ウゴガベ

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2023年5月第3週の日記+簡易新譜レビュー(Ignominy, People In The Box)

あったこと

仕事は大きな問題なく進んでいる。しかし、「大きな問題が無いなんてありえない、今起こっていないということは水面下で肥大化している最中なのだ」と考える癖がついてしまっており、「大丈夫なので精神的にきつい」という状態になっている。良くないのはわかっているんだけどそう簡単には治しようもない性癖なので諦めている。
仕事で役所に電話することが多いが、やる気がなさそうなのは別にいいんだけど「電話しやがってよ……死なねえかなこいつ……」みたいな「けだるげな殺意」とでも言うべき態度を向けてくる人がそれなりに多いのはなんとかならないのか。田舎だから?

腹筋ローラーを隔日でやっている。膝コロ50回くらいなら余裕を持ってできるようになってきた。

漫画『K2』の無料公開期間が今月末までということで、読み終われるか自身がないくらいの速度で読んでいる。時代に即した医療技術や医大事情を描くくせに「奈良時代とかから献血や臓器移植がしきたりとして行われている村で育った前作主人公のクローンが主人公」みたいな滅茶苦茶な要素もある。こういう作品独自のリアリティラインが貫かれてる作品って好きになっちゃう。期間中に読み追われるかな。

積読していた安部公房作品を少しずつ読んでいる。先日短編集『R26号の発明・鉛の卵』を読了。『鉛の卵』は藤子不二雄的などんでん返し付きのダークかつわかりやすいSFで、こういうのも書く人だったのかと驚いた。『鏡と呼子』がよくわかっていない。『変形』『死んだ娘が…』は安部公房の独特の幽霊観が前提となっているのが面白い。『棒』は高校の教科書で読んだ。アレが初めての安部公房体験だったか。
今は『けものたちは故郷を目指す』を読んでいる。大戦末期の満州が舞台の長編で気が滅入っており全然進んでいない。でもタイトルが超カッコいいのでちゃんと読みます。

 

ニチアサ

相変わらず全部面白い。特に今週(本日記の投稿日)の『王様戦隊キングオージャー』は凄かった。
『キングオージャー』は、祖国の王政に反旗を翻した少年一人と各国の王様四人が虫モチーフの戦士に変身して地下帝国の敵と戦う、というのが大枠のストーリーなんだけど、今回は先週からでてきた追加戦士のメイン回。
前回の彼は真意の読めない芝居がかった発言で周囲を煙に巻いてきたのだが、今回で「人間の父と地下帝国人の母のミックスかつ長命」「純血主義の王政によって歴史から抹消された親子」「敵対種族同士(両親の祖国)の和平に至る筋書きを予言書として残し、2000年にわたって成就に向けマッチポンプ的に暗躍してきた」というバッググラウンドを自ら明らかにする。
といっても「歴史を裏から操ったシナリオライターとしての矜持」「敵対種族の血を継ぐものの負い目」という自意識から、当初は自分から言い出さずに「あとは考えれば真実にたどり着くはず」「行間を読め」と明言を避けていたものの、キングオージャー一同の察しの悪さに我慢できなくて自ら明かす形となってしまう。しかしそれを聞いた一同は「最初からそう言ってくれればよかったのに」とあっけなく受け入れる。追加戦士はどこかスッキリした笑顔で「これが今の王か、母様」とつぶやき、その表情で過去に彼とその両親受けた迫害の凄惨さを示唆して終わる。
追加戦士加入という戦隊モノの目玉イベントでありながら人間ドラマにもフォーカスしつつ「種族間」「歴史の狭間」「行間」「蜘蛛のモチーフ」といった要素が伏線としっかりハマった傑作回。
ただ、それ以上に作品の本筋から全く逸れず、むしろ販促すら並行しつつ、上っ面の「真実を語ろうとしない書き手気取り」「行間読み強要のウザキャラ」から「真実を語れば迫害されるマイノリティ」「マジョリティの歩み寄りへの祈り」への転化だったり「『話せば分かる奴らによる世界』に変わるまでに身についてしまった臆病な思考バイアス」とかを通じて人種的マイノリティの周縁化やマイノリティのカミングアウトを描いたのが個人的には凄いと思った。
「王道ファンタジーに政治群像劇に人種差別問題まで何本もやって子供向け特撮として成り立つのか!?」という不安はなく、それらの要素をうまく内包した一本の太い幹を作ってるなーと感じる。独特のドラマで良くも悪くもな「人間らしさ」を描いたドンブラザーズとは全く違った形で現代の寓話を作ろうとしてるのかな。期待している。

 

シャニマス

樋口円香WING編でも思ったけど、シャニマスは「何がプロデューサーじゃ、てめえこの子の人生の責任持つ気あるんか画面越しからよぉ」みたいな、もはや構造上どうしようもない部分に自虐的苛立ちを覚えていて、その上で、露悪にも偽善にもならないよう曖昧な領域で描けることを描こうとしているようなところがある(そうじゃないときもあるけど)。

 

音楽

Ignominy - Imminent Collapse

ignominydeath.bandcamp.com

カナダのいわゆる"不協和音デスメタル(詳しくないけど)"の2023年1st。GorgutsとかUlcerateとかの系譜ではあるんだけど、奇怪なフレーズばかりで構成される楽曲でありながらも案外ストレートな暴力感との両立ができているところが聞き所。比較的シンプル(プログレデスとかに比べれば)なリズム構成と、怒号のような力づちょいボーカルによるところは大きいか。
オールドスクールデスメタルと不協和音デスを直接繋いだような面白い作品で、今年のデスメタルの中でも特に当たりの大推薦作。不気味で名状しがたいキモいリフと力強いリズムの組み合わせで不快なんだか痛快なんだかわからなくなる3.Reminisence of Hatred、とにかく厭で壮絶な雰囲気の5.Nightmare Bacteriaが最高。

 

People In The Box - Camera Obscura

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日本のポストロックバンド2023年8th。これまでの作品は曲単位で「ニムロッド」「ストックホルム」は聞いたことがあるくらい。有志によるシャニマスイメソン合同誌が面白かったのもあり気にしてはいたが旧譜を漁るまでには至っていなかった。
めちゃくちゃ良かった!ヘヴィネスと浮遊感のあるメロディを巧みに使いわける楽曲もあれば不穏な歌詞の反面たゆたうような優しさが心地よい楽曲も、壮大な楽曲もあり。バンドサウンド"以外"の使い方が好きだな。美しいし挿入箇所も絶妙なピアノとか、中毒性の高いコーラス(8.水晶体に漂う世界が特に素晴らしい!)とか。
好きな曲は1.DPPLGNGR、2.螺旋をほどく話、5.スマート製品、6.自家製ベーコンの作り方、8.水晶体に漂う世界。純粋な好きとは別だけど、7.中央競人場はスガシカオの"病んでる"曲をノイズロック化したような曲調に意外性があった。
明らかに現代社会の不快さをモチーフにしつつもループ構造からの「ドッペルゲンガー」という一見して不可解な内容も読解欲を掻き立てられて良い。
旧作も少し漁ってみよう。

 

Twitter

Twitterで「#私を構成する42枚」というタグがあったので自分でもやってみたんだけど、人生での影響度の大きさで決めたので他人が見たとき不可解な内容になってるよなー、補足記事なんか書きたいなー、と思いつつ、42枚分も説明を書く面倒臭さに負けてしまい放置している。

「人生で初めて"情報ゼロ買い"に失敗したと感じた作品(Video Nasties - On All Fours)」「初めてマイナス(自分の精神状態)×マイナス(作品の精神性)=プラスの理屈で元気になる体験をさせてくれた作品(Eyehategod - Take Us Needed For Pain)」などを含む。
Video Nastiesはギターがうるさいだけのへなちょこガレージロック/ポストパンク。アルバムはしょうもないんだけど、当時の落胆も治まった今となっては、情けなくもキャッチーなConversation Diesと3:00あたりからドラマチックに盛り上がるDead Againの2曲があるしまあ良いかな、という感じ。特に後者はかなり良い。

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