ウゴガベ

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2025ベストアルバム&良かった旧譜

2025年新譜ベスト&選外にした新譜から良かった曲ピックアップ&2025年に聴いた旧譜ベストです。

 

前提

・新譜から44作*1、新譜ベストに選ばれていない作品から10曲、2025年に聞いた旧譜から20作。
・1アーティスト/バンド/ユニットにつき、新旧合わせて1作。メンバー兼任や別名義はOK。
・個人的な振り返りとしての意味合いが強いので、旧譜については有名無名問わず。客観的には今更ピックアップする意味がないような伝説的名盤とかも、良かったものであれば平気で載せる。ただし、「案の定良かった」という作品よりは、気づき、価値観の変化等があった作品を優先している。
・作品ごとの文章量は当該作品の評価の高低に比例しない。
・順位は無し。順番はただ単に数字順→アルファベット順→五十音順。
・アルバムだけでなくEP、スプリットを含む。
・購入した音楽のみ(中古含む)。各作品の項目に埋め込んだリンクも可能な限り購入プラットフォーム(bandcamp、OTOTOY等)のもの。

 

2025年新譜

Abiuro - 落

doomfujiyama.bandcamp.com

東京のドゥーム/スラッジメタルバンド1stフル。自主レーベルのDOOM FUJIYAMAリリース。
徹頭徹尾ネガティヴ&ヘヴィでありながら、スラッジの枠内で楽曲の幅を広くとっており、My War期Black Flagがそのままクソうるさくなったようなもの、Iron Monkeyあたりの直系、デスドゥーム/フューネラルドゥームと呼応するようなメタル的荘厳さを湛えたものなど多彩。
そうでありながらアルバム全体は極度に鬱屈した空気感を貫いており、幅の広さは散漫さでは無く深度という印象に。そのアティチュードは人選にも現れており、ノイズも導入する6."Endless Depression"はパンクコミュニティを中心に多数が客演。8."落"のポエトリーを担当するイシヅカユウは長谷川白紙"草木"MV(後半で手話パフォーマンスしている長髪の人)出演などで知られるモデル/俳優。
voの振れ幅も凄まじく、汚らしさを維持しながら超低音~金切り声まで自由自在。
圧殺的かつ多彩な一作。

Ancient Death - Ego Dissolution

ancient-death.bandcamp.com

アメリカのプログ・デスメタル1stフル。Profound Loreリリース。
多くの曲にPink Floyd由来っぽい浮遊感があるのが特徴。女性クリーンVoも使うところは今風。そういったプログ寄りパートは口ずさめるようなキャッチーなギターフレーズが多い。また、あくまでフロリダっぽい複雑&高速なデスメタルを主軸においていることでメリハリがあるのが良い。といいつつほぼメロデスな7."Unspoken Oath"なんかもあったりして、一歩間違えれば「散漫」「スノッブ」の誹りは免れないスタイルなのだが、そこを歌詞が聞き取れる野蛮なグロウルVoと、スタイリッシュでありながら常に鬱屈とした空気感がアルバムを引き締めている。
ちなみにアートワークに反してObituaryっぽさはゼロ。

Brutal Decay - Slaughter in Hell

brutaldecay.bandcamp.com

東京のスラッシュメタルバンド1stフル。Rock Stakkリリース。
特筆すべきはそのスピード感。初期のKreatorを想起させる、ヘッドバンギングの追い付かない高速チューンが並ぶ。それでいて当時の、すべてを捨ててスピードに特化したような未整理な勢いを再現しているだけではなく、リフ/ソロともにギターメロディが充実していたり曲調にも幅があったりというところは、リバイバル勢ならではのしたたかさも感じる。
Voもかなり良い。Dani Filth(Cradle of Filth)と宇田川/Sonicriot(Terror Squad)がフュージョンしたような、ハードコア的荒っぽさがありつつもメタル的に歪み切った高めのスクリームボイスは音楽性に完全に合っている。

Burden of Despair - 原罪神授-Confutatis-

burdenofdespair.bandcamp.com

大阪のデスドゥーム/メタリックハードコアバンド1stフル。セルフリリース。
Dyingrace人脈で結成された(2004-06年活動、2022年に復活&EPリリース)バンドということもあってか、デスメタルっぽさもあるビートダウン。それと同時に、デスドゥーム寄りの、モッシュを誘発せずただただ引きずるように進行するパートも多く、うまく使い分けている。リフも同様に、ハードコア的に荒々しくシンプルに刻むものもあればデスドゥーム/フューネラルドゥームっぽいロングトーンもあり、デスメタルともハードコアとも言えない絶妙なスタイル。アルバム全体はとにかく暗くて遅くて重いのに、その内訳はデスメタル系/ハードコア系をかなり器用に使い分けているので、飽きが来ずに楽しめる巧みな編曲が素晴らしい。腕を振り回して暴れることも俯いて首を振り続けることもできる間口の広い遅重音楽。発音を残しつつ深く低く歪んだ怒声voも、VaderやBehemothを思わせる凄まじい迫力。

Cabinet - Anhedonia

bloodymountainrecords.bandcamp.com

アメリカのデスメタルソロプロジェクトのコンピレーションアルバム。自身が主宰するbloodymountainリリース。
前作フルHydrolysated Ordination(2024)でも暗黒デス+デスドゥーム+ゴアノイズ+ウォーブラック+ダークアンビエントとでも形容したくなる異様な濃厚ローファイデスメタルをやっていたが、個人的にはすごさは認めるものの聴き疲れが勝る作品でもあった。未発表曲&デモ音源で構成された本作も路線は同じだが、コンピであるため楽曲の雰囲気が良くも悪くもややバラけていることで、個人的にはむしろ聴きやすくなっている。靄のかかったような不穏な音質でならされる多彩な楽曲群に「廃墟の精神病院への侵入」というコンセプトを与えているのも完璧。ドアを開けるごとにどんな部屋かを探索して当時の痕跡に怯える廃墟探索ように、トラックが変わるごとに耳を澄ませてテクスチャーに聴き入るリスニングがおすすめ。

Catharsis - Hope Against Hope

crimethinc.bandcamp.com

アメリカのニュースクールハードコア/メタルコアバンド、26年ぶり3rdフル。CrimethInc.リリース。
クラスト/ネオクラストと、Integrityのような暗いメタリックハードコアの中間のような音楽性。音の雰囲気は「Mix:Kurt Ballou」で想像できる通りのもので、旧作と比べ段違いに音が良い。
伝説的バンドの復活作という文脈を抜きにしても(後追いなので個人的に感慨はゼロ)楽曲のクオリティが凄まじく高い。特に長尺曲における、複雑さを持ち込まずにひねりを利かせる構成が素晴らしく、2."Power"はクリーンボーカルを経てトーンダウンする中間からほぼワンフレーズの変奏だけでカタルシスを生み、4."Eremocene"は2:25あたりからの極めてシンプルな刻みリフが展開の妙でクライマックスとして成立してしまう。
6."We Live"のイントロ後のリフ、7."Last Words"のギターソロなど、アルバム後半もフックに溢れ隙がない。
寓話性をまとわせながら徹底して権力へ抵抗する勇気を呼びかけるカウンターカルチャーな歌詞も熱い。"And yet still there are some who can only rebel. For peace with our masters means war with ourselves."(2."Power"より)など、奮い立たされる言葉に溢れている。なお、リリースインフォにて謝辞とあわせてパレスチナへの連帯が表明されている。

Coroner - Dissonance Theory

coronerofficial.bandcamp.com

スイスのスラッシュメタルバンド、32年ぶり6thフル。Century Mediaリリース。
活動前期の、過剰なまでのシュレッドギターに彩られたテクニカル路線と、後期のプログレ/インダストリアルロックを吸収したアヴァンギャルド路線を総括したようなスタイル。
過去をまとめるだけの作品になっていないのが素晴らしい。モダンな音作りやベテランの落ち着きが合流したからか、本作は活動初期に欠落していた「普通のスラッシュメタルっぽいわかりやすいアツさ」まで獲得して隙のない作品になった。特に激アツスラッシュリフとゼロ年代Soilworkのような壮大なサビを兼ね備えた5."Symmetry"と変拍子で爆走するテクニカルスラッシュ9."Renewal"はキャリアハイと言っても良い出来。ミドルテンポ楽曲(7."Transparent Eye"10."Plonging"とか)も面白く、複雑なミドルテンポリフと適度な浮遊感はGojiraも連想。
voもここにきて何故か成長。当時の苦み走ったような吐き捨てスタイルを維持しつつも、KreatorのMilleのように力強い。
これまでの文脈を継承しつつ次のレベルに上がっている、Coroner入門編としても適切な作品。

Corpus Offal - Corpus Offal

20buckspin.bandcamp.com

Cerebral Rot(解散)の元メンバーが組んだアメリカのデスメタルバンド1stフル。20 Buck Spinリリース。
グロテスクな雰囲気を持ったドゥーミーなデスメタル。Cerebral Rotほど粘着質な気持ち悪さではなく、あれに比べれば多少キレの良いスタイルになっている。とはいえ曲構成、リズム構成はあえてであろう煮えきらなさ、野暮ったさがいい意味での取っ掛かりとなっており、程よい不快感が癖になる。
第一印象はドゥーム、暗黒系、グロテスク、といった感じなのだが、フレーズごとに耳を傾けると、実は多いのが芝居がかったホラー映画風ギターソロ、ガテラルとラフなグロウルの二刀流、いなたいリズム(特にモッシュゴアみたいなもっさり2ビート)など。実際のところ、Carcassの1stのデスメタル的要素を、現代のアングラデスメタル(OSDMリバイバル、Incantation以後の重苦しさ、ブルデス的リズムの振れ幅)を通じて拡大解釈したのかではないか、という印象がある。

Cryptopsy - An Insatiable Violence

cryptopsyofficial.bandcamp.com

カナダのテクニカルデスメタルバンド9thフル。Season of Mistリリース。
前作"As Gomorrah Burns"(2023)はOSDM由来の比較的シンプル(彼らにしては)なパッセージをやや多めに導入し、良くも悪くも聴きやすさがあったが、本作ではまた若干の路線変更があり、「メッチャクチャ速いのになんかキャッチー」という、ある意味で伝説的2nd"None so Vile"(1996)に近い聴き応えがある作品に。
大きな特徴の一つが、ときおり顔を出すブラックメタル的メロディ。ブラックメタル要素の導入は今どきありふれているが、Cryptopsy印の楽曲に組み込まれるだけでだいぶユニークな雰囲気になる。
もう一つはvoの多様さ。voのMatt McGachyは"The Unspoken King"(2008)でメタルコアスクリーモ風、"Cryptopsy"(2012)ではデスコア風、"As Gomorrah Burns"はOSDMっぽいグロウル、とアルバムに合わせてスタイルを微調整してきた超器用なシンガーだが、本作ではそれらを総括するような大活躍。歌詞がギリ聞き取れそうなオールドスクールなグロウルを基調としながらもそのキレは前作の比ではない。高音の喚き声は、これまでのヒステリックなものよりブラックメタルに寄せたざらつきの多いニュアンスに。5."The Art of Emptiness"冒頭で聴ける薄気味悪い語りパートも良い。
前作ではやや押さえていたように感じられた、DrのFlo Mounier名物「スウィングするブラストビート」が過剰なまでに使われているのも嬉しい。

Dawn of Ouroboros - Bioluminescence

dawnofouroboros.bandcamp.com

アメリカのプログレッシブブラックメタルバンド3rdフル。Prostheticリリース(日本盤はSpiritual Beast)。
ポストブラックとして扱われることもあるようだが、むしろ複雑な曲展開、ヘヴィなシュレッドと荘厳なトレモロを行き来するリフ、クリーン/スクリーム使い分ける女性voなど、メリハリの強さで聴き手を翻弄する路線。ソリッドな音像はモダンメロデスのファンにも刺さりそう。
楽曲は攻撃的で複雑だが、常にどこか幻想的な雰囲気が漂うのも良い。1."Bioluminescence"のイントロからして本作の方向性は明らか。雰囲気からすると、その源流はプログレ~プログメタルという気もする。
voの技量も高く、切なげなクリーンと野蛮で声量のあるスクリームのギャップは強烈。3."Slipping Burgundy"前半のジャズバラード風パートもかなり様になっている。
明確に世界観が提示されていることも聴き方の良い導線になっており、ウミホタルやオワンクラゲの発光現象を指すアルバムタイトル、そのタイトルとメタル的ファンタジーセンスが融合したアートワーク、「メタル・ファンタジー世界におけるナショナル・ジオグラフィックの深海特集」的歌詞世界なども合わさって作品世界を構築している。ある意味でDevin Townsendのソロ作にも近い構築美(とうるささ)があり、エクストリームメタルファン以外にもお勧め。

Doomsday - Never Known Peace

doomsdaycahc.bandcamp.com

アメリカのクロスオーバー・スラッシュバンド1stフル。Creator-Destructorリリース。
クロスオーバーの中でも、NYHCっぽいヘヴィなツーステップ、ギャングコーラス等を織り交ぜたタイプの、Power TripやSpiritWorld系譜のサウンド
それらのバンドと比べると、本作はオールドスクールなメタルの比重が高い(特にA面)。タイトなスラッシュビートに暑苦しいギターソロが乗るパートも多く、80年代後期の「voが歌えるタイプのベイエリアスラッシュ」のアップデートなのかな?と推測できる。
Power Tripのファンにはおすすめだし、二番煎じではまったくないところはかなり好印象。

Eternal Darkness - Eternal Darkness

pulverised.bandcamp.com

スウェーデンのデス/ドゥームメタルバンドの、結成35年目にして解散直後にリリースされた。最初で最後のフル。Pulverised Recordsリリース。
重さと引きずるような遅さを兼ね備えた典型的デスドゥーム。1."The Beyond"ですぐわかるように、時折挟まれるゆったりと陰鬱なギターメロディの質が極めて高く、シンプルなリフレインでありながら楽曲の山場として機能する。
Dan Swano(Edge of Sanity)の怒号スタイルを極めたをような低音グロウルvoは、ローテンションながらかなりの迫力で、歌い手としてだけでなく語り部としての説得力もある。
なにか斬新なものがあるわけではないのだが、デスドゥームに求めるすべてが入っている最高の作品。

Felgrave - Otherlike Darknesses

felgrave-label.bandcamp.com

ノルウェーのプログデス/デスドゥームソロ・プロジェクト2ndフル。
Transcending Obscurityリリース。
自主製作の前作"A Waning Light"(2020)では「現代的で凝った要素もあるメロディアスなデスドゥーム」といった感じだったプロジェクト。前作の要素を引き継ぎつつも、本作は複雑な展開を持つ長尺3曲で構成され、かなりプログデスに寄っている。ちなみにバンドロゴも変わった。
この路線変更が大正解。複雑な構成と数え切れないリズムチェンジで、一曲の中で粗野なブラッケンドデス/流麗なプログデス/陰鬱なデスドゥームが自然に切り替わり飽きることがない。1曲目中盤の踏切音のようなリフの執拗なリフレインなど、各パッセージの印象度も高い。

Floating - Hesitating Lights

floating-label.bandcamp.com

スウェーデンデスメタルバンド2ndフル。Transcending Obscurityリリース。
デスメタルと言ってもその音楽性はかなり異様で、メロウなポストパンクとデスメタルがそのままくっついたかのようなスタイル。
ブラスト、トレモロリフ、苦悶するようなグロウルで構成されるオーソドックスなデスメタルを骨子としながら、その上ではSiouxsie And The BansheesやNew Orderのようなクリーントーンギターが平然と鳴っている。1."I Reached The Mew"や3."Cough Choir"のようなミドルテンポで始まる曲になると、もう冒頭でデスメタルと判断することは不可能。それぞれのフレーズはとてもキャッチーで、2."Grave Dog"のエンディングなんかは爆風スランプの熱血系楽曲(『神話』とか)っぽい。最後の8."The Waking"はミドルテンポの不協和音デスとドラマチックなニューウェーブが次第に混ざり合っていく構成が見事。
一発ネタに終わらず、コズミックデス系と全く違う方法論で「不穏かつ開放感のあるデスメタル」を表現することに成功している。

Forced Starvation - Forced Starvation

forcedstarvation.bandcamp.com

ニュージーランドグラインドコアバンド、結成まもなくの1stフル。Regurgitated Semenリリース。
短尺の楽曲、スロー、2ビート、ブラストを行き来するドラム、ハードコア系譜のリフ、高低使い分けるボーカルと、グラインドコアのお手本のような音楽。
正直あまりに理想的なスタイルなので「これぞグラインドコア!」以外にあまり言うことがない。強いて言うならブラスト以外のパートがクラスティー、パンキッシュ、デスメタリックと意外と多彩なところが良い。あとベースの音がかなりかっこいい。
バンド名から分かる通りかなりポリティカルなバンド(アートワークも1900年代ロシア飢饉のもの)のようで、拠点も「Te Whanganui-a-Tara(ウェリントンマオリ語名)」としている。
なお、最終曲の正式タイトルはおそらく"I Want a Stupid MAGA Hat"で、同郷のグラインドコアDogcockがクラストコアEasy offとのSplitに提供した楽曲のカバー。

Genital exudence internal degradation opaque skin - Anemia spirit eternal skin breakdown remains

nextyearssnow.bandcamp.com

詳細一切不明のノイズプロジェクト1stフル。Next Year's Snowリリース。
ノイズや実験的電子音楽を多くリリースするレーベルから一切の情報無くリリースされた本作は、3曲59分の長尺ノイズ。アンビエント/ドリーム・ポップ的なメロディ、荒々しい即興ドラム、ハードなノイズが延々と流れるスタイルなのだが、特徴的なのは、そこに力強いスクリームやピッチシフトされたグロウルが全面的にフィーチャーされた結果、異形のゴアノイズ/ノイズグラインドとしても聴けてしまうということ。
アルバムの前半は苛烈さの中に情感が滲み、ある意味でEndon的な聴き方もできるが、最終曲の終盤でどんどん美しさの要素が空間エフェクト処理だけになり、ゴアノイズの色を強めていくさまは前代未聞の感覚。
きれいなんだか汚いんだかわからない、困惑と心地よさと痛快さが同時に訪れる怪作。

Gorleben - Menetekel

gorlebendarknessshallrise.bandcamp.com

ドイツのブラックメタルバンド2ndフル。 Darkness Shall Riseリリース。
bandcampプロフィールでは自身のジャンルを「apocalyptic mixture of Death, Doom and Black Metal」としており、1stフル"Game Over"(2022)ではポストメタルとデスドゥームとブラックメタルがくっついたような音楽性を披露していたが、本作は大きく路線変更し、印象は昔のプログレに近い。
ゆったりしたポストブラック(あるいはドゥームメタル風ブラック)を基礎としつつ、今作から浮遊感のあるレトロなシンセを全面的に導入。しかしポスブラっぽい明るさはなく、バンド名(放射性廃棄物の最終処理場候補地として大揉めしたドイツの地名)とアルバムコンセプト(終末論)に沿って、常に諦念と不穏さが満ちた悲観的なメロディが奏でられる。言ってしまえば「70年代プログレのしみったれた暗い曲」のセンスをポストブラックを通じてアップデートした作品であり、自称のジャンル名は正直芯を食っていない。意図的であろう軽めでオーガニックな音作りもこのイメージを強化している。最終曲4."Meneketel"だけはミュートの効いたメタリックなギターリフ→明るいエンディングという流れが聴けるのだが、タイトルの意味が「行進」、アルバムコンセプトが人類滅亡と考えると暗澹たる気持ちになる。
一風変わったメタルが聴きたい人におすすめ。あと1stがつまらなかったという方にも一聴を勧める。

HIMO - HARDCORE VIBRATION

www.youtube.com

日本のハードコアバンド6thフル。自主レーベルKITASHINJUKU RECORDSリリース。
怒号とポエトリーラップが入り混じった独特の日本語詞voと、展開の全く読めないショートカット楽曲が特徴のバンド。音作りも、ヘヴィネスやラウドさよりもアタック感を極度に重視。「過剰なストップ&ゴー」の代表ジャンルであるパワーヴァイオレンスとも趣を異にする独特の立ち位置にいる。
本作は、ドライで攻撃的な路線の集大成3rd"Could You Be Loved?"(2014)までと、クリーンパートが増えメロウな雰囲気のある4th"I LOVE YOU"(2018)、5th"PROTECT US"(2019)の両路線が昇華された集大成。激しさと優しさ、不穏と安心が同居したような楽曲が多い。5."無味無臭"あたりは特にわかりやすいか。
静と動、速と遅が一瞬で吹き抜ける快作。

Jason Crumer - Lake of Fire

satatuhatta.bandcamp.com

アメリカのノイズミュージシャン11thフル。Satatuhattaリリース。
多彩な展開を見せるハーシュノイズ。アンビエント要素もあるので聴き始めはKazuma Kubotaあたりも思い浮かべるが、彼のトレードマークである「アンビエントのハーシュノイズ化」「カットアップによる混合」のスタイルとは違い、各曲で後景にドローンやアンビエントが配置されることによる統一されたムードがあり、Kubota的なドラマチックな展開というよりは曲ごとの違いを楽しむ感じ。「統一されたムード」とは言っても、その上に乗るハーシュノイズのスピード感と多彩な音色で、楽曲の単調さはゼロ。
多様なフックを作りつつ最終的にはやかましくヘヴィに仕上げる理知的かつ攻撃的な構成は、近年のエクストリームメタルファンにも勧めたい。

Kandarivas - Rhythms of Obliteration

kandarivas.bandcamp.com

和太鼓奏者擁する日本のグラインドコアバンド1stフル。Obliteration Recordsリリース。
これまでのEP、Splitと同路線の、パーカッションとしての和太鼓をグラインドコアと融合させた路線だが、本作でレベルが大きく上がった印象。
一つは録音の改善。これまでは和太鼓のパーカッシブな面が強調された反面、グラインドコア的な疾走感が感じ取りにくかったりリフの輪郭が聞き取りづらかったりといった弊害が起きていたが、本作は帯域の削り方が上手いのか全パートの分離がかなりよく、そういった問題は解決。ハードコア/グラインドコアらしい激しさを維持しながら、和太鼓が加わることで和風のブラストビート/モッシュパートが楽しめる。
SwarrrmとのSplitあたりで加入したと思われる専任voも更にハマってきた。Tomoki兼任はパーカッシブさ優先の旧作路線には合っていたが、グラインドコアとしての強度が段違いな本作では現voのモダンハードコアっぽい力強い声質が合っている。

Kostnatění - Přílišnost (Excess)

kostnateni.bandcamp.com

アメリカのアヴァンギャルドブラックメタルバンド、3rdフル。Willowtipリリース。
まずは1."Dokonalé křišťálové město (Perfect Crystal City)"が始まってすぐのドラムンベース+ブラックメタルサウンドに度肝を抜かれる。その後も、荒々しくストレートなファストブラックを基調としながら、中東スケール、マスコア風の支離滅裂な曲展開、チャント、インダストリアル、メタルコア風ブレイクダウンなどなど、曲ごとに予想だにしない要素が次々と飛び出て、方向性が全く読めず飽きが来ない。それでいてなぜかアルバムには統一感が感じられるのが不思議。
Metastazis氏(Alcest - Écailles de lune等を手掛けたイラストレーター)による音楽性を読ませない幾何学的アートワークもクール。
Deathspell Omegaとはまた違った形で前衛ブラックに挑み、しかもそれが大成功している怪作。

kurayamisaka - kurayamisaka yori ai wo komete

ototoy.jp

日本のオルタナティブロックバンド1stフル。tomoranリリース。
女子高生二人の卒業を描くコンセプトEP"kimi wo omotte iru"(2022)はシューゲイザーっぽい雰囲気もあったが、本作にその印象は弱い。1."kurayamisaka yori ai wo komete"のメリハリの効いた轟音はシューゲイザーというよりポストハードコアだし、5."nameless"6."evergreen"の乾いたリフ使いはフォーク~エモのイメージ。 7."sekisei inko"のガサツで明るいリフはOasisっぽいし、性急な2ビートで疾走する12."あなたが生まれた日に"は完全にハードコアパンクだ。
voは過去作の儚さを維持しつつも声量が増え、元々歌メロにあった歌謡曲感が際立ち、いい意味で「慣れ親しんだ歌謡ポップ」の雰囲気を出している。
歌詞も時折入るひねりが素晴らしく、"evergreen"における、曖昧な感傷が一瞬で他者への情念へ集約する「君が間に合わないように」や、"kurayamisaka yori ai wo komete"と"あなたが生まれた日に"で人生の極大から極小まで総括する意思表明として機能する「財布の中身すべて」などが特に印象に残る。
楽曲順もほぼ完璧と言ってよく、聴き通す体験に価値を見いだせる作品。

Labyrinthine Heirs - Labyrinthine Heirs

i-voidhangerrecords.bandcamp.com

アメリカのアヴァンギャルドメタルバンド1stフル。I, Voidhangerリリース。
かなり説明の難しい音楽性で、無理やり表現するならばCeltic Frost+Shellac。メタルとしては明らかにスカスカで金属的な音を用いて、煮えきらないミッドテンポリフを執拗に繰り返すさまは90年代ノイズロックそのものだが、ときに不穏な荘厳さを湛えるメロディセンスには、Celtic FrostやRootあたりの、ブラックメタルの原型となったバンドたちと近いものを感じる。
特異なのがvoで、強いて言うならブラックメタル寄りの高めしゃがれ声だがとにかくテンションが低い。ときにブラストビートやトレモロリフが入ってまともなブラックメタルになりそうな瞬間でも、このささやき声じみたvoが聴き手の高揚感を阻害して苦行に縛り付ける。そうして散々こちらの思考を硬直させたところで3."The Conceited Determination of Nimrod"中間のように突如として発狂するのもたちが悪い(いい意味で)。
淡々、執拗、不穏の三拍子揃った楽曲が延々と続くアルバム構成はもはや催眠術の様相を呈しており、呆然としながらヘビーローテーションしてしまう怪作。

Li Jianhong(李剑鸿) - Shuttle Raven of the Dream

utechrecords.bandcamp.com

中国のギタリスト、単独では18th(多分)フル。Utechリリース。
多様なギタードローン/ノイズを鳴らす42分3曲。1."Bon Voyage, Erma"はサイケのニュアンスも漂う優しいギターを基軸として、声(それともフィルターを通したギター?)やヴァイオリン風サウンドがレイヤーされる心地よいドローン。かと思えば2."Stone Crab"はファズでひしゃげたノイズ&フィードバック&リズミカルなプレイからなるギターノイズで、個人的には宮本尚晃のIncredible Noise Guitar(1998, M.N.S.名義)を連想。20分にわたる3."Shuttle Raven of the Dream"はドヘヴィなギターノイズでありながらゆったりしたアメリカンなメロディで構成され、どことなくEarthの「ブルージーなドローンドゥーム」スタイルを連想。
3曲で全く違った色のギターノイズを聴かせる構成は飽きが来ない。ドローンドゥームファンにもおすすめ。

Lipoma - No Cure For The Sick

realityfade.bandcamp.com

アメリカのゴアグラインドソロ・プロジェクト、3rdフル。Gurgling Goreリリース。
元々メロディックデス/メロディックブラックっぽさの強いプロジェクトだったが、本作はほぼ「ブラスト多めでvoがゴアなメロデス」と化しており、しかもメロディの質がやたら高い。聞き取り不能なvoと合わせて「デスグラインド化したIntestine Baalism」なんてたとえも思い浮かぶ楽曲が連なるが、1曲目などときにはバロックな感じのシンセも適宜挿入。
「ゴアグラインドなのにメロディアスで草」というジョークではまったくなく、むしろこれでゴアグラインド要素を脱色してしまったら売れて売れてしょうがないだろうという良曲が並ぶ。メロデスのファンなら、4."Cult of The Firehealers"の全メロディ、6."Remedies of Pagan Medicine"のギターソロ等に拳を突き上げねば嘘というものだろう。一方で8."Palms of Psoriasis"10."Cardiac Scars Forever"はメロディックパンクのような爽やかなメロディで構成されるなど、メロディの種類も意外と幅が広い。メロデスの中にメロディックパンクが入っているとちょっと冷めてしまいそうなものだが案外そう思えないのは、実はゴアvoがアルバムを一つにまとめあげているからかもしれない。
大真面目に「ゴアグラインドメロデス」の新境地を開拓している意欲作。

Lucy Railton - Blue Veil

lucyrailton.bandcamp.com

ドイツのチェロ奏者ソロ1st。Ideologic Organリリース。
教会で録音されたという、チェロのみによるドローン音楽。多分和音や微分音へのこだわりがあるのだろう(私はそこら辺全然詳しくない)という緻密な音の重ね方。そういった楽音的なことと同じぐらい、弦の軋み、胴鳴りといった、物体としてのチェロから鳴る音の発生、それ自体を意識下に置こうというこだわりを感じる音像。
Kali Malone & Stephen O'Malleyコンビのプロデュースによる音づくりと奏者のこだわりがかみ合っている、耳を澄ませて聴きたいタイプの作品。

Lung - The Swankeeper

lunglunglung.bandcamp.com

アメリカポストパンク6thフル。Feel Itリリース。
チェロVo+ドラムの2ピースという独特な編成。面白いのはインダストリアルメタルのようにタイトでヘヴィな音と、全くロックバンドらしくないたおやかかつ呪術的な女性Vo。チェロの軋むようなニュアンスを最大限活かしたサウンドは、2 CellosやApocalypticaのファンも楽しめそう。3."The Mattress"の前半なんかかなりApocalypticaっぽい。Voについては1."Everlasting Nothingness"のイントロの「アッオゥ」を聴けばわかるように、気だるげなのによく通り、声を荒げること無く淡々と低空飛行を続ける歌唱スタイルは中毒性がある。
楽曲構成の根っこにあるのはGang of Fourのような昔ながらの無機質系ポストパンクだが、テンポチェンジが多めなアレンジにより、クラシカルにもハードコアにも弾き倒すチェロの幅広さが耳を惹く。

Malformed - Confinement of Flesh

darkdescentrecords.bandcamp.com

フィンランドデスメタルバンド1stフル。Dark Descentリリース。
いわゆるフィンデスっぽさはほとんどなく、むしろ昔のCannibal Corpseに代表されるような、アメリカっぽいテクニカル&高速なスタイル。そこに程よくオカルティックなフレーズのギターが乗るので、決して無機質な複雑さではなく、あくまで複雑めのOSDMの範疇なのが良い。4."Abnormal Eulogy"をはじめ、ギターソロも印象に残りやすいキャッチーさがある。
音作りが程よくモダンなのもスタイルに合っていて、不穏なメロディを奏でるギターとバキバキのベース、手数の多いドラムがそれぞれ聞き取れて情報量の多い作品になっている。
素晴らしい出来だったEP"The Gathering of Souls"(2023)を上回る作品。

Miltown - Tales Of Never Letting Go

manaliverecords.bandcamp.com

アメリカのポストハードコア/オルタナティブロックバンド、1stフル。Man Aliveリリース。
厳密には新譜ではなく、97年にラフミックスまで出来上がっていたもののバンド解散に伴ってお蔵入りしていたマスターテープを、レーベルが発見、権利を買い取って完成させたもの。
驚いたのが洗練された楽曲。グランジを根底に置きつつ、FugaziやEmbraceのような初期ポストHCの切迫したエモーションを合流させ、中期Cave Inのように巧みに整理されている。
音質も素晴らしく、分離が良く、ヘヴィで、生々しい。いい意味で当時のグランジ勢の荒々しい雰囲気とは異なっている。当時メンバーだったエンジニアのBrian McTernanがミックスを手掛けているようだ。
厭世を巧みに伝えるvoも素晴らしい。歌声もいいのだが、シンプルで衝撃的な表現に満ちた作詞が卓越している。「When I saw my father cry for the first time, I knew that I was no longer glad to be alive(2."Unraveling")」「I'm over the calamity. I need to forget how I need you(4."Tales Of Never Letting Go")」など、「なんでそんな悲しいこと言うんだ」と言いたくなる名文句に溢れている。アメリカ的価値観への不信感に根付いた表現も多く、10."8/6/45"は広島原爆投下の正当性に疑問を投げかけるし、上掲2."Unravelingの一節も「旧価値観の象徴たる父のつらい姿」という意味では並べて語ってもいいかもしれない。
このバンドになんの思い入れがなくても、シーンの歴史に興味がなくても、ただいい音でいい曲を演っているという一点で聞くべきアルバム。

Nina Garcia - Bye Bye Bird

ideologicorgan.bandcamp.com

Mariachi名義で活動していたイタリアのギタリストの、現名義にあらためてからは1stとなるフル。Ideologic Organリリース。
いわゆる「インプロ・ギターノイズ」だが、オーバーダブやエフェクトも最低限に絞られたシンプル&ミニマルなスタイル。メロディアスな小曲からファズでひしゃげたノイズもあるが、どの曲もエディットされた印象がほとんど無く、実際の演奏を想像しながら楽しめる。
聴いていて面白いのが、アルバムの中で「ギター観」が二転三転すること。メロディがある楽曲だと「ギター=アンプリファイする撥弦楽器」だった印象が、ノイズ寄りの曲だと「ギター=金属の振動を電気信号にする装置」と即物的に感じられたりする。ギターという存在をドライに扱っているからこその面白みに溢れている。

nuvolascura - How This All Ends

nuvolascura.bandcamp.com

アメリカのハードコア/スクリーモバンド3rdフル。Zegema Beachリリース(CDは多分日本の3LAから)。
いわゆる激情ハードコア/リアルスクリーモ/skramzと呼ばれるようなカオスでメロディアスな演奏に絶叫voが乗るスタイル。本作はさらにマスコア要素も加わり、全身全霊の大暴走と怜悧さが同居する凄まじい作品になっている。
一方で、5."if at all"の後半をひりついたノイズ&叫びという不穏なパートで埋めたり、6."polar destinies"はアルバム最長尺の6分超で起伏のある展開を聞かせるなど、詰め込むばかりではない。
個人的な聞き所は2."and in the end, you threw it all away"のじっくりためてから電波なリフで疾走するラスト、0:13あたりからのConverge風ギターがかっこよすぎる6."cordiform projection"あたりか。
スクリーモ文脈のバンドだが、マスコアファンにもおすすめ。
なお、本バンドのbandcampプロフィールは「free Palestine」、作品インフォでは各種市民団体への支援を訴えるなど、本作の苛烈さは極めてポリティカルな怒りに基づいていることが想像に難くないことを補足したい。

Obnoxious Concoction - Obnoxious Concoction

obnoxiousconcoction.bandcamp.com

UKのデスグラインドデビューEP。 Dry Coughリリース。
パワーヴァイオレンスバンドOna Shopのメンバーも含まれる布陣が鳴らす楽曲は、OSDMとグラインドコアの折衷スタイル。コンパクトな尺でミドルテンポとブラストを行き来するグラインド寄りの曲の中で、ギターリフはデスメタル8割、ハードコア2割で情報量高く印象的なフレーズをぶち込み続ける。voは発音がそこそこ聞き取れる高低使い分けグロウルというExhumedスタイルで、否応なしにテンションが上がる。特に5."Rangifer Tarandus Disembowelment"は汚らしいデュオvo、スラッシーな楽曲、華やかなギターソロとかなりExhumedっぽい。
悪趣味なアートワークに反して、案外万人に勧められる攻撃的かつキャッチーな一品。

OiDAKi - 鬼首

oidaki.bandcamp.com

仙台を拠点に活動する自称Stoner ViolenceバンドのEP。自主レーベル音辿レコーズリリース。
音楽性は前作フル"Sulphur Pusher"(2017)を継承しており、標榜する通りストーナーロックやスラッジメタルとパワーヴァイオレンスの融合スタイル。ブラスト&絶叫のパートとヘヴィ&ブルージーなパートを縦横無尽に行き来する。比率としてはストーナーパートが7割程度か。
突如ブラストでかっ飛ばしながら鬼首(おにこうべ、坂上田村麻呂の鬼退治伝説に由来する宮城の地名)の伝説にまつわる小噺を始める1."鬼首"からしてつかみはバッチリ。白眉は3."THC"で、7分半にわたるヘヴィスラッジで溜めに溜めてからはつらつとしたギターソロでどんどん加速していく展開が最高。

Phantom - Tyrants of Wrath

phantombandgdl.bandcamp.comメキシコのスラッシュ/スピードメタルバンド2ndフル。High Rollerリリース。
鮮烈なデビュー作Handed to Execution(2023)の勢いそのままに多彩さが増した。Hallows Eveをアップデートしたようなパンキッシュ&ロックンロールな黎明期スラッシュを骨格に据えつつ、ジャーマンスラッシュ的ヤケクソスピードとスピードメタル的メロディをつぎ込むスタイルは前作そのままに、5."Nimbus"ではWarlordのような普通声のエピックメタル、10."Nazghul"ではブラックメタルと曲調に幅が出て、しかもそれが上手くハマっている。最終曲11."Dark Wings of Death"はアルバム全体を総括するような6分半の最長曲で出色の出来。
ここまでオールドスクールリバイバルな作風でありながら、ボーカルリバーブは程々に抑えるなどしており、「あえてB級」みたいな開き直りが一切ないのも地味に良い。

Sallow Moth - Mossbane Lantern

sallowmoth.bandcamp.comアメリカのデスメタルソロ・プロジェクト3rdフル。I, Voidhangerリリース。
いわゆるコズミック・デス系の、難解な曲構成とアトモスフェリックだったりジャジーだったりするフレーズが多用されるスタイル。voがピッチシフター使用ガテラルも使うので、プログデスとブルデスが合わさったようにも聞こえる。
こう書くといかにも目まぐるしくて「凄いけど記憶に残らない」系のように思えるが、実際は妙にキャッチーで、コンパクトな印象すら受ける。おそらく肝になっているのが各パッセージの長さで、「キャッチーなフレーズはしっかりリフレインし、そうでないフレーズは一瞬で使い捨てることで複雑性を演出する」という、フレーズ使用方法の切り分けがかなり丁寧なのではないか。個人的にコズミック・デスは眠くなりがちなので苦手なのだが、本作は上述の手法で「キャッチーなリフで惹きつける」「目まぐるしいブルデス+テクデスパートで振り回す」「コズミック系パートでスケールを急拡大する」という押し引きが巧み。OSDM~今どきのプログメタルファンまで広く勧められる作品。

Scour - Gold

scourofficial.bandcamp.com

PanteraでおなじみPhil Anselmoがvoを務めるアメリカのブラックメタルバンド1stフル。Nuclear Blastリリース。
リズム隊をPig DestroyerのJarvis兄弟が務めているのもあってか、曲がとにかく速い。ブラストパートの体感速度ほぼグラインドコア。ギターメロディは伝統的ブラックメタルっぽいトレモロリフが主だが、それをモダンでハイファイな音作りで、更にこのバカ速い楽曲に乗せると、Anaal Nathrakhじみた激しい音像になるときも。Philはデスメタル寄りの低音グロウルを主体に歌唱しており、ミッド~スローパートだとどことなくデスメタルっぽい雰囲気。時折挿入されるノイズもフィラーではなく単体で成立する聴き応えがあり、アルバムの不穏な雰囲気に寄与している。地味に最終曲13."Serve"はポストブラックっぽいリフも上手く使っており、今後の音楽性の拡張にも期待が持てる。

seaglass - self care

seaglasssucks.bandcamp.comカナダのエモ/パンクロックデュオ2nd。おそらく自主製作。
この手の音楽への知識も少なければこのバンドの情報もかなり少ないので適切に批評できる自信はないが、音楽性としては疾走感のあるエモソングにヘロヘロな歌声ないしシャウトが乗るスタイル。
特筆すべきはギターメロディの良さで、アジカンあたりも連想されるような口ずさめる切ないメロディを連発。デュオではあるがオーバーダブによる実質的ツインギター構成で、単音弾きパートを大量に配置。そんなバンドサウンドと感情的で弱々しいVoの組み合わせはかなり相性が良く、楽曲の短さが惜しい。
Instagramを見るにSNSの使い方がマジで下手クソ(アートワークのQRコードから直接アクセスしないとまず見つけられないと思う)なので、もうちょっとリスナー経由で広まってほしいなあという作品。

Stone Nomads - Empires of Stone

ripplemusic.bandcamp.com

アメリカのストーナー/ドゥームメタルバンド3rdフル。Ripple Musicリリース。
初期Trouble+ストーナーとでも言うべきスタイルを基調としつつ、Grand Magusっぽい正統派メタル風スタイルからスラッジメタル、Gojira風のモダングルーヴまで曲調にいい意味での幅がある。
2."Eyehatesociety"のリフと胡散臭いvoのマリアージュ、4."Empires of Stone"の壮大なギターソロ、8."The Devil Lives in Texas"のドライヴィンなリフなど、熱いハイライトに事欠かない。
voもメタリックな仰々しいクリーン、ストーナーっぽい平坦歌唱、Mastodon風ダミ声、完全なグロウルまで上手く使いこなす。
Grand Magus、昔のSpiritual Beggars、Endtyme期Cathedralあたりのファンに特におすすめ。ドゥームメタル入門にも。

Tatsuya Yoshida & Martin Escalante - The Sound of Raspberry

washandwear.bandcamp.com

RUINS等でおなじみのドラマーとメキシコのノイズ系サックス奏者のコラボアルバム。Wash and Wearリリース。
双方が完全な即興と思われる荒々しい演奏をぶつけまくる、フリージャズ/ノイズ作品。吉田は基本的には間断無く叩きまわるインプロドラムがメイン。B面では叫んだりシンセも操作したりとやることの幅を広げていくが、楽器が変わってもやることはハチャメチャなインプロに変わりはなく、全く攻撃性が落ちることはない。
Martinは普通のジャズの演奏を半ば放棄しているであろうサックス(ライブを見たら、サックスのマウスピース付近を切断していた)でピギョピギョしたノイズを延々と鳴らし続ける。ワンパターンを貫くことで生じる一種の神々しさは、どこか非常階段のJUNKOを彷彿とさせる。ただスピード感のコントロールが意外と繊細で、吉田の演奏の完全に呼応した絶妙な音数調整を見せるところはさすが。
ノイズ、フリージャズだけでなくノイズグラインドのファンにもおすすめ。

Toru - Velours Dévorant

torunoise.bandcamp.com

フランスのインストノイズロックバンド、2ndフル。WV Sorcererリリース。
一聴するとSumacのようなヘヴィで即興的なノイズメタルっぽく聴こえるが、実体としてはインプロ系ノイズロックに「ブルータル・プログ」などと呼ばれるような、暴力的かつ緻密なスタイルが合流したような音楽性。
一曲の中で、フリージャズのような即興的演奏と、スラッジメタル+ノイズロック的で執拗なリフレインが複雑に切り替わっていく。特に後者の要素は重要で、やたらとリフの印象度が高いのでいわゆる「即興モノ」が苦手な人でも聞きやすいと思われる。

Vauruvã - Mar da Deriva

vauruva.bandcamp.com

ブラジルの二人組ブラックメタルプロジェクト3rdフル。おそらく自主制作。
Antropoceno、Kaatayraといったここ数年盛り上がっているっぽいブラジル音楽+ブラックメタル勢の中で、最もブラックメタル度が高いバンドの一つ。
ブラスト+喚き声の形式を基本としつつも、ボサノバやサンバのリズム感や民族楽器を組み込んでいるのが特徴。曲展開は「移行」というよりかはまるで潮の干満のように、ゆったりと変化しつつパートが自然に出入りしていく。それでいてメタル的高揚感もしっかり確保されていて、特に時折入るフォークメタル寄りのギターリフが耳を惹く。
上掲2バンドと聴き比べるのもいいだろうし、シーンの文脈を抜きにしても幅広い層に響きそうな美しいエクストリームメタル。

Verdalack - Force From the Grave

verdalack-japan.bandcamp.com

日本のスピードメタルバンド1stフル。HELLS HEADBANGERSリリース。
ジャンルのお約束をしっかり踏襲しているが、上述のBrutal Decayと同じく、"スピードメタル"という概念が確立された後の後発勢だからこそできる、「そのジャンルに求められているクリシェを整理したうえで過剰なまでに全部やる」「現代エクストリームメタルを踏まえて、スピードは当時より上げていく」という過激派一本気スタイル。高速単音メロディアスリフの徹底、いいアクセントのスラッシュ風刻みリフやメタルパンク風楽曲によるアルバムのアクセント付け、スピードを落とさずにメロディアスに駆け抜けるツインリード……欲しい要素を完璧に抑えてくる。タイトルトラックではテクニカルスラッシュっぽいひねりの効いたリフも入れるなど、あるあるネタの羅列にとどまらないセンスも見せる。
voはリバーブのかかった単調なガナりスタイル。正直あまり好きなタイプでは無いのだが、情報量の多い楽曲の邪魔をせず、しかし勢いは付加するための手段としてはコレしか無いだろうという納得もある。
個人的な話をすると「Riot - Thundersteelって2曲目からは速くねえじゃん」と落ち込んでいた中学時代の自分が供養される感覚がある。

Violator - Unholy Retribution

violatorthrash.bandcamp.com

ブラジルのスラッシュメタルバンド12年ぶり3rdフル。Kill Again/High Rollerリリース。
1stフル"Chemical Assault"(2006)は当時のスラッシュリバイバルの波に乗ってそれなりに聴かれていた印象があるが、本作は何故かあのころより初期衝動に溢れているかのようなテンションの高さ。リフとリズムはExodusっぽいセンスが根底にあるが、そこにSlayer、初期Sepultura、Dark Angel等の系譜に連なる邪悪さとつんのめり感もマシマシになったピュアなスラッシュメタル
当時ほぼ聴こえなかったベースもしっかり聴こえるなど、ちゃんと大人になったからこその音でありながら初期より勢いがあるといういいとこ取りの作品。棘のある言い方をしてしまえば、スラッシュメタルバンドが初期の完全上位互換のアルバムを出せている稀有なケースではないか。

綿菓子かんろ - 紙上文学

ototoy.jp

日本のVsinger、3rdフル。Core Creativeリリース。
前作まではTalich Helfenの作曲だったが、本作は本人が全楽曲の作曲を手掛けている。わたかん氏がHelfenのV/R Convertersに加入したことで、旧体制スタイルの楽曲はそちらでやることになったようだ。本作でのHelfen氏はアレンジ等を担当。
極めてミニマルなサイン波アンビエントポップの1st、ワールド音楽+プログポップの2ndとは路線が変わり、ロックサウンドの導入と、ボーカルオリエンテッドでいて複雑な曲展開が耳を惹く。
路線変更しても楽曲の幅の広さは相変わらずで、パンクっぽい荒々しさもあるマスロック風1."飽黄る"、テクノ的なループを軸に据えた2."後の月"、複雑なモジュレーションでうねるトラックが歌詞世界と呼応する3."胡蝶の夢"、椎名林檎/東京事変っぽい5."百貨店"、一昔前のインターネットを強烈に感じるブレイクコア風味8."世界反転"など、多様な路線でありながらトレードマークの上品な歌唱と落ち着いたミックスでまとめ上げられている感じ。
歌詞についてはなにか仕掛けがあるような気がするが読み取れていない。1."飽黄る"は明らかに梶井基次郎檸檬』なので、アルバム全体が文学モチーフなのか?と思いつつ、己の教養のなさを恥じる。

選外作の良かった曲(順不同)

Bloodywood - Nu Delhi("Nu Delhi"収録)

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インドのフォークメタル/ラップメタルバンドの2ndフルより。Fearless Recordsリリース。
アルバム自体は1st路線を引き継いだことによる食傷感と、シンセが目立つことによる平坦感が気になるが、楽曲単位の求心力は流石の一言。
このタイトルトラックは、インドっぽいパーカッションの使用をあえて楽曲の半分程度にとどめ、ずっとやかましい楽曲の中でもリズムにアクセントをつけているのが良い。ずっとバウンスする感覚がありながら展開が起伏に富み、ライブでの興奮が目に浮かぶような迫力ある一曲。

Hebi Katana - Blood Spirit Rising("Imperfection"収録)

hebikatana.bandcamp.com

東京のドゥームメタルバンド4thフルより。UNFORGIVEN BLOODリリース。
レトロでアッパーなリフがグイグイ牽引するファストチューン。これだけリフが優れていながらそこでゴリ押しせず、歌メロもキャッチーで、中盤ではメロウなパートを設けて5th,6thのサバスっぽい構築美も打ち出していくなど徹底して隙がない。

Pearl Charles - City Lights("Desert Queen"収録)

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pearlcharlesmusic.bandcamp.com

アメリカのシンガーソングライター3rdフルより。Taurus Risingリリース。
2025年リリースとは思えない、70年代ディスコ感漂う一曲。レトロなストリングス、小気味よいパーカッション、たゆたうような歌声の組み合わせが心地よい。
アルバム自体もディスコ、カントリー、ソフトロックといった、多様な「アメリカの懐かしさ」を融合させたポップミュージックをやっておりなかなかおすすめ。

Pentagram - Walk the Sociopath("Lightning in a Bottle"収録)

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アメリカのベテランドゥームメタルバンドの9thフルより。 HEAVY PSYCH SOUNDSリリース。
ストーナー、クラシックハードロックの色を強めたアルバムだが、この曲はCathedralにも通じるいかがわしいドゥームメタル。芝居がかった気味の悪いスローリフに、老成と溌剌を同時に感じさせる「ヤバいジジイ」かくあるべしなボーカルが乗る。

16 -  Kick Out The Chair("Guides For The Misguided"収録)

16theband.bandcamp.com

アメリカのスラッジメタルバンド9thフルより。Relapseリリース。
前半は鈍重に刻むヘヴィリフで進行し、中盤よりハードロックっぽいコード使いを織り交ぜて盛り上げるミドルテンポ曲。スラッジの鈍重さが自然にクラシックなハードロックへと移行していく曲展開が見事。
ガナる声質は維持しながら前半は苛烈に、後半は渋いメロディをしっかり追うvoの技量も素晴らしい。

TERMINATION - Inevitable Decay(feat.Jon-ha)

termination.bandcamp.com

日本のハードコア/グラインドコアバンドによる、メンバーが急逝したFesterDecay(日本のゴアグラインドバンド)へのチャリティシングル。自主リリース。
いつもはグラインド/パワーヴァイオレンス路線のバンドだが、本作は趣旨に基づいてか、かなりデスメタル~デスグラインド寄り。スラッシュ/OSDMっぽいリフがメタリックハードコアっぽいリズム感覚と合わさるのが面白い。
3:15あたりの寸詰まりスネアロール→ブラストの入り方が、2nd期Carcassの極めて高い精度のオマージュという感じがする。ブラストを加速ではなく、BPM計測不能のなだれ込みのように聴かせるあのスタイル。
Jon-ha(韓国テクデスFecundationのJong-Haだろうか?)によるメタル寄り速弾きギターソロもクール。

蟹乃わう - palo santo

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ototoy.jp

日本のボカロP・VTuberのシングル。自主リリース。
明日の叙景『キメラ』風のMVも確信犯(誤用)であろう、ブラックメタル路線の楽曲。モダンメロデス/メタルコアっぽい刻みリフ&歌謡曲/演歌っぽい歌メロという感じで、明日の叙景とは違った方法論で悲壮、アグレッシブ、ポップが両立している。演歌的歌メロに反して歌詞が内省的なうら寂しいものであることで情緒が大仰になりすぎず常に切なさが漂うのも良い。重音テトSVの「よく通るのになぜかいつか来る息切れを想像してしまう」といった雰囲気の声質と完ぺきにマッチ。
悲壮感と高揚感が同時に頂点に達するメインリフとサビは必聴。

篠沙季ナユタ - みちくさイズム (feat. 綿菓子かんろ)

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ototoy.jp

日本の作曲家・プロデューサーがVsingerの綿菓子かんろ(というかV/R Converters)を招き制作した、月ノ美兎活動7周年記念*2のファンメイド楽曲。
渋谷系っぽい爽やかで軽快な楽曲をベースに不協和音、ノイズ、複雑なリズムアレンジ、主張の強いギターソロ、委員長楽曲オマージュなどなど、あらん限りの要素をぶちこんだ情報量の多いポップミュージック。ごちゃごちゃしつつも、最終的には委員長の多彩な活動を表現しているかのように"カオスでポップ"な曲として成立している匠の技。委員長本人のライブでも逆輸入的に歌われている。

月ノ美兎 - 人ってただの筒じゃないですか(『310PHz』収録)

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ototoy.jp

にじさんじ所属ヴァーチャルライバーの最新EPより。AccelNotesリリース。
軽快なロックでありながら、黄金期Deep Purpleのようなオルガンを全面的にフィーチャー。切ないメロディをまといつつも小気味良くハイテンションな曲調が良い。歌唱力も大きく向上し、低音域のウィスパーっぽい魅力を残しつつ、高音域で伸び(サビ終わりとか)とキュートさ(Bメロ終わりとか)が際立つ。遊び心ある表現で「絵畜生」「中の人」的な揶揄に反駁するような歌詞も聴きごたえがある。MVはいくら何でも可愛すぎており、逆に怖くなってきてあんまり見れていない。服も似合いすぎている。凄い。

ばねとりこ - トンカラトン("知ラズノ園"収録)

advaitarecords.bandcamp.com

日本の「妖怪ノイズ」ソロ・プロジェクトのカセット作品より。Advaita Recordsリリース。2025/3/9 environment 0g(大阪)でのライブ録音。タイトルの「トンカラトン」は、アニメ化もされた児童文学『花子さんがきた!』に登場する包帯巻の都市伝説/妖怪。
金属のきしみと自転車のベル、つぶやき声のループが次第に形を変えていく21分間。金属ノイズが空間を埋め尽くして緊張感のギアが上がってから連打されるサンプリング音声「トンカラトンと言え!!!!!」「トーン!トーン!トンカラトン!!!!!」の怖さったら無い。
おそらく本トラックをもとにしたであろうカセットの装丁も不気味でお見事。

旧譜

Adramelech - Psychostasia

xtreemmusic.bandcamp.com

フィンランドデスメタルバンド1996年1stフル。Repulse Recordsリリース。
Morbid Angelのような「複雑で速くておどろおどろしいOSDM」からDemilichのような奇怪なバンドたちへの過渡期のような印象。
その複雑さに反して、フィニッシュデスらしい暗くひねりの効いたギターメロディが全面的に導入され、かなりキャッチーに聴こえる。
凄いのがドラムで、特にミドルテンポパートのドラミングの多彩さには目を見張る。ちょっとした小技が無数に挟まれ、速くないパートでもずっと凝った印象を受ける。

Aspartame - E951

aspartamee951.bandcamp.com

イタリアのノイズ/インダストリアル/ノイズグラインドユニットの2021年1stデモ。おそらく自主制作。
打ち込みグラインドコアの楽曲をエディットしたものに、Super Roots期Boredoms風の間抜けなサウンドやサンバ音楽の断片を重ねたようなカオスな作品。1."Abasia"だけGodflesh楽曲のデータをグリッチさせたようなインダストリアルメタルで、2曲目以降は上記の通りのカオスなグラインドコア。既存のアヴァンギャルドグラインド、ノイズグラインドとは全く違ったアウトプット。
本作以降活動がないことが惜しまれる、冗談のようで芳醇な作品。

Bulldoze - The Final Beatdown

dazestyle.bandcamp.com

アメリカの元祖ビートダウンハードコアバンドの1996年編集盤。Time Records等からリリース。
来日(仙台公演に行きました)の報を期に、ライブまでにビートダウンをちゃんと聴こうと思い購入。「元祖」ということで、現在のバンドと比べると若干ラフだったり、ビートダウンへの導線が若干不器用な曲も多かったりするのだが、むしろそれが逆説的に現代から見てなおオリジナリティになっている。タフガイの系譜を感じつつもヴァースのブレイクなどユニークな構成が面白い2."Hypocrite"、「Beatdown!」のシンガロングがアツすぎる5."Nothing But A Beatdown"など今なお色褪せない楽曲ばかり。
Brown Recordsリリースのトリビュート盤"Straight Up Beatdown"(2024)の現代的解釈と聴き比べるのも楽しい。

Contention - Artillery From Heaven

dazestyle.bandcamp.com

アメリカのハードコア/メタルコア2024年1st。DAZEリリース。
エッジメタル/メタルコア系の単音メロディアスリフとビートダウンが組み合わさったような現代的なメタリックハードコア。
エッジメタルのルーツたるSlayerへのリスペクトも強く、特に6."Lobotomite Bliss"のイントロは爆笑できるレベル。ハードコアが苦手なメタルファンも、モダンメロデスメタルコアが行けるならチャレンジして良い作品。
コンパクトな楽曲でメタル気分もハードコア気分も満たされる快作で、昨年聴いていれば間違いなく年間ベストに挙げていた。

D'Angelo - Voodoo

ototoy.jp

2025年に逝去したアメリカのミュージシャン2002年2ndフル。Virginリリース。
ジャケットだけ見てずっとギャングスタラップだと思っていた(バカ)のだが、逝去をきっかけに聴いてみたら自分が「2010年代以降のモダンでスタイリッシュなソウル/R&B」だと思っていたスタイルが本作で完成していてびっくりした。
そのうえでとっ散らかる寸前まで楽曲の幅が広いのも楽しい。ソウル、ファンク、ゴスペル、ヒップホップがごちゃまぜかつ曲によって混ぜ方が全く違う。
本作に出会っておきながらネオソウル(並びに本作以前のソウル/R&B)を全く掘れなかったのが2025年の心残り。

DJ Travella - Mr. Mixondo

nyegenyegetapes.bandcamp.com

タンザニアのプロデューサー/DJの2022年1stフル。Nyege Nyege Tapesリリース。
タンザニアの超高速ダンス音楽ジャンル「シンゲリ」の代表作(らしい)にして極北(私見)。
既存のダンス/ポップ/民族音楽を、メロディを簡略化せずに4倍速にしたような楽曲が主で、ダンスミュージックというよりはXフォロワーによる評「発狂したディスニーランド*3」が最も適切だろう。バカバカしいまでの高揚感、脳天気な楽しさを誘発する曲と、あまりに速すぎて焦燥感や恐怖が芽生える曲が半々くらい。同じく「既存楽曲のスピードアップ」をルーツとするNightcoreとは根本的に異なるリスニング体験。
個人的には、リリースカットされたキャッチーなリフレイン、妙な音の軽さ、身体感覚を超越したBPMなどといった点からスラッシュメタル/スピードメタルと似たような感覚で愛聴した。ドライブ時に爆音で流して速度超過しよう。

James Brown - In The Jungle Groove

ototoy.jp

アメリカのファンクミュージシャン1986年編集盤。Polydorリリース。
実はJBは「"Live at Apollo"を聴いてみたが思ってたのと違った」という理由でしばらく聴いていなかったのだが、本作ではイメージ通りのファンキーでハイテンションな反復、パーカッシヴでやかましいJBのvoが全編に渡って聴ける。一枚通して踊っていたくなる。
2."Funky Drummer"の途中で、無限に聴いたことのあるドラムフレーズが出てきてびっくりした。これがサンプリング元だったのか。

John Wiese - Soft Punk

johnwiese.bandcamp.com

アメリカのノイズミュージシャン2007年フル。Troubleman Unlimitedリリース。
ハーシュノイズとミュジーク・コンクレートやコラージュの中間のような作品で、ストレートなハーシュノイズあり、カットアップノイズあり、コンクレートあり、ハーシュノイズのコラージュあり、録音物の加工ありで、ノイズの生成それそのものよりも、音素材の選択と配置に重点が置かれた印象。常に最も適切な音が最も意外で痛快なタイミングで鳴らされ、楽しいことこの上ない。しかもその上で最終的な成果物は下品でクソうるさいノイズなのだから言う事無し。

Kaatayra - Inpariquipê

kaatayra.bandcamp.com

ブラジルのフォーク/ブラックメタルプロジェクト2021年5th。自主制作。
ブラジル音楽をフォークロック化したような作風が特徴で、アコースティックな音作りで幽玄なメロディを奏でる。ブラックメタル要素は本当に最低限で、ブラストビートですらパワーを抑えて静かに流れていく。voは時々喚く。
とにかくその優しさと美しさが聴きどころで、全くブラックメタルでない1."Tiquindê"からしてその魅力は明らか。しかしイージーリスニングではまったくなく、ブラジルの自然を表現するような、温かながら雄大さを感じる長尺曲は聴き応えがある。
同一人物によるプロジェクトVauruvãの新作が良かったのでブラジルクロスオーバーブラック(今作った造語)の作品をいくつか漁っていたところで特に刺さった作品。

Korpse - Pull The Flood

candlelightrecordsuk.bandcamp.com

イギリスのデスメタルバンド、1994年1stフル。Candlelightリリース。
純粋なデスメタルというよりは、クラシックなハードロックっぽいリフとブラストビートなしのリズムにドスの効いたグロウルが乗るスタイルで、いわゆるデスンロールとかグラインドロックと言われるスタイルに類似。Wolverine Blues期Entombedに近いが、曲展開は独特のひねりが効いていて独自性がある。アートワークもかなり奇特で文脈を読ませない。
ブラスト無しといっても、スラッシュビート主体+絶えず小技を差し込むドラムのお陰でスピード感はかなりのもの。6."X"など、ひねりの効いたスタイルの曲が特に面白い。

Leg Day - Imagination & Delusion

legday.bandcamp.com

アメリカのエモ/スクリーモバンド2022年ディスコグラフィ(+新曲)盤。Chumpireリリース。
最大の特徴は、楽曲は完全なスクリーモでありながら徹底してクリーントーンのギター。さぞへなちょこに聞こえるかと思いきや、優しすぎる音がメロディの繊細さの説得力を増してどの曲も美しく響く。「確かに、繊細で儚いメロディなのだから弱弱しい音で演奏し虚弱そうな声で叫ぶべきだ。これが正しい姿だ」と思わされてしまう作品。

Lowen - Do Not Go To War With The Demons Of Mazandaran

lowen.bandcamp.com

イギリスのプログメタルバンド2024年(日本盤は25年)2ndフル。Church Roadリリース。
Mastodon,Gojiraといった「グルーヴメタル以降の現代プログメタル」スタイルを根底としつつ、エピックドゥームばりの大仰さを融合させたスタイル。そこに中東風メロディと、かなりパワフルな女性クリーンvoが乗る。
複雑な楽曲群でありながら、歌声含めパフォーマンスに迫力がありすぎて「中東風でスケールがデカい」という印象が先立ち、複雑、とっつきづらいといった感覚が無い。朗々とした歌声と長めの楽曲で壮大さを最優先とするスタイルは、Iron Maidenの長尺曲と近い美意識を感じる。

Modjo - Modjo

Modjo (Remastered)

Modjo (Remastered)

  • モジョ
  • ポップ
  • ¥1681

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フランスのハウスユニット2001年唯一のフル。Universalリリース。
一般的には3."Lady (Hear Me Tonight)"の一発屋扱いらしいが、その扱いはもったいないくらいどの曲も良い(まあ確かに"Lady"の求心力は異常だが)。キャッチーなディスコ系サンプリング、情熱的なvo、BPM120前後の心地よい4つ打ち。
また、今までDaft Punkでしか認識できていなかった「フレンチハウス」というカテゴリーへの理解が深まったというのも大きい。DP自体が時期によって極端に作風の変わるユニットなためこのジャンルの定義も掴みかねていたが、本作は驚くほどDPと共通の美意識を感じる。硬質なビート、ファンクをサンプリングして分厚くしてフィルターを掛けたウワモノ、軽いタッチで覚えやすいボーカルライン……意外とわかるものである。

Nagasaki Sunrise - Distroyer

nagasakisunrise.bandcamp.com

ポルトガルのハードコア/メタルパンクバンド2024年2ndフル。Vortex Recordsリリース。
性急なD-beatのリズムを主体に、NWOBHMMotörheadを通過したキャッチーなリフが組み合わされたコテコテのメタルパンクススタイルで、そこに戦禍を歌い上げる暑苦しいvoが乗る。
とにかくメロディアスなリフがかっこよく、スピードメタルファンにもおすすめ。2025リリースのVerdalackやDirtなどと聴き比べるのも楽しい。

Rhythm Trip  - Return of da Dragon

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※おそらく正規の手段で聞く方法無し
アメリカのラップメタルバンド1998年2nd。Digital Dimension等からのリリース。
Method Of Destructionの元メンバーが組んだバンドらしい。ラップメタル勢の中でもターンテーブルの比重が高めで、当時のモダンメタルと比べてもリフの多彩さが際立つ。曲構成も「ヒップホップ風ヴァースからヘヴィなサビへ」という当時ありがちだったスタイルに拘泥せず、R&B/ファンク寄りパートも上手く組み込み、楽曲の中で起伏がある。ギャングスタラップっぽいツインMCスタイルも合っている。

Rumi - Hell Me Tight

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※おそらく正規の手段で聞く方法無し
日本のラッパー2004年1stフル。Sanagi Recordingsリリース。
「般若がまだユニットだった頃のメンバー」という知識だけあり、客演曲もいくつか聞いたことがあるのだが、自身のデビュー作はかなりアブストラクトなスタイルでびっくり。
楽曲ごとに多少の差はあるが、多くのビートはインダストリアルの影響下にある不穏なもの。甲高い声を震わせながら矢継ぎ早に繰り出す情緒不安定なラップは聴いていると不安になる。9."わるつ"に至ってはビートとラップというよりはインダストリアルノイズとアカペラ。
どこか降神のセルフタイトルに近いような気がしないでもないが、RUMI自身のクセが強すぎて二番煎じ感はゼロ。

Voivod - Synchro Anarchy

centurymedia.bandcamp.com

カナダのプログ/スラッシュメタル2022年15th。Century Mediaリリース。
Voivodは"The Outer Limits"以降ほとんどチェックしていなかったのだが、本作は"Nothingface"あたりのメタル化Pink Floydみたいな雰囲気にスラッシュのノリの良さを取り戻した路線で、キャッチーかつへんてこな雰囲気が持続して面白い。正確な変拍子のはずがつんのめっているように聴こえる2."Synchro Anarchy"や、3."Planet Eater"の「ジャズ畑の人が無理やり弾かされた正統派メタル」みたいなギターソロなど、ハイレベルなことを"ズレ"っぽく聴かせるかのような、どこまで計算なんだかわからない雰囲気が楽しい。

Zamboa - 未来

zamboa.bandcamp.com

東京のサイケデリックロックデュオKlan Aileenが改名しての2024年1st(通算4th)フル。Jolt! Recordingsリリース。
前作まではクラウトロックっぽい偏執的反復の要素も強かったように感じたが、本作ではメロウさが全面に出た曲も多い。また、歌、ギターともにメロディが民謡っぽいのも面白い。
個人的趣味で言えば2."メトロポリス"5."大乱闘"のようなロックらしいロック、労働歌や演歌とクラウトロックが融合したような7."ひばりの朝"8."この世でもあの世でも"あたりが好み。

Zonk - Zonk

zonkzonk.bandcamp.com

アメリカのインストロックデュオ2024年1stフル。Island Houseリリース。
アメリカーナっぽいフレーズを弾く(作品infoには" in a departure from their Americana roots"とあるのだが)のギターと、ジャズインプロっぽい手数の多いドラムによる即興演奏集。よく聞くとマスロックばりに複雑なコンビネーションをやっている部分もあったりと緻密なコミュニケーションによって成り立っているジャムなのだが、雄大さを感じるメロディが多いせいかかなりリラックスして聴ける。ドローンメタルのEarthあたりと共鳴する部分もある。汗ばむような熱気を感じるアナログ感ある音作りも良い。

 

V.A. - Spews Rot and Destroys Civility: A Finnish Noisecore Compendium

sphcrecords.bandcamp.com

フィンランドの現行ノイズコア/ノイズグラインド8バンドによる2023年コンピレーション。SPHC Recordsリリース。
海外の現行アングラシーンを俯瞰できるという資料価値(LPのインサートには全バンドの膨大なディスコグラフィ記載)はもちろんのこと、音楽性も幅広い。Death Basketのように真っ当なグラインド/ハードコアのほか、アヴァンギャルド(Rectal Machete,Kolumbia等)、クソバカ(Anal Moore)など、ノイズコアと聞いてイメージできる大概の路線をフォロー。八バンド八色のスタイルで、ノイズコアという世界の豊かさが楽しめる。

まとめ

デスメタル多め、グラインドコアが以前より減った?
曲単位のピックアップにボカロ/Vtuberが集中し、楽曲単位で聴くジャンルとアルバム単位で聴くジャンルがきっぱり分かれた感じ。
レーベルで言うとI, Voidhangerを追いかけることが多かった。「アヴァンギャルドブラックメタルってまだこんなにできることがあるんだ…!」と感心することしきりだった。Profound Lore、Transcending Obscurityも良作連発でしたね。
ジャンルで言うと、ビートダウンHCを聴けるようになりライブにもよくいった1年だった。このジャンル独特の美学がわかってきたのには、Back Yard Zineの企画「ベストモッシュパート」の影響が大きい。大量のサンプルを学習すればある日急に感覚がハマってくるものである。
2026年も好みが広がったり深掘りできたりする1年にしたいです。

おまけ(自身の音楽活動)

minatoza.shonai.asia

ハーシュノイズソロでライブに出演しました。ライブ音源はbandcampでリリースしています。

ugogg.bandcamp.com

voを務めるメタルバンドNEKRAM0NSEEが1stフルをリリース。

nekram0nsee.bandcamp.com

詳細は下記記事をご覧ください。

ugogg.hatenablog.jp

新年早々の1月24日、NEKRAM0NSEEは山形の米沢ARBにてライブ出演もあります。XのDM等でご予約お待ちしております。



 

*1:本当は40作のつもりで書いていたのですが数え間違えました

*2:https://mito-7th-anniversary.vercel.app/

*3:https://x.com/__Blurry_/status/1899305047978041598