ウゴガベ

ugogg阿部音楽紹介オタク感想雑記日記告知ブルトン身長60m体重6万t

Twitter(X)でみたライブ系の印象的な写真を引用で貼っておく自分用記事

レーザーをギターで反射する河端一

 

モッシュピットと白杖

エピソード

 

必殺技を放つDJ WILDPARTY

 

チェキ戦車とネムレス

 

黒魔術感マシマシのOzzy Osbourne

 

ブチ上がっているShimon_Harbig

 

 

ハーシュノイズのライブで使った機材の紹介

はじめに

先日8年ぶりくらいに人生3度目くらいのノイズのライブをやりまして、機材が一般的なセオリーと若干違う気がするので世のノイジシャンやノイズを始めたい人の参考になればと思い機材の紹介をします。

偉大なる先達の発信(下記)を自分も大いに参考にしてきたので見習っての投稿です。

note.com

www.youtube.com

 

機材を組むにあたっての前提

・間断なく変化し続けるハードコアなフリージャズのインプロに近いノイズを目指す。
・音について、変化はするけど別に多彩でなくて良い。サックスソロだってサックスの音しか使わんやろがいという気持ちで臨む。
宅録機材の延長で組めるセッティング。
・安く 安く

 

全体像

図解

 

ノイズセクション

メイン音源

1 KORG monotron

すでに生産を中止した、いわゆる無印。ノイズ制作をスタートした2015年頃からずっと現役。
可聴域まで至る広いレンジでエグいサウンドを生むLFO、シンプルなつまみ、汚い逆ノコギリ波サウンド、安物すぎてほっとくと鳴り続けるホワイトノイズ、片手で全域カバーできるリボン鍵盤など長所も短所もすべてが今のサウンドの要。
以下に列挙するエフェクターは、基本的に本機のシンセサウンドを汚く&太く&鋭くすること、そして本機から勝手に鳴り続けるホワイトノイズをファットなノイズウォールにするために使う。
鍵盤をホールドする機能がないので、画像内にもあるスポンジを噛ませた強力クリップで鍵盤を挟みホールドする。ただ演奏の柔軟性がなくなるのであえて単調な展開を作りたいときを除き、基本的には指で演奏。
monotron delayも持ってるけどちょっと操作ミスると制御不可能&収めるのが面倒なくらい発振するのが使いこなせないので未使用。monotron duoは無印に比べるとおとなしいもののX-MOD機能をうまく使いこなせれば似たような使い方ができるかも。

エフェクター

2 ROWIN HOLY WAR DISTORTION

安いディストーション。ギターで使ったことがないのでよくわからないけど、メタルファンなら名前で想像がつく通り切れ味の鋭い音になる。ハイゲインとローゲインを使い分けられる。個人的なスウィートスポットが明確なので演奏中はあまり触らない。安い。

3 VOX V847-A

定番のワウペダル。音をコワー!ギョワー!と変えるのはもちろん、踏んでオンにするだけにしてペダルは動かさず、音を汚くするのにも使う。いろいろ試してみて、この位置が一番好みの音になった。

4 TC ELECTRONIC Fangs Metal Distortion

ディストーション。つまみがでかくていじりやすい。EQの効きがわかりやすいので演奏中時々触って音の質感を変えるのに使う(特にLOWをぐりぐり触ると結構変わる)。スイッチでRAW/FAT/SCOPの音色が選べて、かなりがっつり音が変わる。SCOPは結構トレブリーで使うタイミングを選ぶ。

5 BOSS MT-2 Metal Zone

ご存じメタゾネ。ぼろぼろの中古を買ったためつまみの軸がグネグネに歪んでいるのに普通に回せる。全部フルテンにしつつMID FREQだけ時々触り音色を変える。ただあまりがっつり回して音がコワーッ!と変わるのが個人的にはダサくて苦手なのであまり大胆には触らない。

ここまでは直列。

6 ELECTRO-HARMONIX Switchblade +

いわゆるABボックス。AorBだけでなくA&Bの出力ができるので使っている。あとLED光らなくてもいいならパッシブで使える。ただなんかノイズ系の爆音を入力するとなるとうまく分岐できないようで、片方だけオンにしても音漏れするので実態としては「分岐&どっちかの音を気持ち弱くできる箱」として使っている。これを使って下記の2つのエフェクターに音を分けている。

7 DOD fx86B DEATH METAL

血糊のようなペイントとスプラッターなパラメータ名がキュートなハイゲインディストーション。Digitechじゃないほう。フルテンで使うとパブリックイメージの「轟音」を作るのに最適。轟音でありつつ音が潰れず(壊れはする)鋭いサウンドなのがお気に入り。

8 MASF Pedals Kidnapper

同ブランドのノイズボックスscmに最適化されているというオクターブダウンファズ。旧モデルなのでオクターブダウンの切り替えは2パターンのみ。
SAWの値をうまく調整すると原音を完全に侵食しエッグい低音のムギャギャw/ブギョギョw/ボモモwというサウンドが得られるんだけど、原音の鋭さが完全に失われるため直列を避けている。

9 DOD 240 Resistance Mixer

完全パッシブのミキサー。上記7(鋭いディストーション),8(潰れた低音),を合流させるために使う。終端のミキサーに2つ差すよりここでミックスして1chにしちゃうほうが何故か音が太くなる。見た目のわりにかなり重いしパッシブなのでブーストができない(抵抗で減衰させるしかない)んだけど、頑丈だし音痩せも気にならない。Behringerの似たような形のアクティブミキサーも試してみたけど音痩せがひどくて話にならなかった。

10 BOSS RV-6 Reverb

デジタルリバーブ。実質シマー専用。歪ませたmonotronの倍音とうまくかみ合うと不愉快かつ荘厳な「スカム・シューゲイザー」とでもいうべき音になるのが好きで、ここぞというときのクライマックスのために使っている。

11 Behringer SF300 Super Fuzz

9mmのギターが大暴れするときに踏んでいたことでおなじみ。ただ一般的にノイズミュージックとか飛び道具的に使われるFUZZ2モードではなく、Boostモードで最後尾に使っている。ミキサーでゲインを上げるよりはるかに鋭くかっこいい音が出るのと、リバーブのデジタル感をごまかすため。上掲HAIZAI氏のnoteでは似たような使い方でZ.Vex Super Hard Onを推薦しており、気になっている。

12 Bananana Effects Mute SW

アケコンみたいなモメンタリースイッチが使われたキルスイッチ。急激なストップ&ゴーに使えるかと思ったけどスピーカー飛んだらどうしようと日和ってしまい当日のライブでは使わず。宅録ではよく使う。

 

ボイスセクション

ハーシュノイズやパワエレだとエフェクター等で潰し切った絶叫/アジテーションが良く使われるけど、個人的にはあくまで歌唱技術でエクストリームメタル系の声を出して、それをノイズに馴染む程度に音を弄りたいという思いがあったので、こちらは簡単なセッティング。

メイン音源

13 CLASSIC PRO CM5

いわゆる「ゴッパチ」のパチモンダイナミックマイク。滅茶苦茶安いので。

エフェクター

14 VOCU Magic Mic Room

「マイク用プリアンプ」「フォンジャック」「安い」を満たす製品。マイクをギターエフェクターにつなぐために導入。

15 Guyatone SD-2 Sustainer D

可愛い見た目の反面ファズっぽく下品で強い音が鳴るディストーション。音も見た目も最高。あくまで声主体にしたいため、これはフルテンにはせずあくまで声を程よく歪ませる程度にした。

16 Behringer VD400 Vintage Delay

声にエコーをかけたくて手元にあったこれを使っているだけ。コッコッコッ……というイメージ通りの音がするアナログディレイ。発振もするけどそれは使わない。ライブではPAとの打ち合わせをミスって色々都合がつかなくなったのでごく短時間のみ飛び道具的に使用。

 

ミキサー

MACKIE MIX8

アナログミキサー。上述の両セクションをこれにぶち込んで、これのOUTから会場のDIを借りてPAに流した。自宅にてヘッドホンでモニタリングしながら作った音との乖離をなるべくなくしたいのでアンプは不使用。

その他

電源:Furman SS-6B

自宅の電源タップでは複数アダプターをさせるデカいものがなく、どうせ買うなら音楽用のものをと思い導入。音とかはよくわからないっす……ただミキサーもパワーサプライ(後述)も電源スイッチがないので、本器で一括オンオフできるのは便利。

パワーサプライ:VOCU Baby Power Plant Type-A

安くて小っちゃくていっぱい差せるるので。ただ本来アイソレートされてないパワーサプライにデジタル/アナログエフェクターを両方差すと音が悪くなるのでやっちゃだめらしいけど、聞き比べた結果「まあええか」と思い足元に置くワウを除く全機の電源はこれでまかなっている。

ケーブル:しらん

なんか昔ハードオフで買ったやつとか、人からもらったやつとか、CLASSIC PROのハチャメチャな安物とかが混在。将来的にはオヤイデとかの買って聴き比べしてみたいけど現状はこんなもんで満足。

ケース:CLASSIC PRO CPEC400

安い、重い、ちょっと小さい。もうちょっと大きいのにしたい。安い割には頑丈。同ブランドの「LITE」シリーズはたぶん避けたほうがいいと思う。

スタンド:CLASSIC PRO KST40(写真には写っていない)

エフェクターボードとミキサーを載せる。キーボードスタンドというとX字の方が定番だけど、乗せるもののサイズによっては融通か効かないかなと思ってテーブル型のこちらに。
結果、家で使うぶんには正解だったけど、普通のX字スタンドよりはるかに上の7kgという重量を誇り運搬が本当に嫌になるので、X字スタンド&デカめのベニヤ板とかにすればよかったかと思っている。

 

どう演奏するの?

monotronを「触ってないときはノイズウォール発生器になるシンセ」と位置づけ、ずーーーーーーーーーーーーーーーーーっといじくりまわしながら、時に指を離してノイズの音質を変えながら、常に大声を出す。いわゆるテーブルコアと言われるこてこてのハーシュノイズと違い、エフェクターは時々音色を変化させるためにいじる程度で、ほとんどの時間をmonotronのリボンとつまみをいじることに費やします。あとワウも踏みます。コツとしてはmonotronから出る音を体感で熟知すること、時々指を離してホワイトノイズをうまく組み込むこと、勢いを絶対に落とさない根性、偶発的に出た音をリフレインや展開に活かすための途切れない集中力などです。慣れればエグいドローン、無機質なインダストリアル、フリージャズのようなフリーキーなリードなど意外とこなせます。

スマホで録ったプアーな音だけどこんな感じの音になります(これは声が入ってないけど)。

 

終わりに

あまり参考にならない構成だとは思うけどノイズを始めるハードルが下がる記事にはなったかと思います。ノイズやろうノイズ。

初めてアイマスのライブ行った(THE IDOLM@STER SideM 9th STAGE ~MIR@-CIRCLE CRESCENDO~ライブレポ)

idolmaster-official.jp

両日行ってきました。感想を整理せずそのまま。

アーカイブ配信等は見ておらず当日の記憶を頼りに書いたので事実と違ってたらすみません。

 

背景情報

人間

成人男性。東北在住。

ライブ遍歴

基本的にエクストリームメタル(デスメタルとかグラインドコアとか)とノイズミュージックのライブにしか行かないので界隈特有のマナーとかは全然知らず参加。小規模なアイドルライブは2回くらい行ったことがあるけど、どれもロック系のライブハウスで開催されたものだったのであまり異世界感はなかった。

アイマス遍歴

アイマス15周年施策と前後して知人の勧めもありシャニマスとSideMにハマった(うろ覚え)。
アニメは765、SideM、デレ、ミリ、シャニを視聴済み。特に765とSideMのアニメは面白かった記憶がある。
ゲームはシャニマスはenza版のみ。微課金勢。仕事の繁忙期はイベントを見逃しつつもなるべく読んでいるという感じ。グレ5-6往復。
SideMはサイスタのみ、開始からサービス終了まで。極微課金。
SideMのライブはブルーレイでいくつか見た(3rdが滅茶苦茶好き。Genuine Feelings!!!!!!!!!!!!!)。楽曲はおおむね把握はしているけどサイスタ終了以降の楽曲は若干聴き込み浅め。
アイマスにおけるプロデューサーという概念はいまだによくわかっていない。自分自身はあくまでファンという認識しかない。
好きなアイマスアイドルは神楽麗、花園百々人、風野灯織、田中摩々美、七草にちか。正直両ブランドのアイドルはほとんどみんな好きです(嫌いな人はいないけど分からん人はいる)。

 

ライブの感想

楽しかったね~~~~~~~~~!!!!!

day1

ユニット曲から始まる構成にまず度肝を抜かれる。全体曲からじゃないんだ。ハイジョの高いテンションで否応なしにボルテージが上がるのでかなりアリ。
前半の自己紹介も、MCで一人一人喋るのではなく、サンバ調にアレンジされた「夏時間グラフィティ」に乗せて、演者ではなくアイドルの立場で山手線ゲームをするというのも良かった。MCだとどことなくメタくなってしまうところ、没入感があるまま観られるし、多分初見でも「良くわからんけどそういう雰囲気の人なんだろう」と思えそうな回答ばかりで楽しい。
個人的な前半のハイライトはやはりTHE 虎牙道「究極…FIGHTING」で、メンバー3人とバックダンサーによる殺陣が超クール。これやって歌もダンスもやるの、運動量がおかしい気がする。おそらくダンサーがいることで演者の身体的負担が増えている唯一のユニット。逃げ惑うダンサーを追い詰めるように現れる牙崎漣(小松昌平)がかっこよすぎ。

中盤のメドレーは新旧楽曲入り混じる中にWORLD TRE@SURE(ワートレ)シリーズも交えた意外性のあるセット。ワートレはコロナ禍の影響でライブ披露されなかった楽曲も多いらしく、雪辱を果たした形にもなるのかな。おそらくコロナ禍以降最も外国人参加者の多いSideMライブにおいて「Welcome to Japan!」が披露されるというのもグッとくる。あとWと虎牙道の新曲「vs.BELIEVERS」がかっこよすぎ。

メドレー後はダンサーによる幕間をはさんで後半へ。この幕間も良かった。ボールのパス回しのようなサイレントコメディ風の動きと各ダンサーの個性が出た激しいダンスが融合した楽しい内容。
後半は個人的には見所が多すぎてコメントしづらい。SideM楽曲で最初に衝撃を受けた、人生の辛い瞬間に寄り添う優しいエレクトロ楽曲のFRAME「スリーブレス」が見れて感動したり、彼らの時に傷つき(傷つけ)ながらも深まっていく関係性がパフォーマンスに表れたようなC.FIRST「Face the World」に感動したり、「Cherish BOUQUET」をアレンジした特殊イントロから演出もダンスも華々しい渡辺みのり(演:高塚智人)「カラフル・シンメトリー」にグッときたり、3DMVの熱さをそのまま会場に持ち込んだようなHigh×Joker「JOYFUL HEART MAKER」でブチ上がったり、"THE 虎牙道×ホスト"というカオスなお題を超セクシーに表現した「宵闇のイリュージョン」(牙崎漣を押しのける円城寺道流!)が良すぎて爆笑したり、Legenders「リフレインアトリウム」の三者三様のプロポーズ(実質)を受けて周囲のレジェPと思しき人々がなんか悲鳴を上げて崩れ落ちているのにびっくりしたり、試聴時は何とも思わなかったけど本編最終で聴くと感動的な全体曲「Gather Round!」で温かい気持ちになったり、などなど。

 

day2

day2の1曲目も合同曲でなく神速一魂から。ハイテンションな幕開けで素晴らしい。今回のトロピカル山手線枠は「Fine Day! Find Way!」。これやっぱいい企画だから恒例化してほしいな。前半で印象的だったところでいうと、EDM系のエグい音圧とMVの動きを随所で取り入れたキレのいいダンスの迫力がすさまじいJupiter「Inner Dignity」、音源の時点でかなり気に入っていたCafé Parade流エレクトロスウィング「Dear you, Cheers!!」、高速エレクトロ&ふわふわした雰囲気&ショタ声&成人男性のフィジカルという矛盾した強みを兼ね備える実写もふもふえんにしかできない「もふデビ★うぉんてっど」、彼らのいい意味で"閉じた"世界観と高い歌唱力を見せつけたAltessimo「Precious ordinary days」あたりか。アルテは楽曲もさることながら最後の"会話"が目に焼き付いている(配信でも写っているのだろうか)。

day2もday1と同じくワートレ楽曲を織り交ぜたメドレーが。ロシアの曲「眠らぬ夜にスパシーバ!」をやらないのはご時世ゆえか、私が知らないだけで披露済みなのか。天ヶ瀬冬馬(演:寺島拓篤), 秋月涼(演:三瓶由布子)2名での披露となった「もくろみインディアNight」楽しくてよかったな。インド風振り付けはMCによると本来ダンサーだけがやるものを演者二人もやるように変更したらしいが大正解(めっちゃ面白いので)。あと今回アルテはアップテンポな曲がなかったので「Eternal Fantasia」はうれしかった。「笑顔の祭りにゃ、福来る」は神速一魂のみでの歌唱だったけどめっちゃ雰囲気合ってて楽しかった。神速の二人は何というか言葉があっているのかわからないけど、
day1と同じくダンスによる幕間をはさんで後半戦へ。S.E.M「Life's Side Menu!」は試聴すらロクに聞いてなかったんだけどすごく楽しかった。キッチンと料理を使った笑えるパフォーマンス(としか言いようがない)がトンチキで笑いっぱなしだったんだけど、歌詞としてはあくまで料理を通じて人生の第一歩を応援するエンパワーメントソングという彼ららしい曲。そしてそのあとまさかの個人的に最も好きな神速の楽曲「RIGHT WAY, SOUL MATE」!!!!!予想してなさすぎ&うれしすぎで口を突いた言葉は「なんでだ!!!」でした。そして続くディズニー風味のAltessimo「夢の不思議なラビリンス」の伸びやかな歌唱!!!!!音源でも思ったけど神楽麗(演:永野由祐)とはこんなに歌が上手い人だったか?歌唱力の確かな向上が感じられるパフォーマンスだった。ドラスタ2名のソロ曲はムービングステージの使い方が良くて、本来の用途である移動でなく単に上昇にだけ使って2名の曲の共通モチーフである空を想起させたのには感心した。CoDシリーズで「Dear you, Cheers!!」に並ぶダンス系キラーチューンであるF-LAGS「FANTASTIC DISCOTHEQUE」は馬鹿馬鹿しいくらい盛り上がってうれしかった。

 

初参加の気づき

・企業名コール恥ずかしい

なんか気後れしちゃって無言で見てました。時々企業名コールの後に「ありがとう!!!」と叫ぶオタクの声がして、もちろん慣習的というのもあるんだけどちゃんと思い入れがある人もこの中に大勢いるんだなと思った。

・不参加組の扱い、なんかいい

冒頭の山村賢のアナウンスと不参加組によるアナウンス、どうやた不参加組も会場にはいるという設定っぽいのがなんかよかった。仲間という感じがして。

・男性(野郎共、エンジェルくん)の多さ

内心不安だったので孤独感がなくほっとした。day2は隣も男性で、他作品の村瀬歩キャラに射抜かれて以来もふもふえんPとのことだった。気を使ってくれたのか色々声かけてもらってありがたかった。マジでありがとな!!!!その場でも言ったけどあのファンサ絶対アンタ向けのやつだったよ!!!!!!
ただ男性トイレでさえつづら折りの行列ができるほど混んだのには閉口した。

・ペンライトってあったほういい

初ライブだったのもあるけど、「なんでステージパフォーマンス見るのに光る棒がいるんじゃい 演技ってのは目と耳と心で感じるもんじゃい」などと開き直って何もグッズを持たずに参加したんだけど、パフォーマンス中の振る舞いや感情表現のやり方がわからなくてどうもばつの悪い感じがした。椅子の感じ(後述)的に基本的に棒立ちだし、そもそも周りのペンライト所持率があまりに高くて逆に浮くし……。初日の「初参加の人~」みたいなとこで光る棒振りたかったな。

UOがわかった

なんかオタクの中で「感極まって我慢できずUOを折った」みたいな物言いあるじゃないですか。今まで全く意味が分からなくて、そもそもUOウルトラオレンジの略であることを知ったのも今年なんだけど「なんでオレンジのペンライトじゃダメなんだ」「ウルトラて」と思っていた。
今回「スリーブレス」とか「RIGHT WAY, SOUL MATE」のイントロが流れたときに「ウワッ、今すぐに俺を馬鹿にしてくれる装置あれかし」と思ったんだけど、多分これに応えてくれるのが「UOを折ってはしゃぐ」なんだろうな。あと周囲の人が振ってるUOを見るとペンライトより明らかに明るくて、「ウルトラ」の意味もやっと分かった。光量なんだ。

・トロッコや移動ステージ、普通にキャーキャーしちゃう

声優ライブってどことなく冷めた目線も無くはなかったんだけど、いざ見ると、トロッコでこっち来ると、手なんか振られちゃうと、主観カメラで遊ばれると、普通にワー、キャーッ、ねえこっち見たよ、となってしまい我ながらウケてしまった。

・歓声のタイミングが良くわからない

スチール画像(クラファで言うと美食のチャイナ服とか)が出たり、ファンサに限らず、すみません、界隈の用語がわからないので間違ってたら指摘してほしいんですけどSEXアピールとか色恋営業的な要素の際に歓声が上がる。映像で何度も見ているはずの風景なんだけど、いざ自分がその輪の中にいると「わっ、みんな急にどうした」と思ってしまう。慣れの問題なんだろうか。
なおここでいう「歓声」は黄色いタイプの話をしており、私も意外性のある選曲には「ヴォーッ!!」「マジッ!?」などと叫んでおりました。

・みんなどんな曲でも表拍で乗る

なんだかんだでこれが一番衝撃的だったかも。神速の「RIGHT WAY, SOUL MATE」のAメロとかでさえみんなペンライトを表拍アクセントで振っていてなんか私が逆張りオタク君(そうではある)みたいになっていました。ほかの曲も、表×8か裏×4のどちらでも乗れる曲だと絶対に前者になるのが何か不思議だった。

www.youtube.com

↑参考

・座れて助かるけど窮屈

アリーナ席とかあるのかと思ったら完全な平場で、席番号指示に従って座る。結束バンドで横一列つながれた結ばれたパイプ椅子に座る。かなり窮屈な中でステージやちろっこを凝視するので体に悪い感じはしたけど、体力的には数十分おきのMCタイムのたびに座れるのはありがたい。立ちっぱなしで3~4時間グラインドコアデスメタルを浴び続けるライブとか本当につらいので。クラシックコンサートみたいな会場だとさぞ快適だろうな。

・荷物そこそこ持ってってもいい

パイプ椅子だったので座席の下に小ぶりなリュックくらいだったら置ける環境だった。ついいつもの習慣で「もみくちゃになったり大暴れしても大丈夫なように荷物はボディバッグorロッカー、周囲の人を気付つけない服装」と思ってしまったが、むしろノベルティの配布とか水分補給の都合上A4トート一つ持っていくくらいがちょうどよさそう。day2はトート持っていきました。

・「アイマス最高!」の微妙な立ち位置

アイマスのライブといえば終了後に多くの有志が「アイマス最高!パンパンパパパン」みたいなコールをするイメージがあったんだけど本講演ではかなりつつましい規模でしかしてなかった。冷遇ととられかねない扱いがあったことも事実なので「SideMは315だけどこの場でアイマスブランド全体を称揚するのはちょっと……」という人も多いのだろうか。

 

遠征になるので参加負荷は高いけどまた行きたいです。そのときはペンライトとアルテ色のシャツも装備していこうかな。

 

【新譜リリース直前】Six Feet Underアルバム全作レビュー【Death Metal】

はじめに

 元Cannibal CorpseのカリスマボーカリストChris Barnes率いるフロリダのデスメタルバンドSix Feet Underのオリジナルアルバム全作レビューです。少なくとも日本語メディアでは誰もやってないので私がやります。
 日本では大して話題にならず、かといって海外はというとChrisという人自体がネットミームじみた位置づけで、苛烈にいじって良い扱いを受けており、彼に対するアンチ行動自体が一種のミーム化している*1フシがあるので、どうも「えー、結構好きだけどなあ、たしかに駄作もあるけど」くらいの立ち位置の人間による冷静な評価を探しづらいのが実情です。そんな状況において、一旦これまでのアルバムについて情報と評価(主観的ではありますが)をまとめることはそこそこの価値があるのではないかと思っています。
 正直デスメタル自体にはそんなに詳しくないので、もしこの記事の知見の浅さに怒りを覚えた方がいれば、ぜひより良い記事を書いてください、煽りとかではなくマジで読みたいので。

基準

・オリジナルアルバムのみ。EP、ライブアルバム、カバーアルバムであるGraveyard Classicsシリーズは除く。
・メンバー、トラックリストはEncyclopaedia Metallumから丸写し。
・各アルバムに貼るリンクはbandcampのみ。購入が最大のミュージシャンサポートだという個人の信仰による。

 

行くぞ!!!!!!!!!!!!!!!!

 

1st. Haunted(1995)

sixfeetunder.bandcamp.com

メンバー
Chris Barnes    Vocals
Allen West    Guitars
Greg Gall    Drums
Terry Butler    Bass

トラックリスト
1.    The Enemy Inside    04:17
2.    Silent Violence    03:34
3.    Lycanthropy    04:41
4.    Still Alive    04:05
5.    Beneath a Black Sky    02:50
6.    Human Target    03:30
7.    Remains of You    03:23
8.    Suffering in Ecstasy    02:45
9.    Tomorrow's Victim    03:35
10.    Torn to the Bone    02:47
11.    Haunted    03:09

 記念すべき彼らの1stアルバム。Cannnibal CorpseのChris、ObituaryのAllenが中心となり結成されたサイドプロジェクト的バンドですが、ベーシストも元Death,元MassacreのTerryであり、まさにスーパーバンドと言って良い布陣です(GregはTerryの義兄弟らしい)。

 アートワークは1990年発表の映画「The Haunting of Morella」のVHSパッケージ上部をトリミングしたもの。

 音楽性としてはAllenが作曲していることもありObituaryに近く、デスメタルとしてはシンプルなスロー&ヘヴィ路線。ただし、「当時(World Demiseリリース直後)のObituaryのモダン要素は受け継いでいない」「途中で加速する展開がほとんどない」「John Tardyのクソデカ怨念ボイスとは声質も歌詞の乗せ方も対極のド低音ボーカル」といった諸要素で、そこそこ差別化は出来ている印象を受けます。Chrisの声はCannibal Corpse解雇直前の作品である"The Bleeding"のスタイルをそのまま続けており、「ものすごく低いけど歌詞は聞き取れなくもない気がする」くらいの感じですね。ただし、時折やっていた高音の喚き声(ミ゛ーーーーーーーーーー!!!みたいなやつ)は本作では封印されています。
 頻繁なリズムチェンジが印象的な1.The Enemy Inside、2バス連打と刻むリフでグルーヴとおどろおどろしさを両立させた2.Silent Violence、ヘドバン待ったなしのグルーヴメタルチューン5.Human Targetや9.Tomorrow's Victimに11.Hauntedなど、ライブ映えしそうな楽曲がいっぱい。特に5.はのちにリリースされたライブDVD"Live With Full Force"の速めのアレンジが素晴らしいので是非チェックしてみてください。
 個人的に、Obituaryはせっかくのドロドロした楽曲がJohnの全力ボーカルでぶち壊しになっているように聞こえてしまうときがあり、曲もボーカルもドロドロなこのアルバムのほうが正直好みなところがあります。総評としては、ObituaryのスタイルとChrisのボーカルスタイルが化学反応を起こして新しい魅力を生んだ作品と言えます。
 ただし次作以降、SFUの音楽性はObituaryを離れ、良くも悪くもかなり独特なスタイルへ変化していきます。

2nd.Warpath(1997)

sixfeetunder.bandcamp.com

メンバー
前作に同じ

トラックリスト
1.    War Is Coming    03:14
2.    Nonexistence    03:34
3.    A Journey into Darkness    02:17
4.    Animal Instinct    04:48
5.    Death or Glory (Holocaust cover)    02:50
6.    Burning Blood    03:57
7.    Manipulation    02:51
8.    4:20    04:20
9.    Revenge of the Zombie    02:48
10.    As I Die    03:54
11.    Night Visions    03:07
12.    Caged and Disgraced    03:33

 新曲、カバー、ライヴ音源からなるEP"Alive & Dead"(1996)のリリースを挟んで、1stと同じメンバーで制作された2nd。1stリリース直後にChrisはCannibal Corpseをクビになり(本バンドに入れ込みすぎたからとか、制作における意見の相違が深まったから、などと言われています)、本バンドは今後彼のライフワークとなっていきます。

 アートワークは上記リンクの「6のドクロマーク」のモノクロのものの他に、メンバーの写真にこのマークをコラージュしたものがあります。おそらく後者がオリジナルで、筆者が持っている当時の日本盤CDも後者のデザインです。

 音楽性は1stから大きく変化し、音作りは若干軽く、楽曲もハードロックやロックンロール、NWOBHMの要素を多分に含むライトなものに変化。それに合わせてかChrisのボーカルもどこかラフなスタイルになり、一部楽曲では明らかに力みを抜いた吐き捨てボイスやノーマルボイスが入るようになりました。1stの項で言及した高音の喚き声(ミ゛ーーーーーーーーーー!!!)も復活したものの、上記のような音楽性の中で出てくるとユーモラスに聞こえますね。ポップとさえ言えるキャッチーな楽曲は印象に残るものの、デスメタルとしての魅力は大きく減退しています。

 サイレンのSEとゆったりと刻むイントロリフに導かれる1.War is Comingはドロドロした暗い楽曲で前作に近い雰囲気ですが、グルーヴメタル風のノリの良さとラップメタルっぽく歌詞を詰め込んだヴァースを持つ2.Nonexistenceから雰囲気がライトな方向へ変わります。
 ファストチューンである4.Animal Instinctや11.Night VisionsもデスメタルスラッシュメタルというよりMotörheadに近い雰囲気です。
 5.Death or Gloryはカバーで、原曲はスコットランドのメタルバンドHolocaust(MetallicaもGarage Inc.で彼らのThe Small Hoursをカバー)。大したアレンジもしていない愚直なカバーですが、原曲の歌メロが平坦なこともあり、かなりいい感じにハマっています。
 6.Burning Bloodや8.4:20は、グルーヴメタル風でなかなかキャッチーなリフが印象に残るものの、ダラけたノーマルボイスが出てくるのが個人的にはキツいです。
 9.Revenge of The Zombieはかなりクールなイントロ、スラッシーなリズム、オカルティックなメロディを持つ楽曲で、本作の中で最も(というかほぼ唯一)デスメタル的としてかっこいい楽曲。
 総評としては、1stを期待して、あるいはデスメタルを期待して聴くと正直言って捨て曲のほうが多い一作ということになるでしょう。しかし、いわゆるDeath'n'Roll(ロックンロールのノリとシンプルさをフィーチャーしたデスメタル)路線であることや、「Chrisが歌うノリが古いグルーヴメタル」だとわかって聴けば楽しめるアルバムです。

3rd.Maximum Violence(1999)

sixfeetunder.bandcamp.com

メンバー
Chris Barnes    Vocals
Greg Gall    Drums
Terry Butler    Bass
Steve Swanson    Guitars

トラックリスト
1.    Feasting on the Blood of the Insane    04:32
2.    Bonesaw    03:07
3.    Victim of the Paranoid    03:05
4.    Short Cut to Hell    03:11
5.    No Warning Shot    03:04
6.    War Machine (Kiss cover)    04:25
7.    Mass Murder Rampage    03:10
8.    Brainwashed    02:43
9.    Torture Killer    02:42
10.    This Graveyard Earth    03:26
11.    Hacked to Pieces    03:36

 コアメンバーだったはずのAllenが前作を最後に脱退。新ギタリストとしてTerryとともにMassacre在籍歴があるSteveが加入します。過去2作の制作体制はAllen作曲、Chris作詞だったようですが、本作では作曲が分業制に。メンバーはこの体制でしばらく安定することとなります。

 音楽性は2ndのキャッチーな要素を活かしながらもある程度デスメタルに回帰。スラッシーなデスメタルデスボイスのグルーヴメタル、ゆるいDeath'n'Rollが混在するアルバムになりました。クリスのボーカルも深みを取り戻し、多用するようになった喚き声も、楽曲の雰囲気や図太いグロウルとの対比である程度のシリアスさを伴う様になりました。

 おどろおどろしいイントロからラップメタルのようなヴァースへ移行する1.Feasting on the Blood of the Insane、表打ちのスネア連打で強引に押し切る単調だがパワフルな2.Bonesaw、怒涛の2バス連打とキャッチーな刻みが超クールな3.Victim of The Paranoidでつかみはバッチリ。
 ゆるいグルーヴの4.Short Cut To Hellはかなり退屈なものの「Die Motherfucker, Die! Die!」という信じがたい歌詞のサビが最高な5.No Warning Shotで勢いを取り戻します。
 ただし後半がどうにもつまらなくなってしまいます。極度にミニマルなアレンジがかっこいいヘヴィチューン9.Torture Killer、流麗なギターソロが入る10.This Graveyard Earth、ザクザクとしたリフが印象的な11.Hacked To Piecesなど聞き所はあるものの、6~8曲目で一気に興をそがれる感があります。6.War MachineはKissのカバーですが、邪魔だと断言できるくらい酷い出来です。
 再発盤にはIron Maiden - WrathchildとThin Lizzy - Jailbreakのカバーが追加されていますが、正直言って6.と同じく邪魔です。彼らはどんな楽曲であっても殆どアレンジせずにカバーするため大抵の楽曲は滑稽になってしまいがち。前作のHolocaustカバーがむしろ特殊なのです。

 総評としては、どこかヘラヘラした緩さを感じた前作と比べて緩急の付いたアルバムではあるのですが、"緩"を何か履き違えてないか?と思わせる作品です。"急"に当たる楽曲の出来が良いので、スキップしつつ20分弱で聴くのがおすすめのアルバムです。

 

4th.True Carnage(2001)

sixfeetunder.bandcamp.com

メンバー
前作に同じ
トラックリスト
1.    Impulse to Disembowel    03:11
2.    The Day the Dead Walked    02:15
3.    It Never Dies    02:42
4.    The Murderers    02:40
5.    Waiting for Decay    02:41
6.    One Bullet Left    03:32
7.    Knife, Gun, Axe    03:56
8.    Snakes    02:44
9.    Sick and Twisted    03:52
10.    Cadaver Mutilator    02:35
11.    Necrosociety    04:09

 前作と同じメンバーで制作された4th。作曲分業体制も継続されています。

 前作で苦労していたキャッチーなロックっぽさとデスメタルらしさの両立がこなれた感じでできるようになったのが大きな進歩です。90年代のモダンメタルのグルーヴにデスメタルらしいリフを自然に組み合わせたような楽曲が明らかに増え、前作中盤のような気だるさはかなり払拭されました。音質も明らかに向上し、特にギターはローチューニングされたメタルギターとしてはだいぶクリアに聴こえる方でしょう。
 ただし上の書き方はかなり好意的な見方で、書き方を変えると、アルバム全体が当時のグルーヴメタルやニューメタル、もっと言えば「90年代にアメリカで流行ったメタルのあの感じ」に接近することを意味します。正直、そういう音楽が苦手な人には厳しいアルバムかもしれません。私は今でもDisturbedとかSevendustとかP.O.D.を聴くタイプなので全然いけます。
 そしてもう一つ大きな変化として、Chrisの声質が更に低く、そして水っぽくゴボゴボとした響きを伴う怪物的なものに変化。殆ど歌詞が聞き取れなくなりました。Cannibal Corpseの"Butchered at Birth"や"Tomb of Mutilated"で披露していたものの発展型と言っていいスタイルです。このゴボゴボ声を基本に適宜喚き声を挟むスタイルは、今後の彼の基本となります。

 引きずるようなリズムとピッキングハーモニクスが印象的な1.Impulse To Disembowel、Cannibal Corpse風のフレーズも含みながらオカルティックなリフで疾走する2.The Day The Dead Walked、オカルティックなリフを一貫しながら適度にリズムチェンジする5.Waiting For Decayや7.Knife, Gun, Axeは旧来のファンにもしっかり訴求しそうな楽曲。最後の2曲もタイプの違う暗い楽曲が連続して良い終わり方です。
 妙にキャッチーなリフがユーモラスな3.It Never Dies、明らかにラップメタルを意識したグルーヴィーな4.The Murderers、タイトさに欠けるProngみたいなリフとシンプルすぎる歌詞が笑いを誘う8.Snakesあたりのキャッチーさ優先の楽曲はかなり微妙なところで、個人的には「気分によっては飛ばす曲」の位置づけです。
 本作の目玉の一つに、ラッパーIce-Tが参加する6.One Bullet LeftとエクストリームメタルバンドCrisisの女性ボーカルKaryn Crisisが参加する9.Sick and Twistedという2曲のゲスト参加曲があります。前者はIce-TのラップメタルバンドBody Countに少し合わせたようなアップテンポな曲調で、中盤から入る彼のラップ&スポークンワードの印象度は抜群。ただし本当に彼が目立つのでギャングスタラップが苦手な人は耐えられないかも。後者はJeff Walker(Carcass)風の苦み走ったKarynの濁声がコーラスとして入っていますが、正直Chrisの喚きをオーバーダブすれば良くない?という印象です。

 総評としては、「モダンヘヴィネスやラップメタルへの抵抗の有無で評価が大きく変わりそうなアルバム」と言ったところです。アルバム全体としてキレがよく、グルーヴィーに、ヘヴィになり品質は上がっていますが、ピュアなデスメタルのファンからしたら、(音質向上を除けば)前作と対して変わらない評価になる作品でしょう。

 

5th.Bringer of Blood(2003)

sixfeetunder.bandcamp.com

メンバー
前作に同じ

トラックリスト
1.    Sick in the Head    04:11
2.    Amerika the Brutal    03:01
3.    My Hatred    04:22
4.    Murdered in the Basement    02:19
5.    When Skin Turns Blue    03:27
6.    Bringer of Blood    02:54
7.    Ugly    02:58
8.    Braindead    03:44
9.    Blind and Gagged    03:09
10.    Claustrophobic    02:50
11.    Escape from the Grave    09:36

 同じメンバーの5th。本作以降、Chrisが何作かで自らプロデューサーを務めます。
 音圧が更に上がり、前作の鋭いギターサウンドを多少犠牲にしたかわりに、ギターとベースの迫力が大幅に増しました。ただしその分ドラムサウンドが割りを食った印象があります。

 音楽性としては、前作からデスメタル感も鋭さも大幅にスポイルし、「もっさりしたどん臭いグルーヴメタルに凄まじいデスボーカルがのっている」という感じの、ヘヴィでキャッチーですがどこかシュールさの漂う作風に。面白い作品ですが、かっこよさという意味では微妙なアルバムです。

 1.Sick in The Head、8.Braindeadなど、デスメタルらしいパートを多く含む楽曲もあるにはありますが、中心となるのは3.My Hatred、5.When Skin Turns Blue、6.Bringer of Blood、7.Ugly、10.Claustrophobicなどのグルーヴ楽曲。そういうものだと割り切ってしまえばリフも悪くないので結構楽しめます。
 2.Amerika The Brutalは完全にパンクロック。適当なボーカル、今までの露悪&グロ趣味作品群のせいで説得力がなさすぎる反戦歌詞、そのくせ異様に印象に残るキャッチーさがムカつきます。
 4.Murdered in The Basement、9.Blind and Gaggedはスラッシュメタル系のリフを持つ楽曲。アルバムの流れの中でいいアクセントになっていますが、曲単体としては演奏も歌唱もリズム感がどんくさいのでちょっと微妙です。
 11.Escape From The Graveは終了後に無音時間を挟んでシークレットトラックである(12.)White Widowへ。ギターレスのジャムに即興でボーカルを入れたようなゆったりかつ断片的な曲で、本作制作時の雰囲気を端的に示していると言えなくもないかも。

 総評としては、個人的には緩く乗れる楽しいアルバムですが、真面目にデスメタルとして評するならば厳しい作品です。ただし、グルーヴィーな楽曲はそこらのニューメタルよりよほどアッパーで楽しいので、聴くだけ聴いてみると良いのではないでしょうか。

 

6th.13(2005)

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メンバー
前作に同じ

トラックリスト
1.    Decomposition of the Human Race    03:42
2.    Somewhere in the Darkness    03:53
3.    Rest in Pieces    03:08
4.    Wormfood    03:45
5.    13    03:07
6.    Shadow of the Reaper    03:39
7.    Deathklaat    02:36
8.    The Poison Hand    02:58
9.    This Suicide    02:21
10.    The Art of Headhunting    03:34
11.    Stump    03:12

 前作と同メンバーかつChrisプロデュースの6th。アルバムタイトルは単にこれまでにリリースされた作品をEP等全て含めた場合、本作が13作めになるからということだそうです。気合いゼロのアートワークがかなりしょぼくて残念。

 まず最初に言及したいのは、妙に音量が小さく各楽器のまとまりも感じられないミックス。前作、前々作ともに迫力のあるサウンドだったので、決してこの変な音作りがChrisの趣味というわけではないと思うのですが、スタジオもエンジニアも前作と同じなので原因はわからず。妙にこじんまりして聴こえるアルバムになってしまっています。

 気を取り直して内容に話を移すと、前作までと比べてかなりデスメタルへ揺り戻されている印象です。相変わらずブラストビート無しの楽曲ばかりですが、全体として楽曲は速め、リフもグルーヴメタル系のものは減ってデス/スラッシュメタル系のものが増えました。
 デスメタルらしい不穏なメロディがフックとして仕込まれた刻みリフはかなりかっこよく、6.Shadow of The Reaperは特にその代表。
 その他、1.Decomposition of the Human Race、2.Somewhere In The Darkness、7.Deathklaatなどは、デスメタリックなリフとグルーヴメタル系のリズムを兼ね備えた彼らの個性が出た楽曲。
 3.Rest in Pieces、10.The Art of Headhuntingはかなりノリのいいリフが印象的で、前作までに欠けていた勢いの良さがあります。
 4.Wormfood、5.13はシンプルな構成に手数の多いフレーズを組み合わせていますが、他の楽曲と比べて単調に聞こえるきらいがありますね。
 8.The Poison Hand、9.This Suicideと緩めのDeath'n'Roll曲が続きますが、これくらいだとアルバムのアクセントとしてちょうどいいですね。
 11.Stumpはスラッシーなパートでズルズルとスロー化する中盤を挟むシンプルながら攻撃的な一曲で、アルバムを痛快に締めくくります。

 総評としては、デスメタルらしさをある程度取り戻した点で評価できる作品です。良い楽曲が増えたのに、音質のせいで他作品よりも地味に聞こえることで損をしている気がします。
 一方で、リフがキレを獲得したことによって顕在化した問題があり、それはリズム、特にGregのドラムの切れ味の無さです。速い曲は表打ちスネア4つ打ち一辺倒、2バスもあまり凝った刻みでは連打できず、2ビートもどこかもっさりした印象です。前作までは全パートがそんな感じだったので気にならなかったというか、むしろゆったりしたグルーヴの要となっていたのですが、本作でデスメタルらしい楽曲を志向したことでドラムが悪目立ちしてしまっています。

 

7th.Commandment(2007)

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メンバー
前作に同じ

トラックリスト
1.    Doomsday    03:48
2.    Thou Shall Kill    03:07
3.    Zombie Executioner    02:52
4.    The Edge of the Hatchet    03:55
5.    Bled to Death    03:17
6.    Resurrection of the Rotten    02:55
7.    As the Blade Turns    03:33
8.    The Evil Eye    03:26
9.    In a Vacant Grave    03:35
10.    Ghosts of the Undead    03:58

 前作と同様のメンバー、Chrisプロデュースの7thアルバム。
 アートワークは前作と同じA.M.Karanitantなる人物が担当していますが、前作と似たような色調で同じくドクロモチーフでありながら、失笑もののチープさだった前作とは違いメタルアルバムらしいものに。
 音作りに関しても、前作のしょぼいミックスはどこへやら、超ヘヴィに仕上がっています。ミックスにErik Rutan(Hate Eternalリーダー、後にCannibal Corpseにも加入)が関わり彼のスタジオでレコーディングしたことが大きいのでしょうか。

 音楽性はまた前作から若干の変化があり、アルバムの大半を占めるミドルテンポ楽曲のリフからはグルーヴメタル色が更に減退。ノリの良いリズム+不穏なリフという組み合わせが増えたことと上述のヘヴィな音作りとで、アルバム全体が重厚な印象になりました。
 そして大きいところとして、これまでアルバムに1曲あるかどうかだったスラッシュメタルらしい2ビートを叩く楽曲が4.The Edge of the Hatchetと6.Resurrection of the Rottenの2曲入っています。3rd以降の作品は0~1曲だったので、「久しぶりにデスメタリックな勢いのあるアルバムだ」と感じさせます。
 これらの変化によって、ここ数作のSFUの弱点だった緩さ、気だるさがかなり改善されています。と言っても、2.Zombie Executionerや9.In A Vacant Graveのような旧来のファストチューンもあるにはあり、これらはやはり退屈なのですが。それでもここは、「疾走曲にもバリエーションがでてきた」と肯定的に捉えたいところ。
 彼らの真骨頂であるグルーヴデスメタル曲としては、叩きつけるようなスネアとユニゾンするリフがかっこいい1.Doomsday、ノリの良いDeath'n'Rollでありながらちゃんと重苦しい8.The Evil Eye、最高にシンプルで切れの良いグルーヴメタルリフとゴボゴボボーカルの相性抜群な最終曲10.Ghosts Of The undeadあたりがいい感じです。

 総評としては、退屈な楽曲もあるにはあるものの、ヘヴィなプロダクションといくつかの優れた楽曲により、この編成で作られたアルバムの中では特に出来の良い一作だと言えます。

 

8th.Death Rituals(2008)

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メンバー
前作に同じ
トラックリスト
1.    Death by Machete    03:45
2.    Involuntary Movement of Dead Flesh    03:29
3.    None Will Escape    03:24
4.    Eulogy for the Undead    04:17
5.    Seed of Filth    04:58
6.    Bastard (Mötley Crüe cover)    03:26
7.    Into the Crematorium    03:43
8.    Shot in the Head    05:01
9.    Killed in Your Sleep    04:37
10.    Crossroads to Armageddon    02:09
11.    Ten Deadly Plagues    05:10
12.    Crossing the River Styx (Outro)    01:16
13.    Murder Addiction    03:56

 制作体制は引き続き。ただしミキシングエンジニアはErikでなく多くのメタルバンドを手掛けたToby Wrightが担当し、前作に比べ迫力は減退したものの、アングラ感が増幅された、地味ながらもなかなかクールなサウンドでまとめ上げています。

 音楽的にはやや地味な出来に仕上がっています。縮小再生産的な楽曲がやや目につき、パート単位で聴きどころのある2.Involuntary Movement of Dead Fleshや4.Eulogy For The Undeadのような曲も、過去の様々な曲のツギハギという印象が先立ってしまいます。
 ただし、すべてがそうだというわけではありません。彼らには珍しいクリーントーンのイントロとシャッフルビートの中盤に意外性がある1.Death By Machete、執拗に刻み続けるギターとまさかのハードコア風コーラス入りのサビがキャッチーな5.Seed Of Filth、ザクザクと心地よく刻むリフとメロディアスなギターソロが好印象な8.Shot In The Head(イントロSEは長すぎるけど)など、アルバムの要所要所に耳を惹く要素が設けられています。
 本作初の試みとして挙げられるのは10.Crossroads to Armageddonや12.Crossing the River Styx(Outro)といったinterlude曲の存在。前者はアンビエント&しょぼい打ち込みのキックとハイハット&Chrisのささやき声からなる楽曲で、意味不明さとチープさが却って不気味さを演出していい感じ。後者はメロディアスなギターインスト。次にも曲があるのに(Outro)となっている理由は不明です。
 あと地味に3.None Will Escapeではごく一部(1:15~,3:15~)にブラストビートが使われています。おそらくSFUの曲として初出ではないでしょうか。ただし曲自体がこれまでどおりの「スネア4つ打ちもっさり速め地味デスメタル」なのであまり印象には残りません。
 「本編に組み込まれるカバー曲」としては3rdぶりとなるMötley Crüeのカバー6.Bastardは原曲そのままの明るさがシュールで面白いものの、仄暗い雰囲気をまとったアルバムなので場違いな印象が強いですね。5thあたりまでにやればよかったものを……。

 総評として、デスメタルらしい陰鬱な雰囲気とSFUらしさを出そうとしているものの、いくつか導入された新規要素の成果がまちまちであること、旧来路線の楽曲がいまいちなことによって若干チグハグな印象になっています。ただ、楽曲単位で見れば佳曲が複数あり、特に5.はかなり優れた楽曲です。

 

9th.Undead(2012)

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メンバー
Chris Barnes    Vocals
Steve Swanson    Guitars (lead)
Kevin Talley    Drums
Rob Arnold    Guitars (lead, rhythm), Bass

トラックリスト
1.    Frozen at the Moment of Death    03:42
2.    Formaldehyde    02:47
3.    18 Days    02:40
4.    Molest Dead    03:13
5.    Blood on My Hands    03:37
6.    Missing Victims    03:57
7.    Reckless    03:04
8.    Near Death Experience    02:56
9.    Delayed Combustion Device    03:07
10.    The Scar    03:27
11.    Vampire Apocalypse    03:54
12.    The Depths of Depravity    03:49

 オリジナルメンバーであったリズム隊のGreg GallとTerry Butlerがついに脱退。Chris一人だけが残されてしまいました。
 新メンバーとして、ドラムにはDying Fetusはじめ多くのバンドを渡り歩いたKevin、リズムギターとしてChimairaのギタリストRobが加入しベースも兼任。作曲はRob一人のようです。
 プロデューサーもChrisではなくMark Lewisという人物へ。The Black Dahlia Murder、Trivium、Devildriverといった、当時の最前線バンドの作品を数多く手掛けたエンジニア/プロデューサーです。

 音楽性はこれまでのどの作品とも似ていない、誰にも予想できなかったであろう路線となりました。
 ドラムはこれまで極々稀であったブラストビートや変拍子含めた複雑なリズムチェンジを頻繁に行い、楽曲は一気に高速&複雑化。スネア4つ打ちのファストパートも殆どなくなりました。
 ギターリフは更にデスメタリックになると同時に、その演出方法もトリルでドロドロしたメロディを頻繁に差し込む、George加入以降(正確には"The Wretched Spawn"以降あたり)のCannibal Corpse風な手法を使うようになりました。
 全体的な印象としては不気味度とモダン度が大幅に上昇。一方で、トリガーっぽいベチベチしたサウンドのドラムや、キレよくテクニカルなギタープレイなどによって、ズルズルと引きずるような重苦しい雰囲気はかなり減退しました。

 1.Frozen at the Moment of Deathから始まる3曲は新しいスタイルのSFUを存分に聞かせてくれます。楽曲の質が高くChrisの声も健在なので、前作までの個性が弱くなったことよりも新しい音楽性を歓迎する気持ちになりますね。
 4.Molest Dead以降の中盤はスローな曲多め。と言ってもこれまでのDeath'n'Roll楽曲はほぼ無く、スローなリズムの隙間を手数の多い不穏なリフやフィルインが埋める不気味で情報量の多いスタイルです。各楽曲のリズムチェンジも旧作に比べるとかなり多く、スロー一辺倒の曲や単調な速いだけの曲はなくなりました。
 数少ないDeath'n'Roll楽曲が7.Recklessですが、ホラー風のフレーズをユニゾンするベースとギター、かつてのようなコミカルさは見せないChrisのボーカルで旧作とはしっかり差別化出来ています。
 最終曲12.The Depths of Depravityはグルーヴィーなリフもブラストビートもクリーンパートも盛り込りつつ最後はヘヴィなスローパートでガッツリ落とす欲張りな1曲で、本作の音楽性を総括しています。

 総評として、バンドの強みだけを上手く抽出してゼロ年代デスメタルと融合させた会心作と言えます。新メンバーの作曲力とキレの良い演奏、Steveがだんだんと身に着けてきたオールドスクールデスメタルらしいセンス、Chrisの唯一無二のボーカルが絶妙に噛み合ったからこその作品です。
 旧作のどこかどん臭い雰囲気に愛嬌を感じていた向きとして寂しい気持ちもなくはないのですが、これだけ出来が良ければ満足感が上回ります。

 

10th.Unborn(2013)

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メンバー
Chris Barnes    Vocals
Steve Swanson    Guitars
Kevin Talley    Drums
Jeff Hughell    Bass
Ola Englund    Guitars

トラックリスト
1.    Neuro Osmosis    03:10
2.    Prophecy    03:19
3.    Zombie Blood Curse    04:08
4.    Decapitate    02:50
5.    Incision    02:48
6.    Fragment    02:56
7.    Alive to Kill You    03:17
8.    The Sinister Craving    02:16
9.    Inferno    02:53
10.    Psychosis    03:47
11.    The Curse of Ancients    04:37

 まるで前作のアウトテイク集のようなタイトルとアートワークですが、れっきとしたフルアルバムです。他にも似たような作品があり少しややこしいので、ここで少し整理しておきましょう。

 (左)Undead…2012年リリースの9thアルバム。
 (中央)Unborn…2013年リリースの10thアルバム。
 (右)Unburied…2018年リリースのアウトテイク集。ソつまらないので聴かなくていいです

 前作で加入まもなく優れた作曲センスと演奏を披露していたリズムギター兼ベースのRobがあっという間に脱退(一部楽曲でゲスト参加)。
 後任ギタリストとして加入したのはメタルバンドFearedのリーダー&機材系YoutuberであるOla。後のThe Hauntedギタリストであり、ギターブランドSolar Guitarsを立ち上げる人物です。今ではYoutubeチャンネル登録者数80万人を超え、モダンエクストリームメタルのリスナーやギタリストに広く知られる人物ですね。
 そして専任ベーシストとしてバカテクデスメタルバンドBrain Drillの1stに参加していたJeffが参加。正式なツインギターバンドになりました。プロデュースはSFU名義となり、前作プロデューサーのMarkはドラムのレコーディングエンジニアを担当。作曲は分業制。また、一部楽曲の作曲と演奏にWhitechapelのBenjamin Savageが参加しています。

 ゼロ年代メタルを土台とするテクニカルな二人が加入、ゲストも壮絶デスコアバンドから招聘しているわけですが、何故か本作の音楽性は前作に比べて若干シンプルでヘヴィな、"Death Rituals"に近い路線に。ただし、前作時のメンバー交代による切れ味の良いドラミングと手数の多いリフはそのままなので、聴いていて退行した印象はありません。
 1.Neuro Osmosisはスローなデスメタルですが、前々作までの彼らのスロー曲とは全く趣を異にしており、ヘヴィなパートのバックで鳴り響く不協和音や、クリーンなロングトーンのハーモニーやアコースティックギターを使用することで、プログレデスやDemilich以降のアヴァンギャルドデスからメロディセンスだけを拝借したような独特の雰囲気があり面白いです。
 3.Zombie Blood Curseはノリの良いスラッシュ系の楽曲。現メンバーだとかなり切れ味のいい演奏になり、Power Trip - Executioner's Taxのような印象になってかなりかっこいい。
 4~6,8~10曲目は「旧路線のリファイン版」という感じのミドルテンポが中心の楽曲。あまり印象に残らないものの、演奏とアレンジが優れているのでかつてのように「つまんね~飛ばそうっと」とはならないですね。
 7.Alive To Kill Youはブラストから始まって度重なるリズムチェンジで飽きさせない佳曲。
 最終曲11.The Curse Of Ancientsは1.のようなメロディセンスをグルーヴィーなデスメタルに落とし込んで絶望的な雰囲気でアルバムを締めくくります。

 総評としては、旧作のノリの良さや重苦しさと、前作の現代的なキレの良さをいいとこ取りしたアルバムであると言えます。どちらもバランスよく味わえる一方、器用貧乏で地味な印象も。特に前作から続けて聴くと「前作を地味にしたアルバム」という印象が強く残ってしまいます。
 個人的には"Death Rituals"の上位互換っぽい印象で結構好きなアルバムですね。

11th.Crypt of The Devil(2015)

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メンバー
Chris Barnes    Vocals
Phil Hall    Guitars (rhythm), Bass
Brandon Ellis    Guitars (lead)
Josh "Hallhammer" Hall    Drums

トラックリスト
1.    Gruesome    03:06
2.    Open Coffin Orgy    04:22
3.    Broken Bottle Rape    03:02
4.    Break the Cross in Half    03:35
5.    Lost Remains    03:25
6.    Slit Wrists    03:54
7.    Stab    03:52
8.    The Night Bleeds    04:09
9.    Compulsion to Brutalize    03:17
10.    Eternal in Darkness    04:12

 バンドからKevinとOlaが脱退。しかし他のメンバーも本作には参加せず、ChrisのサポートとしてCannibal CorpseのパロディバンドCannabis Corpseの3人が参加しているというなんとも不思議な編成で制作された11th。ChrisがCannabisのアルバムに客演したことがきっかけで実現した編成のようです。PhilはIron LeaganやMunicipal Waste、BrandonはThe Black Dahlia Murderの活動でも知られています。
 ちなみに、某有名メタル系ブログでは本作からMarco Pitruzzellaがドラムをプレイしたような表記がありますがそれは誤りで、本作の制作に前後して加入しているものの、この時点ではライブツアーメンバーとしての参加です。

 音楽的な路線はズルズルしたデスメタルをかっちりしたモダンな演奏で聴かせるスタイルです。こう書くと前作と同様のスタイルに聞こえますが実際はちょっと違います。
 本作はCannibal Corpseを連想させる楽曲が多く、良くも悪くもオマージュバンドらしさが強くにじみ出ています。特にドラムは、Cannibal CorpseのPaulに激似のプレイスタイル(ブラストビートが似すぎ)が楽曲の力強さに貢献しています。ただしその分楽曲の雰囲気が前作より若干どんくさくなってしまった気がしないでもないですが。また、本作はギターソロの出来がいいのも特徴です。Brandonの流麗でキャッチーなリードセンスは、SFUともCannibal Corpseとも違った個性があり、本作のレベルを引き上げています。
 一つ気になるのは、Chrisのボーカルパフォーマンスに陰りが見えてきたことです。低音があまり出なくなり、吐息が微かに混ざったような声質に変化したことで迫力が減退。リズム感も悪くなり、明らかに乗り遅れているように聴こえる部分が出てきました。真偽不明ですが、海外のメタルファンの中では「マリファナをやりすぎたせい」が通説となっているようです。

 楽曲単位に話を移すと、"Kill"以降のCannibal Corpseっぽいうねるリフにメロディを加えたようなリフでストップ&ゴーを繰り返す曲展開と、かなり出来の良い妖艶なギターソロが耳を惹く1.Gruesome、マーチング風/超スロー/荘厳メロディアスと印象的なパッセージをツギハギしたような2.Open Coffin Orgy、テンポチェンジが印象に残る5,6曲目、Cannibal Corpseのハイレベルな模倣となっているスラッシーな7.Stab、ゴリ押しミドルテンポと美しいギターソロの対比がクールな10.Eternal In Darknessなど面白い楽曲が多くあります。
 上述の通り楽曲の出来を底上げしているのがBrandonのギターソロで、8.The Night BleedsのようなかつてのSFUなら捨て曲になっていたような地味な楽曲をも上手く盛り上げています。

 総評としては、ここ最近の数作が気に入っているファン、そしてCannibal CorpseとCannabis Corpseのファンなら楽しめる作品です。ただし、Chrisのパフォーマンスの弱さを許せることが前提。
 また、一部の楽曲がかなりCannibal Corpseに似ているので、却って「これなら本家を聴くかなあ……」と思ってしまう人もいそうですが、上記の通りギターソロはマジで全全違います。

 

12th.Torment(2017)

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メンバー
Chris Barnes    Vocals
Jeff Hughell    Guitars, Bass
Marco Pitruzzella    Drums

トラックリスト
1.    Sacrificial Kill    03:55
2.    Exploratory Homicide    02:45
3.    The Separation of Flesh from Bone    04:52
4.    Schizomaniac    03:54
5.    Skeleton    03:43
6.    Knife Through the Skull    03:40
7.    Slaughtered as They Slept    04:55
8.    In the Process of Decomposing    03:50
9.    Funeral Mask    03:28
10.    Obsidian    04:14
11.    Bloody Underwear    03:41
12.    Roots of Evil    04:02

 前作は収録メンバーとしてCannabis Corpseのメンバーを招き、ライブツアーはギターのSteve Swanson、ベースのJeff Hughell、新メンバーであるドラムのMarco Pitruzzellaと行っていました。その後、長年のパートナーであったSteveとは袂を分かち、ベースのJeffはギター兼任で前々作に引き続き参加、Marcoが新しいドラマーとして加入しています。作曲はすべてJeffが担当。MarcoはJeffとともにBrain Drillの1stに参加したメンバーですから、前作の「実質Cannabis Corpse」の次は「実質Brain Drill」な編成になっています。

 まず言及したいのが酷いアートワーク。真っ白な背景に一昔前のCGで吊るされた異形のゾンビ。異形ぶりはともかく絵面がショボすぎます。裏ジャケットにはバンドのアイコンの一つである「鏡文字の6」をモチーフにドクロと鳥を重ね、背景に程よく血痕を散りばめた厨二病感たっぷりのイラストが、ブックレット内には不気味なイラストや凄惨な拷問&殺人のひとコマが(ダサいのもあるけど)てんこ盛り。これらのどれかをジャケットにしたほうが流石に多少マシではないでしょうか。

左:裏ジャケットの「6」 右:ブックレットの不気味な「白骨死体の木」。ブックレット内の出来の良いイラストは凄惨すぎてあげられません

 音作りはまた少し変化しました。ベースが低音よりもアタック感重視の音作りをしていることでオールドスクールデスメタル感が薄れている点は好みが分かれそう。個人的にはややマイナスです。
 ドラムはトリガーを使わない太いサウンドで大変いい感じです。Marco、本作のドラムを全編ワンテイクで録音し、編集もクオンタイズも無しで終えたそうです。怪物だ。*2

 気を取り直して楽曲に言及したいところですが、正直なところこれがあまりよろしくありません。"Undead"から前作まで、多少の違いはあれど「ドロドロした楽曲をかっちりとした演奏で聴かせる渋いデスメタル」という方向性は共通していましたが、本作は不気味さがあまりなく、「ドロドロ」の部分が「かったるい、退屈、それでいて前期の愛嬌もない」に置き換わったような雰囲気になってしまいました。
 疾走パートもそれなりにあり体感速度もかなりのものなんですが、スローパートが無味乾燥すぎてその良さを潰していることもしばしば。
 「かっちりとした演奏」という点ではChris以外の二人が流石のパフォーマンスを見せていますが、楽曲が地味すぎて宝の持ち腐れ感があります。
 Brain Drillといえば、2008年の1st"Apocalyptic Feasting"リリースでメタル界に激震を起こし「演奏がうますぎる、何をやっているのかさっぱりわからない」という絶賛と「演奏がうますぎるだけ、何をやっているのかさっぱりわからない」という罵倒を浴びつつも「脳ドリ」の愛称で親しまれたバンドです。そんなメンバーを招くのであれば、ブルデス/テクデス化とは行かずとも、"Undead""Unborn"あたりのスタイル、あるいはその先の進化を聴きたかったところです。
 Chrisの声質は更に悪化。深みはさらに無くなり、「ものすごく声域の低い老人がクッキーモンスターのものまねをしている」みたいな声になりました。リズム感の悪さも相変わらず。

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 1.Sacrificial KillはCannibal Corpseっぽくおどろおどろしくうねりながらユニゾンするイントロリフと中盤の強烈なブラストビートの対比が印象的。
 2.Exploratory Homicideはかっこいい疾走曲ですが滅茶苦茶Cannibal Corpseっぽくてちょっと面白いです。
 暗いスローパートで溜めに溜めてからヘドバン誘発必至のミドルテンポスラッシュに突入する7.Slaughtered As They Sleptは素直にかっこいい。
 9.Funeral Maskはイントロ/アウトロがかなりドゥームメタルストーナーロックっぽい楽曲で、サビもルーズなグルーヴがあり、2nd~5thあたりに入っていそうな感じです。

 総評としては正直退屈なアルバムです。パワフルなサウンドと上記のようないくつかの佳曲のお陰で、全編通してつまらないわけではありませんが、8曲目以降は特にずっと退屈で、聴き終わったときの疲労感が大きいです。
 また、つまらない曲についてはボーカルパフォーマンスの劣化のせいで、かつてのように「曲は退屈だけどこのすさまじい声が乗るだけで聞けちゃうんだよな~」という感覚もないので、余計アルバムの評価を上げづらくなっています。

 

13th.Nightmares of The Decomposed(2020)

sixfeetunder.bandcamp.com

メンバー
Jeff Hughell    Bass
Ray Suhy    Guitars
Jack Owen    Guitars
Chris Barnes    Vocals
Marco Pitruzzella    Drums

トラックリスト
1.    Amputator    03:43
2.    Zodiac    02:53
3.    The Rotting    03:15
4.    Death Will Follow    02:51
5.    Migraine    04:20
6.    The Noose    04:29
7.    Blood of the Zombie    03:21
8.    Self Imposed Death Sentence    03:02
9.    Dead Girls Don't Scream    03:15
10.    Drink Blood, Get High    04:25
11.    Labyrinth of Insanity    04:19
12.    Without Your Life    03:38

 Jeffがベース専任となり、ツインギター体制で制作された13th。
 加入したギタリストは”Crypt of The Devil”に客演もしていた元Cannabis CorpseのRay Suhyと、なんとChrisとともにCannibal Corpseを結成し2004年まで在籍、脱退後もDeicideで活躍したデスメタル界のカリスマギタリストJack Owen。SFUではおとなしいもののテクニック自慢なJeffとMarcoも引き続き在籍しています。作曲はJack。
 この豪華な布陣に「"Undead"レベルとはいかずとも、SFUらしさと高品質デスメタルが融合した作品が聴けるかも……!」という期待、「『なんでこのメンバーでこういう作品になる?』という作品をしばしば出してきたSFUだ。今回もどうせ前作の延長線だよ」という諦めの両方を世間から受けながらリリースされた本作は、なぜかとんでもない問題作&賛否両論(9割否)作でした。

 一番の変化はやはり音楽性。殆どの楽曲はストーナーロックに近い気だるいグルーヴに支配され、デスメタルらしいおどろおどろしさも、モダンメタルの鋭さもなく、かといってストーナーのような気持ちの良い酩酊感もなく淡々と進行するばかり。1~3つ程度のリフを機械的に組み合わせただけの、AC/DCの魅力を履き違えたような単調なミドルテンポ曲が延々と続きます。
 本記事を通読していただいた皆様にはこの説明だけで察しがついたかもしれませんが、要するになぜか今更"Warpath""Maximum Violence""Bringer of Blood"の捨て曲だけを集めたような音楽性になったのです。初期作も把握しているファンは懐かしのつまらなさに苦笑、中期以降のリスナーは「気だるさのあるバンドだとは思っていたがここまで堕ちたか!」と絶句、Metallumのアルバムレビューでは全オリジナルアルバム中最低評価の、平均満足度18%を記録しました。
 Metallumのレビューは賛否両論が極端になりがちですが、それでもJudas PriestDemolitionが57%、CryptopsyのThe Unspoken Kingが31%、Metallica&Lou Reed のLuluが19%といえば本作の低評価ぶりがわかるでしょうか。音質も「しょぼくなった"Bringer of Blood"」と言った感じの、もっさりしている上に圧もない感じに。
 そしてひどいのがChrisのボーカル。前作でかなり厳しいパフォーマンスを見せていた彼ですが、本作でその声質は更に悪化。明らかに無理をして出しているような、低さも太さも足りない声で、迫力の欠片もありません。リズム感も前作同様の怪しさですが、本作が気だるい楽曲ばかりなことでその欠点が若干隠れているのは皮肉なものです。
 新境地として、時折ピッグスクイールデスボイスの中でも、こもった高音と強い倍音を出すことで豚の断末魔のように聞こえるもの)を披露していますが端的に言ってとてもレベルが低く、単に喉を潰すようにして声量を抑えた喚き声にしか聞こえず、みっともなさと滑稽さが際立っています。

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↑格好良く決まっているピッグスクイールの例

 1.Amputatorは本作随一の佳曲にして真面目な意味でのハイライト。おどろおどろしいリフでスラッシーに爆走するクールなデスメタルです。Chrisのボーカルは酷いものですが、ここまで曲が攻撃的だと雑な発声もスラッシュメタルっぽく聞こえ許容範囲。
 2.Zodiacはずっしりと重く気だるく単調で退屈な、本作の雰囲気を象徴する楽曲です。ヴァースにボーカルだけのパートがあるのですがそれがあまりにも聞き苦しく、「なぜChrisの声のヤバさをさらすだけのアレンジを……?」と困惑してしまいました。
 3.The Rottingは小節の頭に「ミ゛ー!」と叫ぶだけのサビでさえズレまくるChrisに戦慄。この曲は本作にあるまじきことに途中でリズムチェンジしかっこいいギターソロが入ります。
 4.Death Will Followはなかなかノリの良いリフが好印象。
 6.The Nooseはヤバい意味で本作のハイライト。一切変化しない単調なリズム、ほぼ1リフを押し引きするだけのギター、言わずもがなのボーカルによる虚無の楽曲で、フィルインで変化をつけようとするドラムの奮闘虚しく意味不明過ぎて忘れられないシュールな1曲になっています。
 8.Self Imposed Death Sentenceはバキバキのベースが耳を惹くグルーヴィーなイントロリフで期待感を煽るも、煮えきらない曲展開と、シャッフルビートという概念を理解していないとしか思えないChrisの凄まじい乗り方がヘッドバンギングを妨害すること請け合い。似たような曲調の10.Drink Blood Get High(酷い曲名)ではそこまでリズムが破綻しているわけではないのも謎が深まります。
 9.Dead Girls Don't Screamはただでさえみっともない曲名を2つのつまらないリフを往復するだけの退屈な楽曲に乗せて連呼しまくる本作らしい駄曲。ただしギターソロは悪くないです。
 最終曲12.Without Your Lifeはオカルティックなリフと終末感に溢れたギターソロがクールな疾走曲。曲が多少良くてもボーカルは例によって酷く、歌い出しの「ミ゛ーーーーーーーーー……(息切れ)」に苦笑。あまりに何も考えてなさそうな単調な歌詞の乗せ方も凄いです。1.のボーカルはまだマシだったのですが……アルバムを通して疲れちゃった?

 総評すると、SFUの中でも屈指の失敗作です。Metal Blade Recordsの関係者はこれに文句をつけなかったのか、これだけのメンバーを飼い殺しにするな、など色々言いたくなります――ただ、かといって聴くのも不快な悪夢か、絶対買うべきでない一作かと言われると、そう断言するのも難しい、しかしそのように評する人がいても全くおかしくない、不思議な仕上がりの作品だというのが私見です。
 というのも、本作はいくらなんでも滑稽すぎるのです。上記の欠点は一周回って愛嬌として感じられるものであり、数分おきに苦笑できる作業用&ドライブ用BGMとしては案外悪くないと思っています。

 本作を肯定的に聴くヒントとして、「ボアードデスメタル」という概念をご紹介したいと思います。初出はおそらくObliteration Records代表の関根氏の提言だと思うのですが、端的に言えば「鬱屈した初期デスメタルに影響を受けた、盛り上がらない、味気ない、地味で退屈なデスメタル」のことです。関根氏自身も体現するバンドとして2021年にGravavgravを結成しています*3
 ヘヴィミュージック専門ファンジン「GUTZiNE」第5号の「ボアードデスメタル五選」では編集長のもつA氏が本作を選出し、「ほぼ同じようなリフを繰り返すような印象を受ける単調な曲は逆に中毒性を見いだせる」「ボーカルも全然ドスが効いてなくてそこもポイント高い」とコメントしています。
 デスメタル/ヘヴィメタルとしては限りなく駄作な本作ですが、単調さゆえの中毒性という意味では隠れた魅力がある作品であり、実はGang of FourKilling Jokeのようなポストパンク系が好きな人のほうが笑って「これはこれでアリ」といえる作品かもしれません。

 

14th.Killing for Revenge(2024予定)

sixfeetunder.bandcamp.com

メンバー
Chris Barnes    Vocals
Jeff Hughell    Bass
Marco Pitruzzella    Drums
Ray Suhy    Guitars (lead)
Jack Owen    Guitars (rhythm)

トラックリスト
1.    Know-Nothing Ingrate
2.    Accomplice to Evil Deeds         
3.    Ascension         
4.    When the Moons Goes Down in Blood         
5.    Hostility Against Mankind         
6.    Compulsive         
7.    Fit of Carnage         
8.    Neanderthal         
9.    Judgement Day         
10.    Bestial Savagery         
11.    Mass Casualty Murdercide         
12.    Spoils of War         
13.    Hair of the Dog (Nazareth cover) 

メンバー続投で制作された2024/05/10リリース予定の14th。本記事作成(2024/03/17)時点では1.Know-Nothing Ingrateのみが公開されています。楽曲自体は単調でつまらない疾走曲ですが、Chrisの声質は若干改善され"Torment"の頃くらいに太さが回復しているように聞こえます。アルバムの出来は果たして……。

 

まとめ

 Six Feet Underは「Obituaryみたいなやつ」「駄作しか出さない」「真のデスメタル」などといった曖昧な毀誉褒貶を多数見かけるバンドですが、具体的かつ冷静な音楽性への言及/作品レビューは日本語圏ではかなり少ないのが実情です(英語圏だとMetallumの各アルバムページで多数の苛烈なレビューが読めます)。本記事をお読みいただき、実際にリンクから音源を聴いていただければ、上記のような表現のどれもが全く的を射ていないことがわかると思います。
 あまり期待できなさそうな新譜が出るまであと2ヶ月ほどありますが、ぜひSFUディスコグラフィーに触れてお気に入りの一作を探してみてください。
 個人的なおすすめは、Obituaryを土台に新たな付加価値が生まれた1st"Haunted"、超ヘヴィでなかなかキャッチーな7th"Commandment"、洗練された攻撃性を堪能できる9th"Undead"、ハイレベルなCannibal Corpseオマージュ作11th"Crypt of The Devil"、そして大穴としてあまりのダメメタルぶりが謎の中毒性を産む13th"Nightmares of The Decomposed"です。

 ありがとうございました。

*1:たとえばこんなブログ記事が荒れたりPsychotic Pulse - Latest Metal Albums & Tour Info: 100 Reasons to Hate Chris Barnes

*2:SIX FEET UNDER Drummer MARCO PITRUZZELLA Recorded All Songs On New Album Torment In One Take - BraveWords

*3:Gravavgravは初期こそGraveからダシを取りきったようなロウすぎるボアードデスを実践していましたが、3作目のデモ音源あたりから人生の退屈さを暗い楽曲で表現するようなコンセプチュアルな方向性に若干変わっています

2023年12月下旬~2024年2月中旬の日記

日記を滅茶苦茶サボっている。書くのが面倒くさいけど書かないことでアウトプットしていないわだかまりがあることも事実なので年数回くらいは書こうと思う。

年末年始

仕事納めの翌日から友人宅で合宿。Bluetoothスピーカーを各々が奪い合いながらメタルだのプログレだのを流し続けた。ジャックダニエルの数十年物と新品を飲み比べるというレクリエーションをやったのだが、普通に新品のほうがおいしくて驚いた。ナッツのような香ばしさがある。保存状態とかもあるんだろうが。
ひょんなことで手に入れた「万象学入門」なる占い系の書籍をせっかくなので勉強して、合宿参加者にやらせた。占い系は、大仰な手続きで何とも言えない結果が出てそれにやいのやいの言うという一連の流れが結局一番面白い。風野灯織さんもイルミネでワイワイとやっているに違いない。
喪中だったので帰省せず(どうせ一周忌で冬のうちに帰省するからというのもあるが)自宅での年越し。年末年始はほとんど帰省しているので、親元を離れ10年以上たつが自宅での年越しはまだ2,3回目だろう。紅白を見ながら以前旅行で買った日本酒などを飲む。良くも悪くも「ジャニーズがいない紅白」だったけど、個人的には「やれちゃうし、違った良さがある」という感想が一番強かったかも。ハイライトはゆずの二人とエキストラを見た瞬間夫婦二人ともが人民寺院を連想していたところと、YOASOBIのアイドル。
能登半島地震で311を思い出した。ビニールハウスに避難する人々が報道映像に映り、祖母が3月下旬にそれをやろうとして熱中症になりかけたのを思い出す。慢性的水分不足と晴天時のビニールハウスのサウナ化は怖い。我が家のビニールハウスはその後トイレになったはずだ(穴を掘って排泄して埋める)。

年始早々に見た嫌な番組の話。令和ロマンの人が現代的モラルに基づきつつも場の雰囲気を壊さない程度にしか対応できなかったのか、モラルとか抜きに「炎上が嫌だ」が本心だったのかはわからないが、どちらにしても一定の絶望がある。

ugogg.hatenablog.jp

有り余る時間を活かしていわゆる「年ベス記事」を書いた。昨年に引き続き「今年聞いてよかった旧譜」も書いている。金のなかった昔から、自分の音楽体験に占める「中古作品」の割合があまりに大きいので、一年の音楽体験を総括するならむしろ旧譜こそ外せないのだ。
ジャンルは偏っているけれど、メタル系の話題作、フォロワー経由で知る門外漢ジャンルの話題沸騰作、能動的ディグによる新発見のバランスがとれている内容だと思う。

 

天津飯

先日まで最も嫌いな中華料理が天津飯だった。私が今まで食べてきた天津飯は、なんか、ただのご飯の上にぶっ潰した味のしない卵焼きみたいなのが乗ってて、その上にかかっている餡はおいしいけれど卵焼きの表面ががっちりしすぎていて卵にもご飯にも餡が絡まず、「調味料、味のしないおかず、ご飯」が同時に口に入るだけの意味が分からないご飯だったのだけれども、先日妻が作ってくれた天津飯が全然別物で、なんか、ご飯の上にとろけるような半熟卵がヴェールのようにかかり、その上にかかっている餡と一緒にご飯を包み込んで最強のマリアージュと言った感じだった。
半熟の天津飯が存在するというのを、アラサーになって初めて知って、誇張抜きに人生が変わった気がした。

 

仕事

1月中旬の馬鹿デカ(当社比)プロジェクトの主管的ポジションだったのが心身ともに大きな負担だったのだが何とか無事終了。残業時間もかなり抑えられたが、そのせいでむしろ自宅で「とてつもない失敗をしてるのではないか」という不安にさいなまれPCを開くも、その「とてつもない失敗」に心当たりがないのでやることがなく痛む胃を押さえながらただ呆然とするだけという時間が増えたのはよくなかった。
これ↑を1月下旬に書いてしばらく経ったが、まためちゃくちゃ忙しくなってきた。この仕事はずっとこんな調子だ。

 

家電

ダイソン掃除機(fluffy v6だったか)のバッテリーが故障。これで3年ぶり2度目くらいか。保証期間も対象外になり、ネットでバッテリー交換の相場を見ると安物なら買えるくらいの金額だったのでこれに買い替えた。

www.toshiba-lifestyle.com

結果として問題なしというか、ダイソンより良い。最大の利点としてはものすごく軽く(全部込みで1kg。ダイソンfluffy v6は確か2kgちょい)て小さいことと、バッテリーを外して充電可能なために置き場の融通がきくこと。吸引力は圧倒的にダイソンなのだが、ダイソンだと「本体がデカくて届かない隅のホコリをパワーで無理やり吸引する」だったのがこれだと「小回りがきく本体&ヘッドで隅々まで届く」に変わるだけなので、結局吸引力の差は感じない。カーペットやラグの類を敷いていないのも大きいけど。あと小さいことだが見た目が地味なので異物感がない。ダイソンの色やばくないですか?ガンダムのMSVとかシードアストレイの攻めたデザインみたい。

 

ライブレポ

県内外のライブに3つ行った。

『CHIKAKARA 新年会 2024』〜anew × cana÷biss 2MAN LIVE〜 @山形ミュージック昭和Session

山形のアイドルanewと新潟のアイドルcana÷bissの2マン。各60minのロングセット。
anewは一回見たことがあるんだけど、その時よりだいぶかっこよかった。初めてみたときはメンバーの生誕祭イベントを兼ねていたらしく、良くも悪くもゆるいノリが印象的だったが、今回はそういった感じではなく、和気あいあいとしつつも〆るところはしっかり〆る感じで正直「こんなにおもしろいグループだったのか」と気付かされた感じ。かなり良かったので後日アルバム『異日常』を買った(普段行くのがバンドやノイズのライブばっかりなので物販にチェキとか写真とかしかなくて当日買えないことにビビった)。アルバムの出来も素晴らしく、骨太な4つ打ちと厭世的に開き直った歌詞が印象的なダンスチューン「ぼくたちに明日はない」、同じく山形出身であるRealことノリアキの「Debut」カバー、ケルティックなパーティソング「完敗乾杯」など聴きどころ多し。メンバー写真もなくサイケデリックなアートワークによる装丁もかっこいい。

ototoy.jp

cana÷bissは結成当初Twitterで「ユニット名がヤバすぎるアイドル」としてプチバズった記憶が薄っすらとあったのだが、今年度末での解散が決定しており、フェアウェルツアー的意味合いもあるということで、せっかくなので見に行ったという側面が強い。a crowd of rebellionやcinema staffのメンバーが楽曲提供しているということもあり、EDMと残響系とメタルコアがくっついたような激しめな曲が多く、間奏でグリッチするような複雑な楽曲を難なく踊りこなすところに感嘆。ごいちーというDJ兼任のメンバーがおり、入場SEは彼女のEDM系のDJプレイであり、オケも彼女が流し、パフォーマンス中は基本的にターンテーブル前でコーラスに徹し、ラスサビなどの一部パートでのみ前に出てくるのがユニークで面白かった。会場で音源を売っていたのでいくつか購入。ライブの印象通りの楽曲でなかなか良い。メタルコアっぽい楽曲は曲の激しさに対してライブのような激しさのない歌唱が浮いてしまっている感もあるが。初期楽曲については再録ベスト(ジャケットがゴールデンボンバーのパロディ)が出ているのでそれを抑えとけばいいっぽい。

ototoy.jp

 

曇りなのに眩しい#1 @仙台バードランド

上記ツーマン終了後車を飛ばして仙台へ。一日に2つのライブイベントに行ったのは初めてな気がする。
Not Niceはベースボーカルがノイズセットとドラムマシンもオペレートする、ワンマンパワーヴァイオレンス&ノイズ。2017年のフランスグラインドChiens来日ぶりに見た。当時はくぐもった爆音ノイズの向こう側で打ち込みドラムとベースノイズと絶叫が鳴っているようなスタイルだったが、今回はかなりバンドサウンドっぽいバランスで十数秒~数十秒のPV楽曲を連発しつつ、楽曲の隙間を戦場ドキュメンタリーからサンプリングしたような不穏なSEでつなぐことでオールドスクールなインダストリアルっぽい雰囲気も。面白かった。
EMPTY DRUGはロックンロールを基調としつつ「あの頃の邦ロック」感やOASISのノイジーな側面、微かなハードコア感を折衷した濁声voが乗るスタイル。ギターvoのルックス含めた徹底したセルフブランディングがバンドの雰囲気をまとめていていい感じ。
蒼子合奏はSSW蒼子氏の楽曲をバンド演奏でやるスタイルということらしい。元々が弾き語り楽曲ということだからなのか、かき鳴らすフォークソング的ギターと発生の癖を全面に押し出す楽曲にバンドアレンジを施した印象。ハイライトは中盤の、疾走感のあるフォークロックと極度にスローダウンして曲名をささやくサイケデリックなパートを行き来する前衛的な楽曲。多分「キスして離れる」という曲。
炎は福島・郡山で活動していたノイズロックバンドRedd Templeのメンバーによるノイズユニット。ガジェットシンセ&vo、モジュラーシンセ、ノイズギターの変則トリオ。ポストパンク/ジャンクロック的なリフと打ち込みドラムにモジュラーシンセとガジェットシンセの素っ頓狂な電子ノイズが絡み、その上をリバーブかけすぎで原型を留めないvoが乗る、どこかユーモラスなスタイル。Redd Templeもかなり説明の難しいノーウェーブ/ノイズロックだったけど、たしかにあの系譜を感じるサウンドだった。
Not Nice氏とはライブ後に少し話して「ノイズの極北としてHarsh Noise Wallが提示され終わったあとに求められる各々のノイズ実践」みたいな話もして、創作意欲も高まった。マジでありがとうございました。

 

KLASH OF THE TITANS(Kreator, In Flames) @EX THEATER ROPPONGI 2/2

KreatorとIn Flamesの2マンとなっては参加必須だろうと有給を取って遠征。音楽にハマった原体験の一つが中期In Flames、311後初めて聴いた音楽の一つがKreatorのHordes of Chaosということで、かなりルーツに近いバンドなのだ。
当日朝に東京入りし、昼にはKreatorのサイン会へ。かなり列の後ろだったがなんとか間に合い、最新作のHate Über Allesのジャケットにサインを貰った。フレデリックTwitterの投稿と変わらぬレベルで日本語ペラペラでびっくりした。その後ディスクユニオンで旧譜漁り。
六本木の会場はかなりおしゃれな感じで、ジャーマンスラッシュやメロデスには不釣り合いに思われたが、ゆったりしたフロアは前方は暴れやすく後ろは聴き入りやすくかなり良さげ。退場時の導線だけはどうかと思ったけど。
KreatorはFlag of Hate~最新作までバランスの良いセットリスト(ゴシック期除く)。初期も現在のスタイルも大好きなので最高。特に驚いたのがTerrible Certainty,Extreme Aggression ,ヴェンターのドラムvo&全員コーラスによるRiot of Violenceと言ったレア曲。素朴でクドくてアツいMCも相まって大盛りあがり。ほぼ全て観客のシンガロングが起こるタイプの楽曲なこともあり、この時点で喉がほぼ枯れてしまった。フロアの真ん中あたりで見ていたのだが、目の前のモッシュピットがあまりに羨ましくなり転換時に前方へ移動。
In Flamesも同じく新旧織り交ぜたセットリスト……なのだがFood For The Gods, Ordinary Story, Aliasなど、新旧ともにレア楽曲てんこ盛りのサプライズ。特にAliasは後期In Flamesのエモ的側面の極地と認識しているので本当に嬉しかった。あまりに感激して絶句してしまい曲名コールに歓声で応えることすら出来なかった(KreatorのTerrible Certaintyもだけど)。観るのは2012年ラウドパーク以来だが、メンバー交代やアンダースの歌唱力向上もあり、当時と比べ物にならないくらい演奏も巧みな印象。当時のアンダースならLike Sandのような曲をライブで歌うのは不可能だったのではないか。それでいてBehind Space,Food For The Godsのような初期メロデスの泥臭いパフォーマンスが入り混じっても何故か馴染んでしまう職人技。MCも以前の冷笑的なノリよりももうちょっとシニカルではあるが愛嬌のある内容で楽しかった。最前の観客のスマホを奪って動画を取りまくる一幕も。
夢のような一日だった。翌日は国立新美術館に浸ろうと思ったのだが……後述の事情で早々に切り上げて別のアートギャラリーに立ち寄ったあとディスクユニオンの別店舗を巡って同じく旧譜漁り。夕方の新幹線で帰った。

 

美術館

ライブの遠征ついでに住所と開館時間以外一切調べずに国立新美術館に立ち寄ったのだが、全然、マジで、死ぬほど、一切ハマらなかった。
行ったタイミングが悪すぎたのもあるのだが、目玉の企画展がなかったことが一番残念だった。この日あったのは、小企画として入り口広場にあったこれだけ。こういうコンセプチュアルなアートが館内に点在しているのかなと思ったらこの一点のみ。

www.nact.jp

ほか開催中の企画はすべて公募展。そして、当時やっていた公募展は「第5回 和紙ちぎり絵創作展」「国際公募展 美は国境を越えて」「第12回 シャドーボックス展」「第40回記念 産経国際書展 新春展」「第46回 國際書画展」「第36回 平泉展 ~楽しい手作り~」。色々覗いたりして思ったのが「愛国心の強い展示が多くてちょっとヤダな」「日本文化って良いよね系、書道系、手法そのものがコンセプト系と、どんな視点でソートしてもコンセプトが被りまくっているな」ということ。個人的な左翼思想の都合でそういうナショナリズムっぽい展示がハマらないのは仕方ないというかこっちが悪いにしても、いくらなんでも近い雰囲気の展示が多すぎる。公募するならもっと色々バラけさせたらどうだ。ちなみに名前だけではなんとも言えない「平泉展」も「龍の御霊、チャクラ、レイキ、日本道徳LOVE」な作品が多くを占める、ニューエイジ&ソフト右翼っぽい感じであった。
あと売店が好かない。最近の公募展・企画展関連の図録もろくに無く、全国各地のアイデア雑貨と"日本っぽい"グッズを寄せ集めた、インバウンド特化の土産屋状態。地方発のグッズも、この美術館ならではの切り口はあまり感じられずただ並べてる感がすごい。少し置かれているオリジナルグッズも「"あの"東京の"あの"施設のグッズです」と主張したいだけにしか見えない空虚さでダサすぎる。後で公式HPを見たらこのショップのコンセプト自体が「世界中から様々な人やモノが集まる東京」の体現らしく、ついつい東京への罵詈雑言が飛び出そうになった。美術館自体もコレクションを持っていないということで、全体として貸展示室的と言うか、単に「ヨソのいいもんを置く場所」としての機能を展示室も売店も全うしているということなんだろう。普通に東京の雑貨店としてはかなりアリだと思うけど、美術館としては完全にナシ。
ただ今回こういう目にあったのは自分のためになったと思っていて、価値観の解体を伴わない作品や、直感と理解の距離が近い作品に自分は全く興味がないということがわかったのは大きな収穫だった。美術関連の学問を全く修めていないのもあるが、どうやら私の鑑賞態度は「パンピーの俺に未知の衝撃を与えてくれ!もしくは根付いた固定観念をぶっ壊してくれ!」という願いを作品にぶつけてレスを待つというスタイルらしいということがわかった。そして、私は「なぜこれを良いと思った/思えなかったのだろう?」と内省する時間のある作品もどうやら好きらしい。なんというか、上手い字とか、でっかいドラゴンの絵とか、普通に良いものを見ても「良い」以外のことが考えられず無為な気分になってしまう。特に愛国的・右翼的なものって直感で言ってしまえば良くて当然なのだ。今あるものを肯定する思想と直結した芸術がもつ機能は、既存の美的感覚を喚起することなのだから。そういうものに日常で触れながら生きることは平穏な暮らしを送るために意義があると思うし、音楽のような自分が日常的に好んで触れる分野の芸術はむしろ能動的に内在化した価値観に基づいて摂取することのほうが多いけど、せっかく美術館に行くのであればそういう思想的平穏をぶっ壊してほしい。こんな俺たちに好都合なモノ、わざわざ見なくて良いです。
その後たまたま見つけたギャラリー「新宿眼科画廊」に行った。人生初ギャラリー。かざりさんという人が在廊していたが何も知らないで来たので特に話すこともなく簡単に挨拶した。後日検索したら結構なインフルエンサーでビビった。タニグチカナコさんという人の日本画&ムチムチ手指と言った風情の絵が面白くて、自分の日本画観とのすり合わせを強制させられている感じが楽しかった。

 

2023 Album of The Year &良かった旧譜各20枚

2023年ベスト&2023年に聴いた旧譜ベストです。

前提

・新譜と旧譜それぞれ20作選出。
・1アーティスト/バンド/ユニットつき新旧合わせて1作。
・当該アーティストの旧作や文脈、ジャンルのトレンド等を把握しないまま選出している作品も多い一方で「当該アーティストの文脈を踏まえるならば傑作」という作品もある。評価基準は正直バラバラ。
・旧譜については有名無名問わず。伝説的名盤とかも今年始めて聴いてよかったものであれば平気で載せる。
・作品ごとの文章量は当該作品の評価の高低に比例しない。
・順位は無し。順番はただ単にアルファベット順→五十音順。
・アルバムだけでなくEP、スプリットを含む。
・リイシュー作品は今年まで入手がほぼ不可能なものであったとしても旧譜。録音時期が古くても初リリースが今年であれば新譜。
Twitterや過去の日記でレビューした作品の場合はその投稿を要約した文章で済ませている場合がある。
・解釈的な意味でなく、知識的な意味での明らかな誤りがもしあれば教えていただけると大変ありがたいです。

2023年新譜

Church of Misery - Born Under A Mad Sign

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東京ドゥーム/スラッジメタル7thフル。これまで通り、シリアルキラーを題材に、ズルズル引きずるようなスラッジチューンにクラシックハードロック、ブルースのエッセンを紛れ込ませるスタイルは不変。メンバーチェンジがあったようで、初代voが復帰。これが長いブランクからの再合流とは思えないようなハマりっぷりで、やや高めに叫び散らしつつもメロディラインがわかりやすいvoスタイルは、スラッジらしい汚らしさや殺伐さの演出はもちろんのこと、ドゥームメタルがあくまでハードロックの極北であることを再確認させられるような「ロックボーカル感」にも満ちている。Gt、DrもサポートでEternal Elysiumのメンバーになっているらしいが、悪影響は全く無く、むしろいい意味で若干フットワークの軽いフレーズが増えた気がしないでもない。

 

Daemonian - The Frost Specter's Wrath

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日本ブラックメタルソロ2nd。
メロブラ黎明期の、メロデスメロブラ、スウェディッシュデスメタルの名バンドが群雄割拠だった90年代バンドたちをリスペクトしたような雰囲気も感じる作品。スピード感を維持しながらも頻繁なテンポチェンジ、高低使い分けるボーカルでメリハリがついている上で、とにかくギターリフが北欧系メロディの洪水で激しさと聴きやすさが両立している。刺々しいギターサウンドも気持ちいい。最終曲の壮絶さは白眉。

 

Festerdecay - Reality Rotten To The Core

everlastingspewrecords.bandcamp.com

福岡ゴアグラインド1st。これまでEPやSplitで披露していた1stまでのCarcassをリスペクトするピュアゴアグラインドを基本的には踏襲しており、ドロドロ&超ヘヴィな音像でブラスト&ゲボゲボな楽曲が最高に楽しい。アングラ感漂う重苦しい音作りもクール。加えて面白いのは、モッシーな4.「Disintegration of Organs」やラフなコーラスが入る9.「Exposing The Skin Tissue」などの一部楽曲にあるニュースクールハードコア感。Carcass Warshipなスタイルでありながら現代的でかっこいいゴアに仕上がっている。

 

gridlink.bandcamp.com

アメリグラインドコア9年ぶり4th。高速ビートの上にジャパコアとも激情系とも歌謡曲風とも取れぬ個性的な泣きメロディを前面に出すTakafumi Matsubaraの高速ギターとJohn Changの絶叫が乗るメロディックグラインドコアは更に磨きがかかり、SFモチーフの色が強かった旧作に比べてメロディが悲しさ、儚さの方向に超強化された。それでいて攻撃力は一切低下していない。ドラマチックかつ不穏な3.「Pitch Black Resolve」はじめ全曲がハイライトの作品で、トータル20分しかないが情報量はそれどこではない。彼らの最高傑作と言って良いし、個人的には2023ベスト。

 

Ignominy - Imminent Collapse

ignominydeath.bandcamp.com

カナダデスメタル1st。GorgutsとかUlcerateとかの系譜にあるいわゆるDissonant Death Metal(不協和音デスメタル)。ただ、奇怪なフレーズに満ちた楽曲でありながらも、比較的シンプルなリズム構成と、怒号のような力強いボーカルにより、ストレートな暴力感との両立ができているのがとても良い。オールドスクールデスメタルと不協和音デスを直接繋いだような面白い作品。不気味で名状しがたいキモいリフと力強いリズムの組み合わせで不快なんだか痛快なんだかわからなくなる3.Reminisence of Hatred、とにかく厭で壮絶な雰囲気の5.Nightmare Bacteriaが最高。

 

ikd-sj - 死んだ雪白中毒者にキスを

ikd-sj.bandcamp.com

日本のオルタナティヴ/アヴァンギャルドメタル7th。フリーダウンロードor会場の手売り。全く知らなかったが20年近く活動しているバンドらしい。音楽性としてはKORNやStainedなどの病み系Nu-Metal、インダストリアル、激情ハードコア、00年代のDir en grey、10年代以降のヒップホップなどをごちゃ混ぜにしたような、掴みどころのないまま病的な迫力をぶつけ続ける異様な音楽。VoはNu-Metal流儀に則ってラップと図太いスクリームを使い分けるタイプだが、ラップがヘラヘラした口調で苛烈な言葉を吐くのは当時のバンドにはなかったスタイルだと思う。アルバム前半はインダストリアルメタル寄り、後半はNu-Metal寄りだが、ジャンルの類型に100%当てはまっている曲は一曲もない。凄まじい傑作かつ怪作だと思う。

 

In Flames - Foregone

inflamesofficial.bandcamp.com

スウェーデンロディックデス/オルタナメタル14th。モダンメロデスの名盤である2006年8th「Come Clarity」期あたりへの回帰を感じさせる楽曲がどれも素晴らしく、Take This Lifeを凌ぎうる代表曲候補がいくつも生まれている。アルバム全体では別に「メロデス原点回帰」はしておらず、前作の2019年13th「I, The Mask」までの主軸だった、分厚いコーラスが印象的なクリーンボイス主体のオルタナメタル楽曲も多い。ただ前作までと違うのは、後者路線の曲も出来がだいぶ良いこと。彼らが「ナヨい壮大さ」とでも言うべき個性を2011年10th「Sound of The Playground Fading」で獲得して以降バンド自身がその強みを忘れてしまっていたっぽい節があったが、今作でその側面も完全復活と言って良い。1997年3rd「Whoracle」あたりの雰囲気をリファインしたような三拍子ケルティックメタル6.「Foregone Pt.2」や、AndersのかつてのサイドプロジェクトPassengerのグルーヴ感覚を思い出させる10.「A Dialogue In B Flat Minor」など、キャリア集大成の感がある傑作。最後の曲だけマジでクソつまんねえんだよな

 

Kabeaushé - “HOLD ON TO DEER LIFE, THERE’S A BLCAK BOY BEHIND YOU!”

kabeaushe.bandcamp.com

ケニアヒップホップ2ndフル。1st「The Coming of Gaze」も今年、今をときめくNyege Nyege Tapes(メタルファン向けに説明するならDumaのセルフタイトルを出したとこ)のサブレーベルHakuna Kulalaからリリースしている。ヒップホップ、それもケニアとなるとジャンル的なことは全くわからないので下手なことは言えないが、本作は個々の要素は「実験的」「ハイブリッド」と言えるような実験的マテリアルの集合体なのに、曲全体だと「ブチ上げ」「祝祭」「熱狂」などのワードがピッタリのハイテンションなヒップホップになっているのがすごく面白い。ボイスループ主体で作られる中毒性抜群のトラックが祭りの掛け声を連想させるのだろうか?1stはまだ門外漢の感覚としては「Tyler, The Creatorみたいな"アーティスティック系"(なんて雑な表現だ)」の雰囲気なのだが、本作はすべての要素がリスナーを「なんかわかんないけど楽しくなってきた!」の方向に持っていくために使われており、へんてこなのだがとにかく楽しく笑顔になり体が動く。ケニアのヒップホップはみんなこうなのか?と思いいくつか聴いてみたがどうやら違うらしい。

 

Kruelty - Untopia

kruelty666.bandcamp.com

東京のメタリックハードコア2ndフル。いわゆる「極悪ハードコア」などと言われるタイプの音楽性(あってますか?)だが、本作はかなりデスメタル、それもオールドスクールな「デス・ドゥーム」などと呼ばれるタイプの音楽性に接近している。それでいて主軸はハードコアらしいストレートな暴力性で、モッシュもヘドバンも止まらない楽曲ばかり。あとボーカルが個人的にはすごく好みで、メタリックハードコアのvoはエクストリームメタルやハードコアパンクと比べて「グロウルと言うには歪がラフすぎるし、吐き捨てボイスと言うには低すぎる」みたいなことが多いが、このvoは地べたを這うようなグロウルと苦悶の絶叫を使い分けながらも、どちらにおいても日本語歌詞が聴き取れるというバランスが素晴らしい。

 

Macronympha - Unreleased Material 92-93

advaitarecords.bandcamp.com

アメリカハーシュノイズ未発表音源発掘リリース。ザラついた質感のローファイノイズが中心にありつつ、サンプリングはじめとした無数のサウンドソースが左右にパンしつつ縦横無尽に鳴り続ける。図太い低音が常時鳴り響きつつ上モノ(?)のスピード感が凄いので、重厚な迫力と勢いが両立している。「90年代発掘カセットの復刻リリース」というとどうもジャンク、ローファイ、マニア向けの印象があるが、むしろノイズ入門にもおすすめな傑作。

 

Orphalis - As The Ashes Settle

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ドイツデスメタル4thフル。いわゆるテクニカルデスメタルとブルータルデスメタルを折衷したような音楽性で、ブルデスらしいブラストビート主体の複雑な構成とオカルティック&メロディアス&テクニカルなフレーズが違和感なく融合し、5分以内のコンパクトな楽曲にまとめられている。テクデス要素とブルデス要素の調整がかなり絶妙で、キャッチーな印象、目まぐるしい展開、ストレス寸前の攻撃性、時折見せるスラミングな激重ビートダウン、OSDMの旨味をしっかり残したストレートな攻撃性等がちょうど全部味わえる欲張りな作品になっている。ディスコ調の幕間7.「Moon Supremacy」だけが本当にダサくてマジで最悪なのだが、たった1分なのでギリギリ許容範囲。

 

Parasite Nurse - Life Is Beautiful

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アメリカソロハーシュノイズ3rdフル。切れ味たっぷりの鋭いノイズが左右に細かくパンしまくるカットアップハーシュ。左右同時に音が出ているタイミング殆どないのではないかというくらいのスピード感。そうして脳が揺さぶられたかと思ったら小さな音のパートや聴きやすいノイズ(ホワイトノイズ系)を挟んで小休止を入れるところが小憎たらしい。最終曲は女性の喘ぎ声かすすり泣きをカットアップしただけのトラックがだんだんノイズに侵食されていく不穏なもので、編集手法は他の曲と概ね一緒だが受ける印象が違っていて面白い。scumなどと比べてももっと断片的で、昔shotahiramaが発表したカットアップノイズ作品「Stiff Kittens」をハーシュ化した感覚。刃物みたいなアルバム。

 

People In The Box - Camera Obscura

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福岡ポストロックバンド8thフル。これまでの作品は曲単位で「ニムロッド」「ストックホルム」は聞いたことがあるくらいで、有志によるシャニマスイメソン合同誌を機になんとなく意識していた。うねるようなグルーヴと美しいメロディが際立った楽曲ばかりで素晴らしい。1.「DPPLGNGR」でドヘヴィにぶちかまして驚かせたかと思えば、その後はポストロックらしくたゆたうような楽曲やプログレ風に引っかかりが設けられた楽曲を自在に使い分け、アルバムトータルでリスナーの感覚をかなり厳密にコントロールするような強かさを感じる。バンドサウンド"以外"の使い方も素晴らしく、特に8.「水晶体に漂う世界」のコーラスはあまりに壮大。「現代社会の不快さ」「ループ構造」「ドッペルゲンガー」などの複数のモチーフがアルバムに通底していることを示唆する、一見すると難解な歌詞とアルバム構成も読解欲を掻き立てられて何度も聴いてしまう。複雑で不快なものを美しく聴かせてくる技量に酔いしれながら、コントロールされる感覚に危機感も覚えてしまうような、怪物感のある作品。

 

Session Victim - The Intangibles

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ドイツハウスデュオEP(何作目か不明)。昨年のEP「Basic Instinct」と同様の路線の、サンプリングサウンド主体で絶妙なところでダブエフェクトをかます、踊れるディープハウス。たった3曲入りではあるが中毒性があるのでリピート再生すればずっと踊っていられる。たゆたうドローンサウンドのオンオフと永遠に続くようなファンキーリズムが気持ち良すぎる2.「Dromedary Twist」がキラーチューン。実は年末にアルバム「low key, low pressure」リリースしているのだが、そちらはあまりにもリラックスした、クラブ音楽ファンが言うところの「フロアバンガーがない」音楽だったので一気に好みから外れて選外。

 

SPOILMAN - Undertow

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東京ジャンク・オルタナロック5thフル。The Jesus Lizardや初期Nirvanaをスカスカ&キモくしたようなデビュー当時の路線から毎年アルバムをリリースしながらどんどん不気味な個性を確立してきたバンドだが、ここでさらに進化。本作は「Comber」と同時リリース(どちらも5thアルバムという扱いらしい)だが、あちらが短めの楽曲でハードコア感を重視する一方、こちらは気持ち悪さに振り切った印象。暴力的なジャンクロックで組曲をやったような2.「Alterego Overdrive」と、トニー・コンラッド&ファウストによる名曲「Outside The Dream Syndicate」を超えた新たなクラウトロックスターピースになりうる5.「Clock Man」が特に凄い。「Comber」も良かったがこの2曲の存在があまりに大きく、こちらのみ選出。なんと23年末にもう6thが出たが、未チェック。

 

SWARRRM - 焦がせ

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神戸グラインドコア7th。基本的にはこれまでの唯一無二な"歌モノグラインドコア"の路線上にあり、怒号と絶叫とアジテーションと歌謡が同居するvo、グラインド/激情/マスコア/ブルースを行き来するような旋律、"Chaos & Grind"のスローガンに則りグラインドコアらしさを維持しつつ意外性のある展開を見せる曲構成は不変で、前作から顕著な歪の少ないギターもあるが、本作はメロディアス&エモーショナルな方向にかなり振り切れており、あまりにメロディアスロックとして完成度が高いので聴き終わるたびに「あれ、本作ブラストビートなくない?」と思ってしまうこと多々(実際はクリーントーンの楽曲含め全曲にある)。これだけメロディアスでキャッチーでエモーショナルな音楽性に振り切っていながら、音&世界観ともに重さを損なっていないのが見事なところで、終わり方も再起の物語をドラマチックに演出する9.「青い花」による感動的な大団円よりも、自意識の歪みに向き合うような緊張感ある歌詞の10.「カケラ」のラスト"サヨナラ"を優先するところにヘヴィロックバンドとしての矜持を見る。ちなみにKandarivas、kamomekamomeとのSplitで発表済みの楽曲もアルバムの音色に合わせてリミックスされているっぽいので、そういった音源所持済みの方は聴き比べてみても良い。

 

Warfuck - Dipityque

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フランスグラインドコアデュオ4thフル。後期NxDxやWormrotを彷彿とさせる不穏なコードのリフを多用しつつも曲構成はショートに研ぎ澄まされ、1曲を除きすべての楽曲が1:35未満。実は結構凝ったこともやっており、ミドルテンポ中心の6.「Incognition」、不協和音デスメタルの影響を感じさせる7.「Incognition」、メロディアスな10.「Lavaune」、三拍子ブラストをかなり複雑に織り交ぜる16.「Vermore」ラップメタルのパロディ19.「Grichélisé」など、直球グラインドコアから少しズレた楽曲もじつは多いのだが、聴き終わった時の感覚は芳醇なアイデアへの感心ではなく嵐のあとのような放心と心地よい疲労。多彩な要素を取り入れるくせにそれを遥かに上回るグラインド魂ですべて飲み込んで爆速の音塊にしてしまう、その歪んだ構造が何よりかっこいい。

 

Walking Corpse - Our Hands, Your Throat

walkingcorpse.bandcamp.com

スウェーデングラインドコア2ndフル。Discordance Axis的なひねくれたリフを使うカオティックなグラインドを基調としつつ、オールドスクールグラインドコアの突進力もある。長めの楽曲ではデスメタル的な重みまで完備。ひりついたギターの音作りが楽曲のキレに貢献してるのもあり、とにかく勢いが半端ない。それでいて4.「The Wheel」みたいな曲ではスラッジコアばりに落としまくる。今年のエクストリーム・メタルのリリースの中で最も痛快なものの一つ。

 

Yalla Miku - Yalla Miku

yallamiku.bandcamp.com

スイスミクスチャーポップ/ポストパンク1stフル。多国籍バンドであり、欧米ルーツのメンバーが楽曲の土台を制作し、アフリカルーツのメンバーが自身に根付く伝統音楽に基づいてそれを再解釈するという形で作られたらしい。その結果、リズムや曲構成はポストパンクやクラウトロックっぽいものなのに、そこに乗るメロディも唱法も全く非西洋音楽のものになっているというかなり面白い作品。

 

Zulu - A New Tomorrow

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アメリカパワーヴァイオレンス1stフル。Black Lives Matter運動に共鳴し"Blackpowerviolence"を掲げるバンドが2枚のEPをリリース後発表した本作は、ドヘヴィなメタリックハードコアを唐突かつ急激に展開させる攻撃性と、ソウルやレゲエ等のルーツミュージックへの敬愛が全開。「数秒でリフとリズムがスイッチする支離滅裂なハードコア」というパワーヴァイオレンスの流儀は踏襲しながら、その"スイッチ"の際に突如としてレゲエやソウルになる(その逆もやる)というのが唯一無二の個性。そしてそれが一昔前の個性派マスコアのような露悪、コミカル、衒学っぽいノリではないのも面白いところで、アルバムをトータルで聴くと、ハードコアとメタルとブラックミュージックを楽しみ、ルーツを愛し誇り、政治と差別と分断に怒るというバンド全体の姿勢を提示するために必然的にそうなったような印象を受ける。こんなにメチャクチャな曲展開なのに……。ヘヴィ&ハードなパートのかっこよさはもちろんのこと、7.「Shine Eternally」12.「We're More Than This」のような非ハードコア楽曲をスムースに演奏してのける技量も大したもの。

 

旧譜

Alcatrazz - Disturbing The Peace

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アメリヘヴィメタル1985年2ndフル。Yngwie Malmsteenが脱退し、あまり興味のなかったSteve Vaiが加入した頃の作品ということで、いわゆる"様式美厨"だった思春期に存在は知っていながらスルーしそのまま忘れていた作品。1stより音質が大幅に改善し、Ritchie Blackmore崇拝の前任者とは正反対の、どちらかというとVan Halenへの対抗心を感じさせるフラッシーなプレイを聴かせるVai&パワフルなGraham BonnetのVoという組み合わせが想像以上に良く、6.「Stripper」などスピードメタルの名曲が生まれている。

 

Cretin - Freakery 

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カリフォルニアグラインドコア2006年1st。一言でいうと「100%のRepulsionトリビュートバンド」で、2パターンしか無いBPM、3パターンしかないドラム、メタル度の低いリフ、勢いだけのギターソロ、やや低めのだみ声voによるシンプルなグラインドコア。とにかく声が似ている。案外Repulsion直系のグラインドコアは少ないので貴重な作品だし質も高くて嬉しい。

 

Devin Townsend(Ocean Machine) - Biomech

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カナダプログレメタル/インダストリアルメタル1997年2ndフル(Strapping Young Ladから数えれば4th?)。SYLのCity(なんと同年リリースである)で完全体得した轟音インダストリアルメタルサウンドに、プログレロックやメロハーに影響されたような壮大でポップなメロディが乗る、現在の彼のスタイルの原点が確立されたっぽい一作。壮大で、キャッチーで、時折エクストリームに、Devinの内省的歌詞が歌われる楽曲群(ほとんど全曲がシームレスに繋がる)は、今の耳で聴くとかなりポストメタルに近く、むしろ「ポストメタルムーブメントの少しあとにポストメタルをHR/HMを揺り戻す動きがあった頃の作品」と言われたほうがしっくりくる。9.「Regulator」以降の楽曲がとにかく素晴らしい。最終曲ラストの、リスナーを突き放す嫌がらせ的サプライズも面白い。

 

Discharming man - POLE & AURORA

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北海道エモ/ハードコア2020年4th。弾き語りとエモバンドの中間を取ったような優しいサウンドを基調としながらときにハードコアになったりポストロックっぽく轟音をぶちまける基本的な路線は2015年3rd「歓喜のうた」までと同じではあるが、本作はもっと切実な空気感があり、蛯名氏の装飾を拒絶するようなむき出しの歌声と硬軟自在のバンドアンサンブルでこれまでより強い怒り・祈りを表現している印象を受けた。入管問題ひいては日本にいまだ根強い外国人差別へ怒りをストレートに叫ぶ1.「future」、11分半ほぼ単一のフレーズが壮大に展開していくポストロック2.「極光」、ダブっぽいエフェクトと破綻寸前の単調なアンサンブルが無力感を掻き立てる5.「Disable music」など、楽曲単位にフォーカスするとかなり息詰まる印象。しかし前述のような楽曲に、反差別を題材にしつつもメッセージも曲調も優しげな4.「February」などをはさみつつ、最後に閉塞感と希望が同居する歌詞と美しく爆発するサビを持つ8.「Discharming man」で終わると、最終的な印象はすごく温かいものになっている。

 

Extreme - Waiting For The Punchline

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アメリカハードロック1994年4thフル。時代に合わせてかつてのグラムメタル路線からグランジを意識したドライでヘヴィな路線に転向した作品だが、HR/HM的派手さを取り去った結果、バンドが持つグルーヴ感覚とファンキーなアレンジセンスが剥き出しになった傑作。ドラム&ベースがブルージーな感覚をうっすら残して現代的(当時)なヘヴィネスを演出し、その上でヌーノのギターがやりたい放題に遊び、ゲイリーのVoがどんな曲も力強く自分の色でハスキーに歌いこなすという独特なバランス感覚があり、現代に再評価されるべき作品ではないか。個性的だがアリーナロックの嫌味がない楽曲を作ろうとした結果RATMに肉薄してしまった1.「There is No God」、グランジ的ヘヴィネスのまま浮遊感を体得できている3.「Tell Me Something I Don't Know」シンプルな楽曲だからこそ全員パワフルに大暴れする8.「No Respect」かなり個性的なヘヴィリフをさらりと弾いてしまう12.「Waiting For The Punchline(何故か隠しトラック)」など佳曲がいっぱい。路線こそ違うし選外にはしたけど今年の新譜もアリーナロックでありながらフラッシーなギターとキャッチーな歌メロが良かった。

 

Harvey Sutherland - Boy

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オーストラリアシンセプレイヤー・ハウス/ファンクプロデューサー2022年1stフル。自身のジャンルを"Neurotic Funk"と称しており、なるほどシンセ主体のファンキーなフレーズが、ハウスやクラウトロックの執拗さで鳴り続ける音楽性。個人的にはファンキーなハウス/ディスコと捉えて聴いているが、1.「Jouissance」7.「Type A (Feat.SOS)」のような100%ハンマービートみたいな曲もあるのがアクセントになり楽しい。

 

H.E.R.O. - Alternate Realities

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デンマークオルタナ/ハードロック2022年3rdフル。Loud Park2023にも出演したバンド。音楽性としてはシンセをリードメロディではなくリフとエフェクトを兼ねた位置づけで活用する、ヘヴィでエモーショナルなミドルテンポのヘヴィロック……ということで、That's The SpiritあたりのBring Me The Horizonが近いのだが、このバンドはBMTHに比べもっと潔癖症っぽく聞こえるところがあり、その理由はメタルコアを経由していない曲調と、何より透明感抜群の美しい歌声が大きい。Djent以降のヘヴィネス感覚とBMTH的アレンジ、完全にnotメタルなハイトーンvoの組み合わせはありそうでなかった路線で、このバンドも2ndまでは歌メロを重視したのか若干ポップな路線だったが、コロナ禍を経た本作で一気にヘヴィ化。演奏力も高く、ラウパ出演時は同期音源フル使用でありながら躍動感溢れる演奏、ギターvoとは思えない美しい歌声の絶唱で、非メタルバンドのハンデをものともしないパフォーマンスを見せた。

 

kurayamisaka - kimi wo omotte iru

kurayamisaka.bandcamp.com

東京オルタナ/インディーロック2022年1stミニ。卒業を期に離れ離れになる女子高生二人を描いたコンセプト作。昨年ベストにあげていた人も多かった印象の作品。甘酸っぱく切ないキラーなメロディをシューゲイザー感のあるノイジーサウンドで鳴らす。ちょっと投げやりっぽく(脱力ではないんだよな)かすかに震える声で歌う女性Voが却って涙を誘う。5.farewellは本当に凄い。最後まで聴くたびにジャケットの二人に幸せになって欲しくなる。

 

 

OiDAKi - Sulphur Pusher

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仙台ストーナーロック/スラッジコア2017年1stフル。基本的にはドゥーム/ストーナーの系譜にある、ヘヴィーでブルージーでブギーな、Church of MiseryやEyehategodあたりに通じる長尺楽曲にファストコアバンドのような喚きVoが乗る音楽性なのだが、3.「メズマライズ」など、楽曲によってはブラストビートによる爆速パートが突如出てくるのが個性的で面白い。バンドはジャンルを"ハードロック・ヴァイオレンス"と自称しており、極度にストーナーロックに比重を置いたパワーヴァイオレンスとして聴くのも面白い。そういった個性を抜きにしても、リフのクールさは大御所バンドに引けを取らないクオリティ。23年11月のノルウェーノイズロックMoE仙台公演にサポートアクトとして出演していたが、ライブパフォーマンスがとにかく荒々しく素晴らしいバンドでもあった。というかライブが良すぎて作品を買った。

 

Power Trip - Nightmare Logic

powertripsl.bandcamp.com

アメリスラッシュメタル2017年2ndフル。当時メディアもファンも大絶賛、モダンスラッシュの金字塔としてもてはやされており、当時カスだったので逆張りしてスルー。ハードコアパンクスラッシュメタルを融合したいわゆるクロスオーバースラッシュのスタイル。3.「Firing Squad」のような先輩クロスオーバー勢っぽいフッ軽爆走チューンはもちろん、正統派スラッシュな1.「Soul Sacrifice」、ハードコアミドルテンポモッシュ&シンガロング発生装置2.「Executioner's Tax」など、後発勢ならではの多彩な楽曲が魅力的。Cro-Magsがモダンメタル化したような印象も。Vo存命中にライブ見たかったな……。

 

Sickrecy - Salvation Through Tyranny

sickrecy.bandcamp.com

スウェーデングラインドコア2022年1stフル。voがBirdfleshやGeneral SurgeryのドラムであるAdde Mitroulis。音楽性はもう文句なしの直球グラインドコア。あまりに教科書的すぎてあまり言うことがないのだが、フックまみれながら爆走しまくる楽曲は、Mumakilの2ndあたりが好きだった人に是非おすすめしたい。voの声質もそっくり。

 

Sordid Clot - Raging of Noble Rots

sordidclot.bandcamp.com

ロシアゴアグラインド2022年4thフル。ミドルテンポ主体でブラストは必ずしも重視しない、いわゆるモッシュゴア。ゴアグラインドにありがちな「オタクorエログロorスカトロ」の露悪趣味が一切なく、冗談臭さがないのが好み。メタリックハードコアっぽいヘヴィなサウンドながら音抜けの良いスネアで音像全体はくぐもらないのも個人的にツボ。リフが意外とメロディアスで、モッシュパートとダンサブルなパートが多いので、低めのBPMにも関わらず体感として遅い印象を与えない。ピッチシフトボイスながら結構多彩な声色を使い分けるVoも楽曲の多彩さに貢献している。

 

SpiritWorld - Deathwestern

spiritworldprophet.bandcamp.com

アメリクロスオーヴァースラッシュ2022年2nd。「ウエスタンゾンビ映画」のコンセプトアルバムらしい。God Hates Us All前後のSlayerっぽいオカルト/グルーヴ/スラッシュなリフと、スラッシュメタルにしてはミドルテンポ多めでHatebreedにも近いメタリックハードコアの曲構成を組み合わせたスタイルがめちゃくちゃ面白い。ハードコアっぽくコール&レスポンスを煽るようなサビが多い。全曲が豪快かつノリやすいのが最高。

 

Teething - Help

teething.bandcamp.com

スペインハードコア/グラインドコア2022年2ndフル。基本はグラインドコアではあるものの、NYハードコア~メタリックハードコアの要素を多分に取り入れたマッチョでグルーヴィーなパートがかなり多く、モッシュ感&メジャー感たっぷりの音楽性になっている。3.「Striking Fire」あたりはHatebreedのグラインドコア風カバーだよ、といえば何人かは騙せそう。

 

WIND - かおり EP

windworld.bandcamp.com

アメリカクリスチャンフォークデュオ2020年EP。2019年のフル「Incense」の収録曲の一部を日本語訳した楽曲+新曲という構成。フルアルバムだとPink Froydあたりのプログレ志向も見せるユニットだが、本作では徹底してカーペンターズにも通じる美しいコーラスにみちたフォークロック楽曲のみを抜粋して披露。とにかくサビメロディの必殺力が高く、明るい2.「 あなたは (詩篇145:1-13 & 詩篇40:1-3)」や壮大で感動的な3.「起きよ,眠る獅子よ(ローマ13;12,イザヤ52:1-2,マラキ4:2) 」などは一度聴いたら忘れられないフックを持つ。日本語の発音もかなり自然で美しく、Queenの「Teo Toriatte」あたりと遜色ない。なおタイトルからもわかるように、歌詞は聖書からの引用による。

 

Y - Global Player

(サブスクも動画もbandcampもありませんでした)
ドイツハードコア/グラインドコア2001年2ndフル。猛スピードの2ビートとブラストビートでかっ飛ばすグラインディンハードコアで、メロディアスなフレーズやパワーヴァイオレンス的なスローパートを時折用いるのも好み。キャッチーなハードコアリフと怒号Voがとにかくかっこよく、勢いと聴きやすさが両立している。本記事作成時点で大手ショップの在庫はとうの昔に全滅しているが、死体カセットにCD在庫が残っている。

noisegrind.official.ec

 

Yacopsae - Tanz, Grosny, Tanz…

yacoepsae.bandcamp.com

ドイツファストコア/パワーヴァイオレンス2007年2ndフル。凄まじい速度とヒステリックさで畳み掛ける疾風怒濤のハードコア。ただでさえうるさすぎて目が回るのに、その上で過剰なまでのストップ&ゴー展開を多用しとことん振り回してくる。冷静に聴くとリフに意外と多様性があったり、ブラストも三拍子多用で個性を出していたり、13.「Frost」のようにメロディアスな曲も作れたりと、優れたミュージシャンシップが見えてくるのもかっこいい。

 

スガシカオ - THE LAST

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東京SSW2016年10th。今回の新作「イノセント」発売に合わせて持っていなかった後期アルバムをすべて買い揃えたところ本作の出来が突出していた。初期の「打ち込みの安っぽくて異様な雰囲気のリズム+ファンクを魔改造したようなギター+ざらついた歌声の毒々しい歌詞」の路線にある程度回帰しつつ、2006年7th「PARADE」以降のゴージャスさ、爽やかさ、優しさ、更に新機軸としてのエレクトロ要素をも取り込んだ作風で、聴きやすくポップでありつつ歌詞世界とちょっとした音のフックでしっかり心にしこりを残していく。ヒットシングル11.「アストライド」のあまりにも重いバックグラウンドを示唆する1.「ふるえる手」、キャリア史上最も美しいソウルバラード4.「海賊と黒い海」、シンセファンクに乗せてひたすら気まずい5.「俺、やっぱ月に帰るわ」、人力エレクトロニカ、ノイズ、ヒップホップをごった煮にしつつギリギリまとめ上げる手腕が見事な10.「真夜中の虹」あたりが良い。新譜も良かったけど本作が上回った。

 

スタァライト九九組 - 劇場版 少女☆歌劇レヴュースタァライト 劇中歌アルバム Vol.1 & 2

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2021年公開アニメ映画の劇中歌&サントラ集。2枚分割リリースだが一作として扱った。映画も好きだし音楽も好きだしということで購入。劇中歌は台詞パートがなくなることで、印象以上にゴージャスなインストパートを単体で楽しめる。歌唱パートも映像と合わせて楽しんでいた部分を音声だけで聴くことで演技を聞き取るのが面白い。石動双葉が一番好きです。

 

直江実樹 - Solos

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横浜の"短波ラジオ奏者"10年ぶりの2021年2ndフル。エフェクトも何もなく短波ラジオを受信しながら操作するだけの一発録り即興ノイズ演奏を2曲収録。楽器の即興演奏とは比べ物にならないレベルでのぶっつけ本番のはずだが、カットアップノイズ作品としてとてもハイレベルな仕上がりで、受信不良ノイズがハーシュ的ノイズ、番組受信時の断片的音声がサンプリング音声のチョップのようになり、むしろポップさすら感じられる。聞き慣れているはずのラジオノイズを迫力たっぷりに仕上げたミックスも見事。

 

まとめ

・選外にしたけど良かった新譜はExtreme, Sevendust, Skindred, Vomitory, Cannibal Corpse, Cryptopsy, Horrendous, Lunar Chamber, Khanate, Incantion, Incapacitants, UCGM, Desolate Sphere, Meshell Ndegeocello, 泥虎, Riffobia, OGRE YOU ASSHOLE, HAERERE/Herside, Rise of The Northster, ノイズコンピレーション2作(Capture The Wind, The Remains of Wasted World)あたり。
・楽曲単位で言えばMetallicaスガシカオも良かったです。
・自分に全然刺さらないものをせっかくだからと聴いてみて、やっぱりはまらなくて、でもしっかり聴いたおかげで自分の好みが少し明確になる1年だったのも個人的には良かったです。他のサイトでベストに上がっている作品から例を挙げるとLiturgy, 今のCattle Decapitation, WEG, Mandy,Indianaあたり。
・2024年も色々聴きたいですね。

番外

V.A. - THERE IS NO TRUTH -HEAVY METAL COMPILATION 2023

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2023年の個人的音楽活動も紹介させてください。友人主宰のメタル系コンピレーションの22.「NEKRAM0NSEE - 20XX」にvoとして参加しました。ノーエフェクトのガテラル、グロウル、スクリーム、普通声など、かなり頑張りました。ほかの皆さんの楽曲もボカロ、正統派、ゴアグラインド、ブラックメタルなど多彩で面白いのでぜひ。

2023年11月第3週~12月第2週の日記+ライブレポ&簡易音楽レビュー

あったこと

仕事が労働時間も心労も増える時期になってまいりました。その隙間を縫って忘年会だのなんだの。

青果店で安く買った熊本みかんがめちゃくちゃ当たり。小粒だがとにかく旨い。おそらく早々に喰らい尽くす。

髭の医療脱毛の初回。口周りが笑っちゃうくらい痛かった。

散歩の行き先が近所になくなったと思い始めていたのだが、歩いて行くには遠い地域に車で行って、駐車場所周辺を隅々まで歩けば良いのだと思いいたり早速実践。散歩で最優先するのが「面白い水路や暗渠があるか」なので、適当な目星をつけて隣町の住宅街へ。公園に車をとめて親水公園を踏破。円筒分水も見れて嬉しい。

円筒分水ってどれくらいメジャーな設備なんだろう?上にあるようなやつのことです。

ハーシュノイズアルバム制作を地道に進めている。12月中に全体像くらいはと思っていたけれど無理そう。制作ノウハウの蓄積が全然ないので、過去作のステムを聴いて「こんな事やってたんだ……」と以前の自分に感心したりしている。

新婚の大学時代の先輩に再会。結婚を祝しながら友人の作ったジビエ肉を食べた。私も数年越しに祝われ感謝の念に堪えない。本はせっかくなのでサッと読む。

ライブレポ

MoE来日ツアーの仙台場所に行った。会場は移転した新バードランド(フロアに椅子があるのがすごく嬉しい)。20人もいたかどうかの寂しい客入り。でも内容は良かったです。仙台近辺の人は一度新しいバードランド行ってみてください。

須貝…仙台のWaikiki Championsというバンド(イベント「AOBA NU NOISE」主宰等で知られる)のメンバーによるインプロ系サックスソロ。
mmisaki…ノイズギターソロ。おそらくフル即興で典型的なハーシュノイズギター。スピード感がある感じではなく、どこかゆったりとした印象。
ZNZ…二人組+獅子舞。一曲めだけドリームポップっぽいことをやっていたが、以降は爽やかなサウンドでマスロックとIDMを行き来する掴みどころのない音楽で面白かった。公式で映像が上がっている。

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OiDAKi…仙台のハードコアバンド。今回唯一メタル系の熱気を持ったバンド。初めてだけどめちゃくちゃ良かった。急に遅くなったり早くなったりするハードコア…つまりはパワーバイオレンス系なんだけど、、速いパートはメタル/ジャパコア系の熱さ、遅いパートはストーナーメタル系のグルーヴを湛えているのがめちゃくちゃ良かった。あまり類を見ない音楽性だと思う。CDを買った。

Martin Escalante…メキシコのサックス奏者ソロ。インプロ/フリージャズ系の人で、大友良英らとの共作経験もある。時々水分補給と深呼吸をするほかはノンストップのノイジーでフリーキーな即興。マウスピースを差し込む曲がったとこを取り外したっぽい改造サックスを使っていた。あまりにハードコアな勢いに最初は笑ったが、汗だくでひたすら無意味なノイズをブロウし続ける姿に最終的には感動してちょっと泣きそうだった。CDとLPを買った。

MoE…ノルウェーのノイズロックトリオ……のハズがドラムレスのデュオとして来日。理由は不明。音楽性としてはドゥームメタルとノイズロックの折衷、例えるならばSWANSとかBIG BLACKとかを現代の不穏な音像のメタルでアップデートしたような音楽というのが音源での印象だたけど、ドラムがなくなるだけでノイズ感が桁違いに上がる。反復されるヘヴィリフも音源だとジャンルのマナーという感じだったけどドラムがなくなるとすごく呪術的。バンド編成でも聞きたい気持ちはあるが、これはこれですごく良かったと思う。CDを買った。

 

音楽

BASTAHAZE - Growing Anxiety

bastahaze1.bandcamp.com

岩手のバンドによる2017年作の21年再発盤。ストーナードゥームメタルを基調に手数の多いスラッシュメタルなフレーズも混ぜ込んだ感じのかなり個性的なメタル。クリーンの歌メロ(コーラスの処理の仕方も含めて)がAlice in Chainsっぽいのが意外なんだけど、これはこれでしっかりハマっている。おすすめ

Antigen - Dust and Ashes

antigen.bandcamp.com

チェコのクラストコア2020年作。ジャパコア風のメロディと、絶叫も歌メロもそつなくこなしつつどちらにもパッションを感じる女性voがかっこいいハードコアパンクモーターヘッドがたまにやっていたちょっとメロディアスな曲が好きな人にもおすすめ。

WIND - Shift

windworld.bandcamp.com

アメリカのクリスチャン夫婦によるプログレ/フォークデュオの2022年作。歌詞は基本的には賛美歌系。どこかカレン・カーペンターっぽさもある女性voの素晴らしい歌声が乗る、テンション高めのフォークロックが音楽性のベースっぽいんだけど、本作はプログレ趣味が強い。フルート多用、美しいメロディ、牧歌的雰囲気とパッセージとしての緊張感の両立ということで、Gnidrologからアヴァンギャルド&ハードを抜いてカーペンターズを足した感じと言えるかも。完全にプログレな前半と良質フォークな後半の2部構成のtr.1が彼らの良さを端的に詰め込んだ佳曲。その後の楽曲もなかなかいい感じ。夫側の出生国である日本を賛美するtr.5には苦笑。インストtr.7には変拍子とか花消えれど彼らなりの70'sプログレ魂を感じる。
フォーク面の音源としては、彼らの賛美歌アルバム「Incense」の楽曲を抜粋し日本語で再録&ボートラ追加したEP「かおり」がオススメ。メロディの出来が特に良い楽曲が選ばれているのに加えて日本語もめちゃくちゃうまい。

windworld.bandcamp.com

Incapacitants - Oxen Man's Uneasiness

losapson.shop-pro.jp

2023年最新作。CDリリースのみ(上記ページから試聴は可能)。インキャパといえば王道ハーシュノイズにしてテーブルコア(卓上ハーシュノイズ)のオリジネイターだけど、今回はハーシュというよりはぼやけた音像のシンセノイズがうねりまくる作風で予想を裏切られた。ローファイな音を多用し、どこか優しげな中音域とここぞというときに鼓膜破壊する高音が印象に残る。ハーシュノイズを聞きたいときに聴く音源ではないけど、耳が飽きない作品なのでよく聴いている。最終曲は曲名の通り新大久保アースダムでのライブ音源。このトラックだけゴリゴリゴリゴリの破壊的ハーシュノイズで、「やっぱこれだよな!」という気分になってしまう自分がちょっと子供っぽくて恥ずかしい。

Parasite Nurse - Life is Beautiful

www.youtube.com

アメリカの女性ソロプロジェクト2023年作。カットアップハーシュ系なんだけど、とにかく切れ味たっぷりの鋭いノイズが左右に細かくパンしまくる。左右同時に音が出ているタイミング殆どないのではないか。そうして脳が揺さぶられたかと思ったら小さな音のパートや聴きやすいノイズ(ホワイトノイズ系)を挟んで小休止を入れるところも小憎たらしい。かなり好み。最終曲は女性の喘ぎ声かすすり泣きをカットアップしただけのトラックがだんだんノイズに侵食されていく不穏なもので、編集手法は他の曲と一緒なんだけど受ける印象が違っていて面白い。

ikd-sj - 死​ん​だ​雪​白​中​毒​者​に​キ​ス​を

ikd-sj.bandcamp.com

日本のメタルバンド2023年作。フリーダウンロードor会場の手売り。全く知らなかったけど20年近く活動しているバンドらしい。音楽性としては……何だ?一応Nu-Metalなんだろうか?KORNやStainedなどの病み系Nu-Metal、インダストリアル、00年代のDir en grey、10年代以降のヒップホップ、激情ハードコアをごちゃ混ぜにしたような、掴みどころはないけれど何やらすごい迫力を感じる音楽。VoはNu-Metal流儀に則ってラップと図太いスクリームを使い分けるタイプだけど、ラップがヘラヘラした口調で苛烈な言葉を吐くのは当時のバンドにはなかったスタイルだと思う。アルバム前半はインダストリアルメタル寄り、後半はNu-Metal寄りだけど、ジャンルの類型に100%当てはまっている曲は一曲もない。何度も聴いて慣れた頃にどう思うかはわからないけれど、凄まじい怪作だと思う。

その他ピックアップ

bandcamp Fridayで結構買ったんだけど気力がないのでTweetで言及した音源のみピックアップして書いた。
特に文章は書かないけど以下の作品も良かった。bandcampか公式MVが有るやつはそのリンクも貼る。レビューこそ書かないけど上記作品より好きな作品も含む。

Y - Global Player(2001,グラインドコア,超かっこいい)
肉奴隷 - Chain of Evil Dead(2008,ノイズグラインド,うるさい)
OiDAKi - Sulphur Pusher(2017,ストーナーメタル&ハードコア,ライブレポ参照)

www.youtube.com

Warfuck - Diptypue(2023,グラインドコア,超速くて超かっこいい)

warfuck.bandcamp.com

Tanya Tagaq - Aminism(2014,イヌイット音楽,声がすごい)

tanyatagaq.bandcamp.com

The Ex - Starters Alternators(1998, ジャンク・オルタナロック,アルビニサウンドギター超良い)

theex.bandcamp.com

Orphalis - As The Ashes Settle(2023,デスメタル,全要素高水準に調和、年ベス候補)

orphalisger.bandcamp.com

LIKE WEEDS - War(e) Resistance(2021,インダストリアルノイズ、シンプル&フェティッシュ&爆音)

likeweedsnoise.bandcamp.com