9mmのギターが大暴れするときに踏んでいたことでおなじみ。ただ一般的にノイズミュージックとか飛び道具的に使われるFUZZ2モードではなく、Boostモードで最後尾に使っている。ミキサーでゲインを上げるよりはるかに鋭くかっこいい音が出るのと、リバーブのデジタル感をごまかすため。上掲HAIZAI氏のnoteでは似たような使い方でZ.Vex Super Hard Onを推薦しており、気になっている。
中盤のメドレーは新旧楽曲入り混じる中にWORLD TRE@SURE(ワートレ)シリーズも交えた意外性のあるセット。ワートレはコロナ禍の影響でライブ披露されなかった楽曲も多いらしく、雪辱を果たした形にもなるのかな。おそらくコロナ禍以降最も外国人参加者の多いSideMライブにおいて「Welcome to Japan!」が披露されるというのもグッとくる。あとWと虎牙道の新曲「vs.BELIEVERS」がかっこよすぎ。
メドレー後はダンサーによる幕間をはさんで後半へ。この幕間も良かった。ボールのパス回しのようなサイレントコメディ風の動きと各ダンサーの個性が出た激しいダンスが融合した楽しい内容。 後半は個人的には見所が多すぎてコメントしづらい。SideM楽曲で最初に衝撃を受けた、人生の辛い瞬間に寄り添う優しいエレクトロ楽曲のFRAME「スリーブレス」が見れて感動したり、彼らの時に傷つき(傷つけ)ながらも深まっていく関係性がパフォーマンスに表れたようなC.FIRST「Face the World」に感動したり、「Cherish BOUQUET」をアレンジした特殊イントロから演出もダンスも華々しい渡辺みのり(演:高塚智人)「カラフル・シンメトリー」にグッときたり、3DMVの熱さをそのまま会場に持ち込んだようなHigh×Joker「JOYFUL HEART MAKER」でブチ上がったり、"THE 虎牙道×ホスト"というカオスなお題を超セクシーに表現した「宵闇のイリュージョン」(牙崎漣を押しのける円城寺道流!)が良すぎて爆笑したり、Legenders「リフレインアトリウム」の三者三様のプロポーズ(実質)を受けて周囲のレジェPと思しき人々がなんか悲鳴を上げて崩れ落ちているのにびっくりしたり、試聴時は何とも思わなかったけど本編最終で聴くと感動的な全体曲「Gather Round!」で温かい気持ちになったり、などなど。
メンバー Chris Barnes Vocals Allen West Guitars Greg Gall Drums Terry Butler Bass
トラックリスト 1. The Enemy Inside 04:17 2. Silent Violence 03:34 3. Lycanthropy 04:41 4. Still Alive 04:05 5. Beneath a Black Sky 02:50 6. Human Target 03:30 7. Remains of You 03:23 8. Suffering in Ecstasy 02:45 9. Tomorrow's Victim 03:35 10. Torn to the Bone 02:47 11. Haunted 03:09
トラックリスト 1. War Is Coming 03:14 2. Nonexistence 03:34 3. A Journey into Darkness 02:17 4. Animal Instinct 04:48 5. Death or Glory (Holocaust cover) 02:50 6. Burning Blood 03:57 7. Manipulation 02:51 8. 4:20 04:20 9. Revenge of the Zombie 02:48 10. As I Die 03:54 11. Night Visions 03:07 12. Caged and Disgraced 03:33
サイレンのSEとゆったりと刻むイントロリフに導かれる1.War is Comingはドロドロした暗い楽曲で前作に近い雰囲気ですが、グルーヴメタル風のノリの良さとラップメタルっぽく歌詞を詰め込んだヴァースを持つ2.Nonexistenceから雰囲気がライトな方向へ変わります。 ファストチューンである4.Animal Instinctや11.Night VisionsもデスメタルやスラッシュメタルというよりMotörheadに近い雰囲気です。 5.Death or Gloryはカバーで、原曲はスコットランドのメタルバンドHolocaust(MetallicaもGarage Inc.で彼らのThe Small Hoursをカバー)。大したアレンジもしていない愚直なカバーですが、原曲の歌メロが平坦なこともあり、かなりいい感じにハマっています。 6.Burning Bloodや8.4:20は、グルーヴメタル風でなかなかキャッチーなリフが印象に残るものの、ダラけたノーマルボイスが出てくるのが個人的にはキツいです。 9.Revenge of The Zombieはかなりクールなイントロ、スラッシーなリズム、オカルティックなメロディを持つ楽曲で、本作の中で最も(というかほぼ唯一)デスメタル的としてかっこいい楽曲。 総評としては、1stを期待して、あるいはデスメタルを期待して聴くと正直言って捨て曲のほうが多い一作ということになるでしょう。しかし、いわゆるDeath'n'Roll(ロックンロールのノリとシンプルさをフィーチャーしたデスメタル)路線であることや、「Chrisが歌うノリが古いグルーヴメタル」だとわかって聴けば楽しめるアルバムです。
メンバー Chris Barnes Vocals Greg Gall Drums Terry Butler Bass Steve Swanson Guitars
トラックリスト 1. Feasting on the Blood of the Insane 04:32 2. Bonesaw 03:07 3. Victim of the Paranoid 03:05 4. Short Cut to Hell 03:11 5. No Warning Shot 03:04 6. War Machine (Kiss cover) 04:25 7. Mass Murder Rampage 03:10 8. Brainwashed 02:43 9. Torture Killer 02:42 10. This Graveyard Earth 03:26 11. Hacked to Pieces 03:36
おどろおどろしいイントロからラップメタルのようなヴァースへ移行する1.Feasting on the Blood of the Insane、表打ちのスネア連打で強引に押し切る単調だがパワフルな2.Bonesaw、怒涛の2バス連打とキャッチーな刻みが超クールな3.Victim of The Paranoidでつかみはバッチリ。 ゆるいグルーヴの4.Short Cut To Hellはかなり退屈なものの「Die Motherfucker, Die! Die!」という信じがたい歌詞のサビが最高な5.No Warning Shotで勢いを取り戻します。 ただし後半がどうにもつまらなくなってしまいます。極度にミニマルなアレンジがかっこいいヘヴィチューン9.Torture Killer、流麗なギターソロが入る10.This Graveyard Earth、ザクザクとしたリフが印象的な11.Hacked To Piecesなど聞き所はあるものの、6~8曲目で一気に興をそがれる感があります。6.War MachineはKissのカバーですが、邪魔だと断言できるくらい酷い出来です。 再発盤にはIron Maiden - WrathchildとThin Lizzy - Jailbreakのカバーが追加されていますが、正直言って6.と同じく邪魔です。彼らはどんな楽曲であっても殆どアレンジせずにカバーするため大抵の楽曲は滑稽になってしまいがち。前作のHolocaustカバーがむしろ特殊なのです。
メンバー 前作に同じ トラックリスト 1. Impulse to Disembowel 03:11 2. The Day the Dead Walked 02:15 3. It Never Dies 02:42 4. The Murderers 02:40 5. Waiting for Decay 02:41 6. One Bullet Left 03:32 7. Knife, Gun, Axe 03:56 8. Snakes 02:44 9. Sick and Twisted 03:52 10. Cadaver Mutilator 02:35 11. Necrosociety 04:09
前作と同じメンバーで制作された4th。作曲分業体制も継続されています。
前作で苦労していたキャッチーなロックっぽさとデスメタルらしさの両立がこなれた感じでできるようになったのが大きな進歩です。90年代のモダンメタルのグルーヴにデスメタルらしいリフを自然に組み合わせたような楽曲が明らかに増え、前作中盤のような気だるさはかなり払拭されました。音質も明らかに向上し、特にギターはローチューニングされたメタルギターとしてはだいぶクリアに聴こえる方でしょう。 ただし上の書き方はかなり好意的な見方で、書き方を変えると、アルバム全体が当時のグルーヴメタルやニューメタル、もっと言えば「90年代にアメリカで流行ったメタルのあの感じ」に接近することを意味します。正直、そういう音楽が苦手な人には厳しいアルバムかもしれません。私は今でもDisturbedとかSevendustとかP.O.D.を聴くタイプなので全然いけます。 そしてもう一つ大きな変化として、Chrisの声質が更に低く、そして水っぽくゴボゴボとした響きを伴う怪物的なものに変化。殆ど歌詞が聞き取れなくなりました。Cannibal Corpseの"Butchered at Birth"や"Tomb of Mutilated"で披露していたものの発展型と言っていいスタイルです。このゴボゴボ声を基本に適宜喚き声を挟むスタイルは、今後の彼の基本となります。
引きずるようなリズムとピッキングハーモニクスが印象的な1.Impulse To Disembowel、Cannibal Corpse風のフレーズも含みながらオカルティックなリフで疾走する2.The Day The Dead Walked、オカルティックなリフを一貫しながら適度にリズムチェンジする5.Waiting For Decayや7.Knife, Gun, Axeは旧来のファンにもしっかり訴求しそうな楽曲。最後の2曲もタイプの違う暗い楽曲が連続して良い終わり方です。 妙にキャッチーなリフがユーモラスな3.It Never Dies、明らかにラップメタルを意識したグルーヴィーな4.The Murderers、タイトさに欠けるProngみたいなリフとシンプルすぎる歌詞が笑いを誘う8.Snakesあたりのキャッチーさ優先の楽曲はかなり微妙なところで、個人的には「気分によっては飛ばす曲」の位置づけです。 本作の目玉の一つに、ラッパーIce-Tが参加する6.One Bullet LeftとエクストリームメタルバンドCrisisの女性ボーカルKaryn Crisisが参加する9.Sick and Twistedという2曲のゲスト参加曲があります。前者はIce-TのラップメタルバンドBody Countに少し合わせたようなアップテンポな曲調で、中盤から入る彼のラップ&スポークンワードの印象度は抜群。ただし本当に彼が目立つのでギャングスタラップが苦手な人は耐えられないかも。後者はJeff Walker(Carcass)風の苦み走ったKarynの濁声がコーラスとして入っていますが、正直Chrisの喚きをオーバーダブすれば良くない?という印象です。
トラックリスト 1. Sick in the Head 04:11 2. Amerika the Brutal 03:01 3. My Hatred 04:22 4. Murdered in the Basement 02:19 5. When Skin Turns Blue 03:27 6. Bringer of Blood 02:54 7. Ugly 02:58 8. Braindead 03:44 9. Blind and Gagged 03:09 10. Claustrophobic 02:50 11. Escape from the Grave 09:36
1.Sick in The Head、8.Braindeadなど、デスメタルらしいパートを多く含む楽曲もあるにはありますが、中心となるのは3.My Hatred、5.When Skin Turns Blue、6.Bringer of Blood、7.Ugly、10.Claustrophobicなどのグルーヴ楽曲。そういうものだと割り切ってしまえばリフも悪くないので結構楽しめます。 2.Amerika The Brutalは完全にパンクロック。適当なボーカル、今までの露悪&グロ趣味作品群のせいで説得力がなさすぎる反戦歌詞、そのくせ異様に印象に残るキャッチーさがムカつきます。 4.Murdered in The Basement、9.Blind and Gaggedはスラッシュメタル系のリフを持つ楽曲。アルバムの流れの中でいいアクセントになっていますが、曲単体としては演奏も歌唱もリズム感がどんくさいのでちょっと微妙です。 11.Escape From The Graveは終了後に無音時間を挟んでシークレットトラックである(12.)White Widowへ。ギターレスのジャムに即興でボーカルを入れたようなゆったりかつ断片的な曲で、本作制作時の雰囲気を端的に示していると言えなくもないかも。
トラックリスト 1. Decomposition of the Human Race 03:42 2. Somewhere in the Darkness 03:53 3. Rest in Pieces 03:08 4. Wormfood 03:45 5. 13 03:07 6. Shadow of the Reaper 03:39 7. Deathklaat 02:36 8. The Poison Hand 02:58 9. This Suicide 02:21 10. The Art of Headhunting 03:34 11. Stump 03:12
気を取り直して内容に話を移すと、前作までと比べてかなりデスメタルへ揺り戻されている印象です。相変わらずブラストビート無しの楽曲ばかりですが、全体として楽曲は速め、リフもグルーヴメタル系のものは減ってデス/スラッシュメタル系のものが増えました。 デスメタルらしい不穏なメロディがフックとして仕込まれた刻みリフはかなりかっこよく、6.Shadow of The Reaperは特にその代表。 その他、1.Decomposition of the Human Race、2.Somewhere In The Darkness、7.Deathklaatなどは、デスメタリックなリフとグルーヴメタル系のリズムを兼ね備えた彼らの個性が出た楽曲。 3.Rest in Pieces、10.The Art of Headhuntingはかなりノリのいいリフが印象的で、前作までに欠けていた勢いの良さがあります。 4.Wormfood、5.13はシンプルな構成に手数の多いフレーズを組み合わせていますが、他の楽曲と比べて単調に聞こえるきらいがありますね。 8.The Poison Hand、9.This Suicideと緩めのDeath'n'Roll曲が続きますが、これくらいだとアルバムのアクセントとしてちょうどいいですね。 11.Stumpはスラッシーなパートでズルズルとスロー化する中盤を挟むシンプルながら攻撃的な一曲で、アルバムを痛快に締めくくります。
トラックリスト 1. Doomsday 03:48 2. Thou Shall Kill 03:07 3. Zombie Executioner 02:52 4. The Edge of the Hatchet 03:55 5. Bled to Death 03:17 6. Resurrection of the Rotten 02:55 7. As the Blade Turns 03:33 8. The Evil Eye 03:26 9. In a Vacant Grave 03:35 10. Ghosts of the Undead 03:58
音楽性はまた前作から若干の変化があり、アルバムの大半を占めるミドルテンポ楽曲のリフからはグルーヴメタル色が更に減退。ノリの良いリズム+不穏なリフという組み合わせが増えたことと上述のヘヴィな音作りとで、アルバム全体が重厚な印象になりました。 そして大きいところとして、これまでアルバムに1曲あるかどうかだったスラッシュメタルらしい2ビートを叩く楽曲が4.The Edge of the Hatchetと6.Resurrection of the Rottenの2曲入っています。3rd以降の作品は0~1曲だったので、「久しぶりにデスメタリックな勢いのあるアルバムだ」と感じさせます。 これらの変化によって、ここ数作のSFUの弱点だった緩さ、気だるさがかなり改善されています。と言っても、2.Zombie Executionerや9.In A Vacant Graveのような旧来のファストチューンもあるにはあり、これらはやはり退屈なのですが。それでもここは、「疾走曲にもバリエーションがでてきた」と肯定的に捉えたいところ。 彼らの真骨頂であるグルーヴデスメタル曲としては、叩きつけるようなスネアとユニゾンするリフがかっこいい1.Doomsday、ノリの良いDeath'n'Rollでありながらちゃんと重苦しい8.The Evil Eye、最高にシンプルで切れの良いグルーヴメタルリフとゴボゴボボーカルの相性抜群な最終曲10.Ghosts Of The undeadあたりがいい感じです。
メンバー 前作に同じ トラックリスト 1. Death by Machete 03:45 2. Involuntary Movement of Dead Flesh 03:29 3. None Will Escape 03:24 4. Eulogy for the Undead 04:17 5. Seed of Filth 04:58 6. Bastard (Mötley Crüe cover) 03:26 7. Into the Crematorium 03:43 8. Shot in the Head 05:01 9. Killed in Your Sleep 04:37 10. Crossroads to Armageddon 02:09 11. Ten Deadly Plagues 05:10 12. Crossing the River Styx (Outro) 01:16 13. Murder Addiction 03:56
音楽的にはやや地味な出来に仕上がっています。縮小再生産的な楽曲がやや目につき、パート単位で聴きどころのある2.Involuntary Movement of Dead Fleshや4.Eulogy For The Undeadのような曲も、過去の様々な曲のツギハギという印象が先立ってしまいます。 ただし、すべてがそうだというわけではありません。彼らには珍しいクリーントーンのイントロとシャッフルビートの中盤に意外性がある1.Death By Machete、執拗に刻み続けるギターとまさかのハードコア風コーラス入りのサビがキャッチーな5.Seed Of Filth、ザクザクと心地よく刻むリフとメロディアスなギターソロが好印象な8.Shot In The Head(イントロSEは長すぎるけど)など、アルバムの要所要所に耳を惹く要素が設けられています。 本作初の試みとして挙げられるのは10.Crossroads to Armageddonや12.Crossing the River Styx(Outro)といったinterlude曲の存在。前者はアンビエント&しょぼい打ち込みのキックとハイハット&Chrisのささやき声からなる楽曲で、意味不明さとチープさが却って不気味さを演出していい感じ。後者はメロディアスなギターインスト。次にも曲があるのに(Outro)となっている理由は不明です。 あと地味に3.None Will Escapeではごく一部(1:15~,3:15~)にブラストビートが使われています。おそらくSFUの曲として初出ではないでしょうか。ただし曲自体がこれまでどおりの「スネア4つ打ちもっさり速め地味デスメタル」なのであまり印象には残りません。 「本編に組み込まれるカバー曲」としては3rdぶりとなるMötley Crüeのカバー6.Bastardは原曲そのままの明るさがシュールで面白いものの、仄暗い雰囲気をまとったアルバムなので場違いな印象が強いですね。5thあたりまでにやればよかったものを……。
メンバー Chris Barnes Vocals Steve Swanson Guitars (lead) Kevin Talley Drums Rob Arnold Guitars (lead, rhythm), Bass
トラックリスト 1. Frozen at the Moment of Death 03:42 2. Formaldehyde 02:47 3. 18 Days 02:40 4. Molest Dead 03:13 5. Blood on My Hands 03:37 6. Missing Victims 03:57 7. Reckless 03:04 8. Near Death Experience 02:56 9. Delayed Combustion Device 03:07 10. The Scar 03:27 11. Vampire Apocalypse 03:54 12. The Depths of Depravity 03:49
オリジナルメンバーであったリズム隊のGreg GallとTerry Butlerがついに脱退。Chris一人だけが残されてしまいました。 新メンバーとして、ドラムにはDying Fetusはじめ多くのバンドを渡り歩いたKevin、リズムギターとしてChimairaのギタリストRobが加入しベースも兼任。作曲はRob一人のようです。 プロデューサーもChrisではなくMark Lewisという人物へ。The Black Dahlia Murder、Trivium、Devildriverといった、当時の最前線バンドの作品を数多く手掛けたエンジニア/プロデューサーです。
1.Frozen at the Moment of Deathから始まる3曲は新しいスタイルのSFUを存分に聞かせてくれます。楽曲の質が高くChrisの声も健在なので、前作までの個性が弱くなったことよりも新しい音楽性を歓迎する気持ちになりますね。 4.Molest Dead以降の中盤はスローな曲多め。と言ってもこれまでのDeath'n'Roll楽曲はほぼ無く、スローなリズムの隙間を手数の多い不穏なリフやフィルインが埋める不気味で情報量の多いスタイルです。各楽曲のリズムチェンジも旧作に比べるとかなり多く、スロー一辺倒の曲や単調な速いだけの曲はなくなりました。 数少ないDeath'n'Roll楽曲が7.Recklessですが、ホラー風のフレーズをユニゾンするベースとギター、かつてのようなコミカルさは見せないChrisのボーカルで旧作とはしっかり差別化出来ています。 最終曲12.The Depths of Depravityはグルーヴィーなリフもブラストビートもクリーンパートも盛り込りつつ最後はヘヴィなスローパートでガッツリ落とす欲張りな1曲で、本作の音楽性を総括しています。
楽曲単位に話を移すと、"Kill"以降のCannibal Corpseっぽいうねるリフにメロディを加えたようなリフでストップ&ゴーを繰り返す曲展開と、かなり出来の良い妖艶なギターソロが耳を惹く1.Gruesome、マーチング風/超スロー/荘厳メロディアスと印象的なパッセージをツギハギしたような2.Open Coffin Orgy、テンポチェンジが印象に残る5,6曲目、Cannibal Corpseのハイレベルな模倣となっているスラッシーな7.Stab、ゴリ押しミドルテンポと美しいギターソロの対比がクールな10.Eternal In Darknessなど面白い楽曲が多くあります。 上述の通り楽曲の出来を底上げしているのがBrandonのギターソロで、8.The Night BleedsのようなかつてのSFUなら捨て曲になっていたような地味な楽曲をも上手く盛り上げています。
メンバー Chris Barnes Vocals Jeff Hughell Guitars, Bass Marco Pitruzzella Drums
トラックリスト 1. Sacrificial Kill 03:55 2. Exploratory Homicide 02:45 3. The Separation of Flesh from Bone 04:52 4. Schizomaniac 03:54 5. Skeleton 03:43 6. Knife Through the Skull 03:40 7. Slaughtered as They Slept 04:55 8. In the Process of Decomposing 03:50 9. Funeral Mask 03:28 10. Obsidian 04:14 11. Bloody Underwear 03:41 12. Roots of Evil 04:02
メンバー Jeff Hughell Bass Ray Suhy Guitars Jack Owen Guitars Chris Barnes Vocals Marco Pitruzzella Drums
トラックリスト 1. Amputator 03:43 2. Zodiac 02:53 3. The Rotting 03:15 4. Death Will Follow 02:51 5. Migraine 04:20 6. The Noose 04:29 7. Blood of the Zombie 03:21 8. Self Imposed Death Sentence 03:02 9. Dead Girls Don't Scream 03:15 10. Drink Blood, Get High 04:25 11. Labyrinth of Insanity 04:19 12. Without Your Life 03:38
Jeffがベース専任となり、ツインギター体制で制作された13th。 加入したギタリストは”Crypt of The Devil”に客演もしていた元Cannabis CorpseのRay Suhyと、なんとChrisとともにCannibal Corpseを結成し2004年まで在籍、脱退後もDeicideで活躍したデスメタル界のカリスマギタリストJack Owen。SFUではおとなしいもののテクニック自慢なJeffとMarcoも引き続き在籍しています。作曲はJack。 この豪華な布陣に「"Undead"レベルとはいかずとも、SFUらしさと高品質デスメタルが融合した作品が聴けるかも……!」という期待、「『なんでこのメンバーでこういう作品になる?』という作品をしばしば出してきたSFUだ。今回もどうせ前作の延長線だよ」という諦めの両方を世間から受けながらリリースされた本作は、なぜかとんでもない問題作&賛否両論(9割否)作でした。
一番の変化はやはり音楽性。殆どの楽曲はストーナーロックに近い気だるいグルーヴに支配され、デスメタルらしいおどろおどろしさも、モダンメタルの鋭さもなく、かといってストーナーのような気持ちの良い酩酊感もなく淡々と進行するばかり。1~3つ程度のリフを機械的に組み合わせただけの、AC/DCの魅力を履き違えたような単調なミドルテンポ曲が延々と続きます。 本記事を通読していただいた皆様にはこの説明だけで察しがついたかもしれませんが、要するになぜか今更"Warpath""Maximum Violence""Bringer of Blood"の捨て曲だけを集めたような音楽性になったのです。初期作も把握しているファンは懐かしのつまらなさに苦笑、中期以降のリスナーは「気だるさのあるバンドだとは思っていたがここまで堕ちたか!」と絶句、Metallumのアルバムレビューでは全オリジナルアルバム中最低評価の、平均満足度18%を記録しました。 Metallumのレビューは賛否両論が極端になりがちですが、それでもJudas PriestのDemolitionが57%、CryptopsyのThe Unspoken Kingが31%、Metallica&Lou Reed のLuluが19%といえば本作の低評価ぶりがわかるでしょうか。音質も「しょぼくなった"Bringer of Blood"」と言った感じの、もっさりしている上に圧もない感じに。 そしてひどいのがChrisのボーカル。前作でかなり厳しいパフォーマンスを見せていた彼ですが、本作でその声質は更に悪化。明らかに無理をして出しているような、低さも太さも足りない声で、迫力の欠片もありません。リズム感も前作同様の怪しさですが、本作が気だるい楽曲ばかりなことでその欠点が若干隠れているのは皮肉なものです。 新境地として、時折ピッグスクイール(デスボイスの中でも、こもった高音と強い倍音を出すことで豚の断末魔のように聞こえるもの)を披露していますが端的に言ってとてもレベルが低く、単に喉を潰すようにして声量を抑えた喚き声にしか聞こえず、みっともなさと滑稽さが際立っています。
メンバー Chris Barnes Vocals Jeff Hughell Bass Marco Pitruzzella Drums Ray Suhy Guitars (lead) Jack Owen Guitars (rhythm)
トラックリスト 1. Know-Nothing Ingrate 2. Accomplice to Evil Deeds 3. Ascension 4. When the Moons Goes Down in Blood 5. Hostility Against Mankind 6. Compulsive 7. Fit of Carnage 8. Neanderthal 9. Judgement Day 10. Bestial Savagery 11. Mass Casualty Murdercide 12. Spoils of War 13. Hair of the Dog (Nazareth cover)
Six Feet Underは「Obituaryみたいなやつ」「駄作しか出さない」「真のデスメタル」などといった曖昧な毀誉褒貶を多数見かけるバンドですが、具体的かつ冷静な音楽性への言及/作品レビューは日本語圏ではかなり少ないのが実情です(英語圏だとMetallumの各アルバムページで多数の苛烈なレビューが読めます)。本記事をお読みいただき、実際にリンクから音源を聴いていただければ、上記のような表現のどれもが全く的を射ていないことがわかると思います。 あまり期待できなさそうな新譜が出るまであと2ヶ月ほどありますが、ぜひSFUのディスコグラフィーに触れてお気に入りの一作を探してみてください。 個人的なおすすめは、Obituaryを土台に新たな付加価値が生まれた1st"Haunted"、超ヘヴィでなかなかキャッチーな7th"Commandment"、洗練された攻撃性を堪能できる9th"Undead"、ハイレベルなCannibal Corpseオマージュ作11th"Crypt of The Devil"、そして大穴としてあまりのダメメタルぶりが謎の中毒性を産む13th"Nightmares of The Decomposed"です。
cana÷bissは結成当初Twitterで「ユニット名がヤバすぎるアイドル」としてプチバズった記憶が薄っすらとあったのだが、今年度末での解散が決定しており、フェアウェルツアー的意味合いもあるということで、せっかくなので見に行ったという側面が強い。a crowd of rebellionやcinema staffのメンバーが楽曲提供しているということもあり、EDMと残響系とメタルコアがくっついたような激しめな曲が多く、間奏でグリッチするような複雑な楽曲を難なく踊りこなすところに感嘆。ごいちーというDJ兼任のメンバーがおり、入場SEは彼女のEDM系のDJプレイであり、オケも彼女が流し、パフォーマンス中は基本的にターンテーブル前でコーラスに徹し、ラスサビなどの一部パートでのみ前に出てくるのがユニークで面白かった。会場で音源を売っていたのでいくつか購入。ライブの印象通りの楽曲でなかなか良い。メタルコアっぽい楽曲は曲の激しさに対してライブのような激しさのない歌唱が浮いてしまっている感もあるが。初期楽曲については再録ベスト(ジャケットがゴールデンボンバーのパロディ)が出ているのでそれを抑えとけばいいっぽい。
KreatorとIn Flamesの2マンとなっては参加必須だろうと有給を取って遠征。音楽にハマった原体験の一つが中期In Flames、311後初めて聴いた音楽の一つがKreatorのHordes of Chaosということで、かなりルーツに近いバンドなのだ。 当日朝に東京入りし、昼にはKreatorのサイン会へ。かなり列の後ろだったがなんとか間に合い、最新作のHate Über Allesのジャケットにサインを貰った。フレデリックがTwitterの投稿と変わらぬレベルで日本語ペラペラでびっくりした。その後ディスクユニオンで旧譜漁り。 六本木の会場はかなりおしゃれな感じで、ジャーマンスラッシュやメロデスには不釣り合いに思われたが、ゆったりしたフロアは前方は暴れやすく後ろは聴き入りやすくかなり良さげ。退場時の導線だけはどうかと思ったけど。 KreatorはFlag of Hate~最新作までバランスの良いセットリスト(ゴシック期除く)。初期も現在のスタイルも大好きなので最高。特に驚いたのがTerrible Certainty,Extreme Aggression ,ヴェンターのドラムvo&全員コーラスによるRiot of Violenceと言ったレア曲。素朴でクドくてアツいMCも相まって大盛りあがり。ほぼ全て観客のシンガロングが起こるタイプの楽曲なこともあり、この時点で喉がほぼ枯れてしまった。フロアの真ん中あたりで見ていたのだが、目の前のモッシュピットがあまりに羨ましくなり転換時に前方へ移動。 In Flamesも同じく新旧織り交ぜたセットリスト……なのだがFood For The Gods, Ordinary Story, Aliasなど、新旧ともにレア楽曲てんこ盛りのサプライズ。特にAliasは後期In Flamesのエモ的側面の極地と認識しているので本当に嬉しかった。あまりに感激して絶句してしまい曲名コールに歓声で応えることすら出来なかった(KreatorのTerrible Certaintyもだけど)。観るのは2012年ラウドパーク以来だが、メンバー交代やアンダースの歌唱力向上もあり、当時と比べ物にならないくらい演奏も巧みな印象。当時のアンダースならLike Sandのような曲をライブで歌うのは不可能だったのではないか。それでいてBehind Space,Food For The Godsのような初期メロデスの泥臭いパフォーマンスが入り混じっても何故か馴染んでしまう職人技。MCも以前の冷笑的なノリよりももうちょっとシニカルではあるが愛嬌のある内容で楽しかった。最前の観客のスマホを奪って動画を取りまくる一幕も。 夢のような一日だった。翌日は国立新美術館に浸ろうと思ったのだが……後述の事情で早々に切り上げて別のアートギャラリーに立ち寄ったあとディスクユニオンの別店舗を巡って同じく旧譜漁り。夕方の新幹線で帰った。
福岡ゴアグラインド1st。これまでEPやSplitで披露していた1stまでのCarcassをリスペクトするピュアゴアグラインドを基本的には踏襲しており、ドロドロ&超ヘヴィな音像でブラスト&ゲボゲボな楽曲が最高に楽しい。アングラ感漂う重苦しい音作りもクール。加えて面白いのは、モッシーな4.「Disintegration of Organs」やラフなコーラスが入る9.「Exposing The Skin Tissue」などの一部楽曲にあるニュースクールハードコア感。Carcass Warshipなスタイルでありながら現代的でかっこいいゴアに仕上がっている。
アメリカグラインドコア9年ぶり4th。高速ビートの上にジャパコアとも激情系とも歌謡曲風とも取れぬ個性的な泣きメロディを前面に出すTakafumi Matsubaraの高速ギターとJohn Changの絶叫が乗るメロディックグラインドコアは更に磨きがかかり、SFモチーフの色が強かった旧作に比べてメロディが悲しさ、儚さの方向に超強化された。それでいて攻撃力は一切低下していない。ドラマチックかつ不穏な3.「Pitch Black Resolve」はじめ全曲がハイライトの作品で、トータル20分しかないが情報量はそれどこではない。彼らの最高傑作と言って良いし、個人的には2023ベスト。
カナダデスメタル1st。GorgutsとかUlcerateとかの系譜にあるいわゆるDissonant Death Metal(不協和音デスメタル)。ただ、奇怪なフレーズに満ちた楽曲でありながらも、比較的シンプルなリズム構成と、怒号のような力強いボーカルにより、ストレートな暴力感との両立ができているのがとても良い。オールドスクールデスメタルと不協和音デスを直接繋いだような面白い作品。不気味で名状しがたいキモいリフと力強いリズムの組み合わせで不快なんだか痛快なんだかわからなくなる3.Reminisence of Hatred、とにかく厭で壮絶な雰囲気の5.Nightmare Bacteriaが最高。
日本のオルタナティヴ/アヴァンギャルドメタル7th。フリーダウンロードor会場の手売り。全く知らなかったが20年近く活動しているバンドらしい。音楽性としてはKORNやStainedなどの病み系Nu-Metal、インダストリアル、激情ハードコア、00年代のDir en grey、10年代以降のヒップホップなどをごちゃ混ぜにしたような、掴みどころのないまま病的な迫力をぶつけ続ける異様な音楽。VoはNu-Metal流儀に則ってラップと図太いスクリームを使い分けるタイプだが、ラップがヘラヘラした口調で苛烈な言葉を吐くのは当時のバンドにはなかったスタイルだと思う。アルバム前半はインダストリアルメタル寄り、後半はNu-Metal寄りだが、ジャンルの類型に100%当てはまっている曲は一曲もない。凄まじい傑作かつ怪作だと思う。
スウェーデンメロディックデス/オルタナメタル14th。モダンメロデスの名盤である2006年8th「Come Clarity」期あたりへの回帰を感じさせる楽曲がどれも素晴らしく、Take This Lifeを凌ぎうる代表曲候補がいくつも生まれている。アルバム全体では別に「メロデス原点回帰」はしておらず、前作の2019年13th「I, The Mask」までの主軸だった、分厚いコーラスが印象的なクリーンボイス主体のオルタナメタル楽曲も多い。ただ前作までと違うのは、後者路線の曲も出来がだいぶ良いこと。彼らが「ナヨい壮大さ」とでも言うべき個性を2011年10th「Sound of The Playground Fading」で獲得して以降バンド自身がその強みを忘れてしまっていたっぽい節があったが、今作でその側面も完全復活と言って良い。1997年3rd「Whoracle」あたりの雰囲気をリファインしたような三拍子ケルティックメタル6.「Foregone Pt.2」や、AndersのかつてのサイドプロジェクトPassengerのグルーヴ感覚を思い出させる10.「A Dialogue In B Flat Minor」など、キャリア集大成の感がある傑作。最後の曲だけマジでクソつまんねえんだよな
Kabeaushé - “HOLD ON TO DEER LIFE, THERE’S A BLCAK BOY BEHIND YOU!”
ケニアヒップホップ2ndフル。1st「The Coming of Gaze」も今年、今をときめくNyege Nyege Tapes(メタルファン向けに説明するならDumaのセルフタイトルを出したとこ)のサブレーベルHakuna Kulalaからリリースしている。ヒップホップ、それもケニアとなるとジャンル的なことは全くわからないので下手なことは言えないが、本作は個々の要素は「実験的」「ハイブリッド」と言えるような実験的マテリアルの集合体なのに、曲全体だと「ブチ上げ」「祝祭」「熱狂」などのワードがピッタリのハイテンションなヒップホップになっているのがすごく面白い。ボイスループ主体で作られる中毒性抜群のトラックが祭りの掛け声を連想させるのだろうか?1stはまだ門外漢の感覚としては「Tyler, The Creatorみたいな"アーティスティック系"(なんて雑な表現だ)」の雰囲気なのだが、本作はすべての要素がリスナーを「なんかわかんないけど楽しくなってきた!」の方向に持っていくために使われており、へんてこなのだがとにかく楽しく笑顔になり体が動く。ケニアのヒップホップはみんなこうなのか?と思いいくつか聴いてみたがどうやら違うらしい。
東京ジャンク・オルタナロック5thフル。The Jesus Lizardや初期Nirvanaをスカスカ&キモくしたようなデビュー当時の路線から毎年アルバムをリリースしながらどんどん不気味な個性を確立してきたバンドだが、ここでさらに進化。本作は「Comber」と同時リリース(どちらも5thアルバムという扱いらしい)だが、あちらが短めの楽曲でハードコア感を重視する一方、こちらは気持ち悪さに振り切った印象。暴力的なジャンクロックで組曲をやったような2.「Alterego Overdrive」と、トニー・コンラッド&ファウストによる名曲「Outside The Dream Syndicate」を超えた新たなクラウトロックマスターピースになりうる5.「Clock Man」が特に凄い。「Comber」も良かったがこの2曲の存在があまりに大きく、こちらのみ選出。なんと23年末にもう6thが出たが、未チェック。
アメリカパワーヴァイオレンス1stフル。Black Lives Matter運動に共鳴し"Blackpowerviolence"を掲げるバンドが2枚のEPをリリース後発表した本作は、ドヘヴィなメタリックハードコアを唐突かつ急激に展開させる攻撃性と、ソウルやレゲエ等のルーツミュージックへの敬愛が全開。「数秒でリフとリズムがスイッチする支離滅裂なハードコア」というパワーヴァイオレンスの流儀は踏襲しながら、その"スイッチ"の際に突如としてレゲエやソウルになる(その逆もやる)というのが唯一無二の個性。そしてそれが一昔前の個性派マスコアのような露悪、コミカル、衒学っぽいノリではないのも面白いところで、アルバムをトータルで聴くと、ハードコアとメタルとブラックミュージックを楽しみ、ルーツを愛し誇り、政治と差別と分断に怒るというバンド全体の姿勢を提示するために必然的にそうなったような印象を受ける。こんなにメチャクチャな曲展開なのに……。ヘヴィ&ハードなパートのかっこよさはもちろんのこと、7.「Shine Eternally」12.「We're More Than This」のような非ハードコア楽曲をスムースに演奏してのける技量も大したもの。
カナダプログレメタル/インダストリアルメタル1997年2ndフル(Strapping Young Ladから数えれば4th?)。SYLのCity(なんと同年リリースである)で完全体得した轟音インダストリアルメタルサウンドに、プログレロックやメロハーに影響されたような壮大でポップなメロディが乗る、現在の彼のスタイルの原点が確立されたっぽい一作。壮大で、キャッチーで、時折エクストリームに、Devinの内省的歌詞が歌われる楽曲群(ほとんど全曲がシームレスに繋がる)は、今の耳で聴くとかなりポストメタルに近く、むしろ「ポストメタルムーブメントの少しあとにポストメタルをHR/HMを揺り戻す動きがあった頃の作品」と言われたほうがしっくりくる。9.「Regulator」以降の楽曲がとにかく素晴らしい。最終曲ラストの、リスナーを突き放す嫌がらせ的サプライズも面白い。
アメリカハードロック1994年4thフル。時代に合わせてかつてのグラムメタル路線からグランジを意識したドライでヘヴィな路線に転向した作品だが、HR/HM的派手さを取り去った結果、バンドが持つグルーヴ感覚とファンキーなアレンジセンスが剥き出しになった傑作。ドラム&ベースがブルージーな感覚をうっすら残して現代的(当時)なヘヴィネスを演出し、その上でヌーノのギターがやりたい放題に遊び、ゲイリーのVoがどんな曲も力強く自分の色でハスキーに歌いこなすという独特なバランス感覚があり、現代に再評価されるべき作品ではないか。個性的だがアリーナロックの嫌味がない楽曲を作ろうとした結果RATMに肉薄してしまった1.「There is No God」、グランジ的ヘヴィネスのまま浮遊感を体得できている3.「Tell Me Something I Don't Know」シンプルな楽曲だからこそ全員パワフルに大暴れする8.「No Respect」かなり個性的なヘヴィリフをさらりと弾いてしまう12.「Waiting For The Punchline(何故か隠しトラック)」など佳曲がいっぱい。路線こそ違うし選外にはしたけど今年の新譜もアリーナロックでありながらフラッシーなギターとキャッチーな歌メロが良かった。
オーストラリアシンセプレイヤー・ハウス/ファンクプロデューサー2022年1stフル。自身のジャンルを"Neurotic Funk"と称しており、なるほどシンセ主体のファンキーなフレーズが、ハウスやクラウトロックの執拗さで鳴り続ける音楽性。個人的にはファンキーなハウス/ディスコと捉えて聴いているが、1.「Jouissance」7.「Type A (Feat.SOS)」のような100%ハンマービートみたいな曲もあるのがアクセントになり楽しい。
デンマークオルタナ/ハードロック2022年3rdフル。Loud Park2023にも出演したバンド。音楽性としてはシンセをリードメロディではなくリフとエフェクトを兼ねた位置づけで活用する、ヘヴィでエモーショナルなミドルテンポのヘヴィロック……ということで、That's The SpiritあたりのBring Me The Horizonが近いのだが、このバンドはBMTHに比べもっと潔癖症っぽく聞こえるところがあり、その理由はメタルコアを経由していない曲調と、何より透明感抜群の美しい歌声が大きい。Djent以降のヘヴィネス感覚とBMTH的アレンジ、完全にnotメタルなハイトーンvoの組み合わせはありそうでなかった路線で、このバンドも2ndまでは歌メロを重視したのか若干ポップな路線だったが、コロナ禍を経た本作で一気にヘヴィ化。演奏力も高く、ラウパ出演時は同期音源フル使用でありながら躍動感溢れる演奏、ギターvoとは思えない美しい歌声の絶唱で、非メタルバンドのハンデをものともしないパフォーマンスを見せた。
仙台ストーナーロック/スラッジコア2017年1stフル。基本的にはドゥーム/ストーナーの系譜にある、ヘヴィーでブルージーでブギーな、Church of MiseryやEyehategodあたりに通じる長尺楽曲にファストコアバンドのような喚きVoが乗る音楽性なのだが、3.「メズマライズ」など、楽曲によってはブラストビートによる爆速パートが突如出てくるのが個性的で面白い。バンドはジャンルを"ハードロック・ヴァイオレンス"と自称しており、極度にストーナーロックに比重を置いたパワーヴァイオレンスとして聴くのも面白い。そういった個性を抜きにしても、リフのクールさは大御所バンドに引けを取らないクオリティ。23年11月のノルウェーノイズロックMoE仙台公演にサポートアクトとして出演していたが、ライブパフォーマンスがとにかく荒々しく素晴らしいバンドでもあった。というかライブが良すぎて作品を買った。
アメリカクロスオーヴァースラッシュ2022年2nd。「ウエスタンゾンビ映画」のコンセプトアルバムらしい。God Hates Us All前後のSlayerっぽいオカルト/グルーヴ/スラッシュなリフと、スラッシュメタルにしてはミドルテンポ多めでHatebreedにも近いメタリックハードコアの曲構成を組み合わせたスタイルがめちゃくちゃ面白い。ハードコアっぽくコール&レスポンスを煽るようなサビが多い。全曲が豪快かつノリやすいのが最高。
Martin Escalante…メキシコのサックス奏者ソロ。インプロ/フリージャズ系の人で、大友良英らとの共作経験もある。時々水分補給と深呼吸をするほかはノンストップのノイジーでフリーキーな即興。マウスピースを差し込む曲がったとこを取り外したっぽい改造サックスを使っていた。あまりにハードコアな勢いに最初は笑ったが、汗だくでひたすら無意味なノイズをブロウし続ける姿に最終的には感動してちょっと泣きそうだった。CDとLPを買った。
岩手のバンドによる2017年作の21年再発盤。ストーナー・ドゥームメタルを基調に手数の多いスラッシュメタルなフレーズも混ぜ込んだ感じのかなり個性的なメタル。クリーンの歌メロ(コーラスの処理の仕方も含めて)がAlice in Chainsっぽいのが意外なんだけど、これはこれでしっかりハマっている。おすすめ
日本のメタルバンド2023年作。フリーダウンロードor会場の手売り。全く知らなかったけど20年近く活動しているバンドらしい。音楽性としては……何だ?一応Nu-Metalなんだろうか?KORNやStainedなどの病み系Nu-Metal、インダストリアル、00年代のDir en grey、10年代以降のヒップホップ、激情ハードコアをごちゃ混ぜにしたような、掴みどころはないけれど何やらすごい迫力を感じる音楽。VoはNu-Metal流儀に則ってラップと図太いスクリームを使い分けるタイプだけど、ラップがヘラヘラした口調で苛烈な言葉を吐くのは当時のバンドにはなかったスタイルだと思う。アルバム前半はインダストリアルメタル寄り、後半はNu-Metal寄りだけど、ジャンルの類型に100%当てはまっている曲は一曲もない。何度も聴いて慣れた頃にどう思うかはわからないけれど、凄まじい怪作だと思う。