ウゴガベ

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2023年11月第1週~第2週の日記+映画ゴジマイ感想

 

旅行

福島の飯坂温泉に旅行に行ってきた。

川沿いに寂れた温泉旅館が並ぶ一方、駅前まで行くと足湯、公衆浴場、商店で賑わう町並みがあるというなんだかチグハグな印象。散歩と宿泊で全く印象が変わって面白かった。

町並みに温泉むすめ「飯坂真尋」がかなり馴染んでいる。地元の人も「真尋ちゃん」と呼んでいた。一部キャラの不適切な設定が炎上していた時にオタクサイドで無理筋擁護を含むかなり強い反発が起こっていた記憶があるけど、このまちぐるみで温かく受け入れられている風景がまるごと否定されたように錯覚して頭に血が上ってしまった連中もいたのかもしれない。

車で20分程度のところにある人工湖・茂庭っ湖(摺上川ダム)も見に行った。

デカくて怖かった。「物理的に高すぎ&デカすぎ&死の恐怖煽られすぎ」「この広さの村を権力で沈めたこと」の両方で身がすくんだ。ダムカードはもらい忘れた。

道中にあったバラバラの風車。風力発電施設の技術者を育成する施設の敷地だったらしい。

道中にあったちんちん道祖神大量奉り小屋。

福島県立美術館にも行った。企画展「少女たち(京都の『星野画廊』からの展示)」は"少女画"をテーマにかなり多様な絵画が展示されており、想像の余白を残しつつも丁寧な注釈で楽しめた。星野画廊のオーナーが「無名画家が画壇の評価を受けない理由の一つに『足跡を追えないから』というのがあるが、だとしても各作品を純粋に評価すべき」「『美人画』という言葉があるが内面的な美をないがしろにした考え方だ」みたいな思考があるらしく、展示される作品にもそれが反映されている感じがした。常設展も素人がイメージする"美術館の展示品"だけでなく地元作家の展示、前衛アート、地元の高校生による展示絵画の二次創作詩(!)など飽きることなく閉館時間ギリギリまで楽しめた。
なんとなく、現代アートインスタレーション系以外の美術鑑賞に「歴史、文学、宗教等の別ジャンル教養が最低限のものとして要求され、『感じたまま、考えるがままに楽しめばよい』というのは素人の言い訳にすぎないのではないか」と思ってしまう節があったのだが、今秋に広島市現代美術館に行ったことをきっかけに若干払拭された。上記のようなこともある程度事実としてあるのかもしれないけど、だとしても私にとってそれは無視して良い真実になった。

映画『ゴジラ-1.0』感想(ネタバレ含む)

色々粗はある作品だけどかなり面白かった。

まず、ゴジラの造形が良かった。パッチリとした目は一見どこか可愛げを感じるんだけど、その視線を感じられる目つきが、人間一人一人を殺人対象としてちゃんと視認しているように見えるのが見事だった。「目線を揃えてくるゴジラ」がこんなに怖かったとは。初代ゴジラの日本国土を見下ろす目、昭和ゴジラのかわいいキャラクターの目、平成ゴジラのかっこいいキャラクターの目、GMKの怨霊の目、シンゴジの神性の目のどれでもない新規性がある。
放射熱線時の背びれのギミックも、ロボットおもちゃすぎる気がしないでもないけどあまりにもカッコ良すぎる。熱戦も短時間の発射と着弾後の核爆発という描写が鮮烈。

シナリオも愚直なまでのお涙頂戴なんだけど、元特攻隊の主人公・敷島が、愛する人と出会い、別れ、ゴジラとの決戦を通じて「終わっていない戦争」であるPTSDを克服し、また再会する流れはなんだかんだで綺麗でグッと来る。演技も演出も説明過多で過剰なきらいがあるが、安藤サクラ演じる隣の未亡人の「なんだかんだで良い人」感溢れる絶妙な雰囲気、神木隆之介演じる敷島の精神崩壊過程は良かった。

戦闘シーンはどれも最高の素晴らしさ。大戸島で兵士を一人ひとり惨殺する小ゴジラ、ボロ船逃避行の緊張感、東京上陸の絶望感、ラストの海戦のワクワク感、どれも本当にアツかった。最後の海戦は特に良かった。終戦から間もない民間人による作戦という都合上、通常兵器もろくに使えず、払い下げの船舶群とガスボンベと風船による工夫と気合と運頼みの最終決戦!最終戦に限って言ってしまえば、こんなに面白い海戦が描かれたゴジラはこれまでになかったんじゃないか。初代のオキシジェンデストロイヤーやシンゴジの作戦よりも圧倒的に「マジでできそう」な作戦の期待感に、VSキングギドラのガバガバタイムパラドックスに「なんて緻密で科学的な映画なんだ……!」と感動した幼少期を思い出した。具体的な科学的考証はさておき、こういう鑑賞者を騙してくれる建付けは大好き。

そしてまさかの震電!!!登場時点でちょっと泣いちゃった。震電によるゴジラ誘導のときに、なんてことのない山間部の田園風景の中でゴジラを牽制するシーンも凄く良かった。最終決戦を前に日本の原風景を目に焼き付ける敷島と、そんなのどかな場所でも数少ない家屋を蹂躙するゴジラが、どこか静謐さをたたえて対峙するさまがかなり印象に残っている。

過去作オマージュももりだくさんだけどあくまで上品で、気づかなくても問題ない程度のところなのが多い。大戸島とか中継マスコミとか瓦礫の放射線量を測定する人とか水槽実験とかの膨大な初代ネタの他、GMKみたいなキノコ雲やラストとか、典子の電車のシーンは初代の電車+ハリウッドゴジラ(エメゴジだったはず……)のバスのシーン両方のオマージュかなー、とか。

シナリオ上難しいところだなーと思ったのは、特攻の英雄視に関する点。敷島は、戦中に特攻できなかった負い目と愛する人を奪われた結果、覚悟"で"キマって(byオモコロ永田)しまい、ゴジラとの相打ち前提で最終決戦に参加するが、博士は先の大戦における日本軍を否定し「誰も死なない作戦を誇りにしたい」と明言、橘も生存を望む流れは明確に特攻の美徳を否定している。しかし、最終決戦がそもそも決死の覚悟を前提にしているのがどうも具合が悪い。個人的には、本作におけるゴジラ討伐は、生きて欲しい人に生き続けてもらえる戦いかどうか、劇中の言葉で言えば、能動的に貧乏くじを引くぞと覚悟した人しか貧乏くじを引かずに済む戦いにしたという点で特攻とは本質を異にしていると思うけれど、人によって感じ方は分かれそう。
あと最後の敬礼、何?パンフレットによるとゴジラ討伐=神殺しであり、人類が次へ進むための犠牲になったゴジラの神々しさや申し訳無さなどで思わず……みたいなことらしいんだけど、イマイチ納得いかない。絵面としてはなんかいい感じなんだけど。

個人的に感動的だったことは、ウェットな人間ドラマを織り込んだゴジラ、つまりシンゴジ以前のノリに戻ったにも関わらず、当時の作品群とは比べ物にならないくらい脚本がちゃんとしていたこと。だって……言っちゃアレですけど、昔のゴジラのストーリーって大半が「どうでもいい」「なんじゃこりゃ」「コイツは頭がおかしい」のどれかじゃありませんでした?ジェットジャガーとか、ビオランテの博士とか、松岡昌宏の何故か気合の入りまくったアクションとか(アレはアレで大好きだけど)……。こんなに怪獣パートとしっかりリンクしつつ、パブリックイメージ的「そこそこ泣ける邦画」をやってくれるなんて思ってもみなかった。

良し悪しあるけど大衆娯楽的楽しさで胸が一杯になる痛快映画でおすすめです。