開催されたエクストリームメタルイベント。山形にここまでエクストリームメタルファンがいたのかという客入りでとても盛り上がった。初めてライブを見たAnatomiaは極度な遅さで窒息しそうなまでのデスドゥームで感動。カルマ納骨堂も名前だけは知っていたが、サイケmeetsドゥームサウンドにノイズと化した超絶ガテラルボーカルが乗る音楽性がめっちゃクール。久しぶりに見たリトバスも「ただただハードコア・パンクを速くしたらグラインドコアになった」としか言いようのない痛快さが見事。

Experience the brutality that starts here Vol.1 at 酒田HOPE

酒田市のハードコア系イベントにも行った。ビートダウン、メタルコア、ニュースクール、激情系、ハードコアパンクドゥームメタルなど多様なメンツで絶えずモッシュ。名前だけ聞き及んでいた山形市のEmbody The ChaosがPurified in Bloodというかフッ軽のHeaven Shall Burnといった感じのエッジメタル/メタルコアサウンドが超かっこよかった。
あと会場の酒田HOPEのスローガンが超かっこいい。オーナーもすごいいい人だった。ある会話で「ウチのハードコアイベントに来る連中が不正をするわけがない」といっていたのが耳に残っている。

 

美術館

山形美術館「カンヴァスの同伴者たち 高橋龍太郎コレクション」

コレクター高橋氏のコレクション展。めっちゃ最近の作品もあってよかった。作品集売ってほしかったな。奈良美智草間彌生のグッズが多く、両者に興味がないので買うものは特になかった。

写真右上→この筆致で馬の肢体の強さじゃなくて憂鬱な表情を縦画面で切り抜く大胆さにしびれた。
左下→Hed.P.E.の1stみたいなストリートアートのコラージュのような激烈さを持ちながら水墨画っぽく描かれていること、下に影があることで具象画っぽく見える違和感が良い。
右下→「パッと見で抽象画なのになぜか具象画にみえるなあ」と思いながら説明を読んだら実際にいろんな柄のハンカチだか布だか紙だかを重ね合わせたもののスケッチらしい。その僅かなニュアンスを描く技量に脱帽。

東京国立近代美術館「TRIO パリ・東京・大阪 モダンアート・コレクション」

アイマスライブのついでに散歩してたらたまたま見かけて入った。パリ、東京、大阪かの美術館が、テーマ(文明の機械化、裸婦、など)ごとに各1点作品を出して3点並べて展示し、比較するように鑑賞できるという展示。素直に描いたり、メタ的だったり、政治的だったりと、アプローチの違いが楽しめた。

 

音楽

この期間中聴いててパッと思いつく作品に感想ツイートか簡単なコメント付記。

Revasseur - Talisman

Chroming Rose - Pressure

Viva Belgrado - Cancionero de los Cielos

綿菓子かんろ - リサージュの風景

Pestilength - Solar Clorex

Cryptae - Capsule

sentientruin.bandcamp.com

昨年のリリース直後はよくわからずスルーしたが「ミニマリズムを実践するデスメタル」という視点で聴いた途端、前衛デスメタルの名盤という気がしている。

キンモクセイ - 洋邦問わず

Dark Tranquillity - Endtime Signals

Nirriti - Asuryasparsha

nirriti.bandcamp.com

不気味なジャケに違わず邪悪なインドのノンストップノイズブラックメタル2020年作。ゴアアアアアーーーーー!!!!って感じです。

Grand Magus - Iron Will

正統派ドゥームメタル要素を盛り込んだ熱いヘヴィメタル

Whitehouse - Live Action 125

パブリックイメージのWhitehouseよりシンプルな攻撃性に満ちてていいです。

Ornette Coleman - Dancing in Your Head

ツンベルク管 - ナットとボルト

The Stools - R U Saved?

SEGUE-4 - LAYER:ASYL

ユニットらしいです。

Mortual - Evil Incarnation

Isole - Anesidora